東大首席・山口真由が教える「7回読み勉強法」とは?
2017年06月19日 公開 2023年01月16日 更新
サラサラ読んで数を打つ!必勝の読書法「7回読み」
「認知」から「理解」への道筋を作るには
様々な分野の知識や情報に触れるとき、いつも感じることがあります。それは「知らないことは、理解できない」ということ。こう言うと、不思議に思われるでしょうか。
「知らないことを知るのが、理解するってことでしょう?」「知らないことを理解できなければ、どんなに勉強しても知識なんて得られないってこと?」と。
では、次の文を読んでみてください。
「太郎が花子に花を贈った」
簡単に理解できる内容ですよね。太郎という男の子が、花子という女の子にお花を贈っている場面が目に浮かびますよね。
でも、もし「太郎」がこの手の文に使われる典型的な男の子の名前で、「花子」が女の子の名前だという前提知識がなければどうでしょう。さらに言えば、女性は花を好むというやや古典的ではあるものの、共通化された前提知識がなければ?
ある文章を理解するときには、必ずそれについて何らかの予備知識を前提にしているのです。たとえ、明確に意識していなくとも。
ということは、こうも言えます。
「理解する前には、まず『認知』というプロセスが必要である」
「認知」と「理解」とは、似て非なるものです。
たとえばある文章を見て、「こんな言葉が書いてある」と視覚的に感じ取るのが「認知」。それに対して、イメージを汲み取り、意味を読み取り、メッセージを把握するのが「理解」です。
これは、知らない人同士がはじめて会うときの状態とも似ています。初対面の人と挨拶を交わして、いきなりその人を理解するのは至難の業です。
「理解しよう」と思って本を読みはじめる人は、いきなり初対面の相手と親友同士になろうとしているようなものです。当然、「難しい」と感じて、投げ出してしまいたくなるでしょう。
大抵の人間同士は、いきなり親友にはなれません。最初は単なる「知り合い」です。
「認知」は、この「知り合い」の状態を作ることを意味します。少しずつ頭に情報をすり込んで、書かれていることと「知り合い」になっていくのです。
それを何度も繰り返すと、文章との間に親密さが出てきます。難しい言葉もすでに1回目で目にしているので、「ああ、さっきのあれだな」と思えます。回数を重ねるごとにその頻度が増えて、知り合いはだんだん慣れ親しんだ「友人」、そして信頼に足る「親友」へと近づいていきます。
7回読みは、そのための作業です。まず「認知」し、それを「理解」へとつなげていく道筋を作ることが大切なのです。
「30分の流し読み」を7回繰り返そう
「7回読み」の1回あたりの速度は、非常に速いものです。
私の場合、300ページ程度の本を、1回30分程度で読んでしまいます。これは決して速読ではありません。特別な技能をもってして、速く読んでいるわけでもありません。正直、単なる流し読みです。だからこそ、この程度の時間で済んでしまうのです。
7回読みの各回の間は、それほど時間を置かずに読むのがおすすめ。記憶が薄れないうちに次の回を読めば、定着も早まります。私も学生時代の試験勉強では、できるだけ時間を空けないで読むようにしていました。「1日以内」に読めれば理想的です。
社会人になるとまとまった時間は取りにくいもの。でも、「サラサラ読み」の場合には、各回30分から1時間ですから、まとまった時間を取りにくい忙しい人でも、1冊を途中で切らずに読み切ることができます。まとまった時間を取れない中で、ゆっくり1回読む場合には、途中まで読んでやめて、また本を読み直してということをしなければならず、前の記憶を呼び覚ますために、すでに読んだページに戻ったりして時間を使ってしまいます。しかし、「7回読み」の場合には、1回ずつにかける時間が少ないので、そういった心配がありません。
各回30分から1時間、1日1回のペースで7回読むことができれば、ちょうど1週間で読み終わることになります。
「300ページの本を1週間で読み終わる」とすると、トータルの所要時間は「平読み」で1回読む普通の方法とほぼ同じか、もしかしたらやや短いくらいでしょう。それでいて、「7回読み」は何度も通読しているので、平読み1回よりも記憶への定着度が断然強いのです。
また。読むときは[気負わない]ことも大切です。
短い時間で読むなら、神経を集中して読むべきではないのか、と思われるかもしれませんが、実際はその反対です。
集中しなくてはいけないと思うと、それがかえって雑念になります。「本を開いてページをめくっているなら、読んでいるということだ」と思って、気楽に読み流しましょう。特に1回目に読むときは、文章を追っていくのが疲れるということもあります。わからないところは、次に読めばいいのだから、意味が取れなくても気にすることはありません。そのときは、見出しだけを目で追う「助走の1回」を加えるとよいでしょう。