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怒っている人、厄介な人の上手な取り扱い方

藤井雅子(心理カウンセラー)

2015年02月26日 公開 2024年12月16日 更新

※本稿は『「なぜか怒っている人」の取扱説明書』より》
 

感情はその人にしかコントロ-ルできないもの

人が怒っているのには事情があります。

イライラしている人は、「○○するべきだ」という「べき思考」が多かったり、実は甘え下手で、普段から我慢をしすぎていたり、本当は不安やさびしさでいっぱいだったりします。

あるいは、単に体調が悪くて虫の居所が悪いだけの場合もあります。

それはその人の事情なのですが、怒りのパワーは強烈なため、怒っている人が近くにいると、こちらもイライラしたり、憂鬱な気分になったり、どうしても影響を受けてしまいがちです。

なかには、「自分のせいではないか」と自分を責めて萎縮してしまい、他人の怒りを感じるだけでドキドキして具合が悪くなってしまう人さえいます。

しかし、感情というのはその人個人の受けとめ方によって生じるものであり、怒りに限らず、感情はその人にしかコントロ-ルできないものです。

それを「自分のせいではないか」と、責任を感じてしまうというのは、自分と他人との境界を区別できていないということ。もっと言えば、本人にしかコントロールできないものを、無理にコントロールしようとしていることになります。

怒っている人の事情は、本当のところは本人に聞いてみないとわかりません。

それを、「この人はこういうことを望んでいたのに、自分がやらなかったから怒っているんだ」とか、「自分にこういうところが足りないから怒らせてしまうんだ」などと推測してみても、かえって事態を複雑にすることのほうが多いもの。

「そういうことじゃない! どうしてわからないの?」とさらに相手を怒らせてしまう、という負のスパイラルに陥りやすいのです。

とはいえ、心優しい人ほど、相手がどう思っているのだろう、とつい想像してしまうでしょう。

そこで、「たとえばこんな事情が考えられますよ」という目安として、本書では、怒っている人の事情を心理カウンセラーの立場からいろいろ挙げてみました。

心理学の知識やカウンセリングの経験から、よくありかちなケースにおいて、私なりに可能性が高いと思われる事情を考えたつもりです。しかし、あくまでも想像なので、同じようなケースでまったく違う事情もあると思います。

それくらい、怒っている人の事情にはいろいろあって、他人には計り知れないということです。

唯一共通しているのは、怒っている人は「困っている人」だということ。

困っている事情は人それぞれですが、なにかしら困っていて、気の毒なことにその問題に対処するスキルを持っておらず、怒りで表現するしかなくなっているということです。

だから、今後は、もし誰かが怒っていたら、「なにかに困っているんだなあ」と思うようにしてみてください。どうしても気になるようなら、「なにか私に助けてあげられることはないだろうか」という視点で接してみるといいと思います。

つまり、誰かが怒っていても自動的に「自分が悪いのでは」と思わなくていいということ。

そして、怒りの裏事情にはさまざまなパターンがあるのだと、ぜひ本書を読んで知ってほしいと思います。今後、人の怒りに遭遇したときに、「この人、自信がないのかな」「もしかして、パニックになってる?」と分析しながら、上手に対処していただけるとうれしいです。

反対に、イライラしやすい人は、自分の怒りの元について、なにか当てはまることはないか、なければないでどんな事情があるのか、自分について考えるきっかけにしていただけたらと思います。

考える力というのは、このように自他への理解を深め、自分をラクにするために使うもの。そうすれば、バーチャルの世界に現実逃避して自分を守らなくても、リアルの世界を楽しめるようになり、人生がより豊かに、いきいきと感じられるはずです。

どんな感情を持つのもその人の自由です。怒っているのもその人の自由、その人の問題です。他人が干渉することでも、責任を持てるものでもありません。

「私は私。あなたはあなた」―自分と他人の境界をしっかり区別できるようになれば、他人の感情に振り回されることも、自分の問題を他人に責任転嫁してイラ立つことも激減します。

本書がそのきっかけになることを願ってやみません。

 

では、その一例を見てみましょう。

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自分の指導不足を棚に上げて、部下のせいにする上司

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