英語勉強法「7つの間違い」―孫正義氏の元秘書が教える!
2014年12月17日 公開 2017年02月06日 更新
◆<間違い・04>インプットばかりで、アウトプットの練習が不足◆
英語を勉強している日本人の多くは、インプットにとても熱心です。
単語やイディオムをたくさん覚え、文法をおさらいし、辞書をひきながら英字新聞や洋書を読み、多種多様なヒアリング教材に取り組む……。
でも、それほど一生懸命にインプットをしても、「使える英語」を身につける人がほとんどいないのはなぜでしょうか。
それは、アウトプットの練習が圧倒的に不足しているからです。
英語のアウトプットとは、頭の中にある英語を素早く組み合わせて外へ出すことです。
いくら頭の中に難しい単語がたくさん入っていても、自分が言いたいことに合わせて必要なものをサッと引き出せなければ、当然ながら英語を使えるようにはなりません。
皆さんも、「どうしてこんなに簡単な言い回しが出てこなかったんだろう?]と悔しい思いをした経験かあるかもしれません。いざ英語を話そうとすると言葉が出てこないのは、アウトプットのトレーニングが足りていないからです。
英語のアウトプット力は筋力と同じで、意識的に鍛えないかぎり向上しません(その具体的かつ超効果的なトレーニング方法は、本書第4章でご紹介していますのでご参照ください)。
当たり前のことなのですが、このことに気づいていない学習者が意外と多いのです。
「英語を聞き流しているうちに自然と話せるようになる」といった宣伝文句の英語教材もありますが、そんなことは絶対に起こらないと確信を持って言えます。
私が英語を勉強して強く実感したのは、「インプットとアウトプットをバランスよく実践しないと、英語を話せるようにはならない」ということでした。
ところが、日本人の英語学習者の大半は、「インプット過多、アウトプット不足」に陥っています。
もともと日本人は、学生時代にそれなりのインプットをしています。高校や大学を受験した人なら、その時期にかなりの単語や文型を頭に詰め込んだはずです。もちろん大人になって忘れてしまったものもあると思いますが、読めばなんとなく意味がわかるというくらいのインプットは、すでにある人がほとんどではないでしょうか。
むやみやたらとインプットの量を増やす必要など本当はないのです。
それなのに、まるで修行僧のようにインプットを続けている人が多いのはなぜでしょうか。それには大きく2つの理由が考えられます。
“アウトプットなしのインプット”には意味がない
ひとつは、「インプットはやりやすく、アウトプットはやりづらい」ということです。
インプットなら、いつでもどこでも1人でできます。テキストを開いたり、ヒアリング教材を聞いたりするなら、通勤電車の中や会社の昼休みでもできるでしょう。
ところがアウトプットの練習は、基本的に相手がいないとできませんから、いつでもどこでもできるものではありません。だから、つい後回しになってしまうのだと思います。
でも、本当はだからこそ、最優先でアウトプットの機会を確保しなければいけないのです。
学習計画を立てたりスケジュールを組んだりする時も、「まずアウトプットのトレーニングの予定を確保し、それに合わせてインプットの予定を組む」という順番が非常に重要です(その具体的な方法については、第3章戦術編で詳しく述べています)。
アウトプットが不足してしまうもうひとつの理由は、多くの日本人が「もっとうまく話せるようになってからしゃべろう」と考えていることです。
「下手な英語をしゃべるのは恥ずかしい」という気持ちはよくわかります。
でも、どんどんしゃべる練習をしない限り、永遠に英語を話せるようにはなりません。むしろ、下手だからこそアウトプットをしまくるべきなのです。
これまでの「マスターしたら実践(=アウトプット)」ではなく、「実践しながらマスター」という意識をぜひ持ってください。
1年の学習期間が終わるのを待つ必要はありません。仕事などでアウトプットの機会があれば、下手な英語でもどんどん使っていきましょう。
私自身の学習期間を振り返っても、まさに「下手な英語を必死にアウトプットしながらマスターしていく」という毎日でした。
どんなに仕事が忙しくても、平日の早朝は毎日欠かさず英会話学校に通い、同じクラスの人たちやネイティブの講師と会話をしました。
仕事でも、英語を使えるとはとても言えない状態の時から英語が必要な場面が出てきたので、「一夜漬け」で翌日の交渉やミーティングの準備をし、つたない英語ながらも通訳をつけずになんとか自分1人で乗り切っていました(「一夜漬け」のやり方については、第5章で詳しく解説します)。
どれだけ冷や汗をかいたかわかりません。
でも、「明日は英語をしゃべらなくてはいけない=アウトプットしなければいけない」と思うと、インプットへの集中力・記憶力が格段に高まるのです。その結果、短期間で効率的に英語を上達させていくことができました。
だからこそ、“アウトプットなしのインプット”には意味がないと断言できます。
「アウトプットがあってこそ、インプットが活きる」ということも、ぜひ皆さんにお伝えしておきたいと思います。
ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト〔株〕代表取締役社長
1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部経営学科卒。三菱地所〔株〕を経てソフトバンク〔株〕に入社。27歳で同社社長室長に就任。孫正義氏のもとで「ナスダック・ジャパン市場開設」「日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)の買収案件」「Yahoo! BB事業」などにプロジェクトマネージャーとして関わる。英会話は大の苦手だったが、ソフトバンク入社後に猛勉強。仕事に必要な英語だけを集中的に学習する独自のやり方で、「通訳なしで交渉ができるレベル」の英語をわずか1年でマスター。2006年にはジャパン・フラッグシップ・プロジェクト〔株〕を設立し、同社代表取締役社長に就任、現在は、ケント英会話学院代表も務める。また自社経営のかたわら、東証一部上場企業をはじめ複数の企業の取締役・監査役を兼任。その一方で、厚生労働大臣年金記録問題諮問委員など、公職も多数経験。現在も、日本年金機構(旧・社会保険庁)で理事(非常勤)を、内閣府の原子力災害対策本部で廃炉・汚染水対策チームのプロジェクトマネジメント・アドバイザーを務めている。
著書に、『「A4一枚」仕事術』(東洋経済新報社)、『孫正義「規格外」の仕事術』(PHPビジネス新書)ほか多数。