お正月、神様を味方につける暮らし方
2016年12月28日 公開 2022年12月19日 更新
若水
元旦の零時に汲む「若い水」。かつては井戸から家長が汲む、正月最初の行事でした。今では蛇口に水引を結ぶといいでしょう。清らかな水として汲み、神棚にお供えを。
初日の出
かつては、後でご紹介する冬至の翌日、蘇つた太陽を拝むものでした。「ご来光」とも言い、やって来る光で体を目覚めさせるものです。今では元旦の行事になりました。
お屠蘇
元旦に家族揃って神棚へ挨拶をすませてからいただく薬酒。山椒や陳皮などの生薬と酒、みりんを合わせたものを煮詰め、アルコール分を飛ばします。悪鬼を屠って、体を薬草成分で温め、蘇らせるから「屠蘇」なのです。
お節料理
本来は、歳神様へのお供えです。元旦だけでなく、正月三が日、カミサマとともにいただくため、保存が効くよう素材ごとに火を入れ、丁寧に作られました。「まめ」に働く黒豆、豊穣を祈る田作り、子孫繁栄の数の子など縁起のいいご馳走を、お重に詰めます。何をどう詰めるかは地方によって様々ですが、例えば、お重の一番上はあけて水引を敷いて、福を呼び込みます。歳神様を迎える心構えを形にしてみるのも粋ですね。
お雑煮
年末までに歳神様にお供えしたお餅や野菜などのお下がりを汁ものにして、お正月にいただくようになったのがその始まりです。
初詣
新年初めての参拝です。氏神様やその年の恵方にある神社にお参りします。
書初め
元旦は「ハレ」の日で、掃除洗濯など家事は忌むべきとされ、筆も二日に下ろします。一年の抱負やめでたい言葉を書き、とんど焼きで焚きあげます。
ひめ始め
今では艶っぽい意味に読み違えられてしまった言葉です。本来は新年二日に初めて炊いた柔らかいご飯=姫飯を食べることなのです。
初夢
元旦の夜から朝、または二日の夜に見る夢。その年を占うとされ、いい夢は「一富士、二鷹、三茄子」。江戸時代には七福神が乗った宝船の絵を枕の下に敷くのが流行りました。
年始
宮中の拝賀に基づく風習です。親戚や年長者を訪ね、新年の挨拶をします。持参するのは「お年賀」と呼ばれる縁起の良い品です。
鏡開き
11日、鏡餅を下して、小づちなどで割ります。カミサマにお供えした餅には一年を過ごす力が込められているとされ、刃物は使わずに開き、みなでいただきます。カミサマの力をいただくことで、「この一年、食べることの心配をしなくても大丈夫」という安心を得るものです。このカミサマからのお裾分けがお年玉へとつながりました。
お正月は遊びにも重要な意味がある
まず独楽回し。独楽は「独りで楽しむ」と書き、軸がしっかりしているとよく回ります。ぶれると回りません。これを人にたとえて、自分の軸足をしっかりさせなさいという教えです。
凧揚げは、うまくあがればその年は順調、立身出世を祈る要素もあります。
女の子の遊びは、羽根つき。羽根の黒い玉は、ムクロジの種子が使われました。サポニンという泡立つ成分を含み、石鹸代わりに使われたもので、清潔と無病への願いです。
双六などは、その年の運の良い人を見極める遊びです。早くあがった人はその年は幸運というわけです。
そもそも1月は「睦月」、睦みあう月です。家族親戚、普段あまり会わない人へも挨拶し、語りあいます。自分の生まれ育った場所を再確認し、これからの自分を考えるときです。いずれも魔を払い、力を養い、進化を促す、そんな願いが込められているように思います。
1月7日までは、門松が飾られ「松の内」です。1月15日は、女正月。モチ花などを飾り、年末年始に、忙しかった女性が休む日とされていました。この日に小豆粥を食べて邪気を祓う風習もあります。
正月飾りや役目を終えた昨年のお札、お守りは、15日、各地のとんど焼きでお焚きあげを。感謝を込めて、神聖な火で燃やしていただきます。二十日正月でお正月気分は終わり、正月料理をすべて食べ尽くします。歳神様と過ごしたお正月行事が終わります。
井戸理恵子著
旧暦や日本の伝統的なしきたりは、古来から私たちがカミサマとともにあり、味方につけてきた知恵である。その作法や意味を紹介する。