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生き方

何事も「どうにかなる」という鈍感力を身につけよう

佐々木常夫(元東レ経営研究所社長)

2015年09月10日 公開 2023年09月13日 更新

「良い面」だけに注目すれば人間関係の悩みも消える

鈍感力と楽天性、そして受容力。これらは、ともすれば仕事から手を抜く言い訳にされるかもしれないが、もちろん、佐々木氏が言うのはそういう意味ではない。

「どんなことにも良い面と悪い面があるもの。そのうちの良い面だけを活かすべきです。たとえば鈍感力は、他人への配慮を欠いたり、反省せずに間違いを繰り返したりといった失敗にもつながるかもしれない。楽天的だと、呑気に構えすぎて悪い結果を生む可能性もある。こういうことは、当然、避けなくてはなりません」

どうすれば、良い面だけを活かすことができるのか。

「それには、目的を明らかにすることです。鈍感力を持つのはなんのためか、という目的です。心を疲弊させず、成果を生み出し、良い人生を送るために、鈍感力が必要なのです。そこを見定めておけば、良い面だけを活かして行動できるはずです」

良い面だけに焦点を当てる考え方は、他人と接するときのセオリーでもある。そうすれば、人間関係で悩むことも減る。

「よく『佐々木さんは誰をお手本にしてきましたか?』と聞かれるのですが、私は『全員です』と答えます。どんな人にも良い面と悪い面がありますから、どんな人についても良い面に目を向け、そこに好意と尊敬を持ってきました。

そもそも、『この人は良い人だ』『この人は悪い人だ』と分けて、良い人とだけ接したいと望むのは、会社員には不可能でしょう。100%良い人も、100%悪い人も存在しない。誰に対しても良い面に注目したほうが多くを学べますし、ストレスも減るはずです」

 

心を強くするための「手帳」の使い方

以上のような考え方を習慣に落とし込み、実践し続けるために、佐々木氏が活用しているのが「手帳」だ。

「チャーチルの『悲観主義者はいかなる機会に恵まれても困難を見つけ、楽観主義者はいかなる困難であっても機会を見つける』という言葉のように、本を読んでいて『良いな』と思った言葉などを手帳に書き写しています。

手帳は常に持ち歩いていて、電車の中など、ちょっとした時間に開く。人間は忘れる生き物ですから、何度も確認することで初めて頭の中に定着し、行動にできるようになるのです。

手帳を開くごとに『鈍感力』という言葉を目にすれば、些細なことを気にする自分を戒められます。『身体を壊さない』という言葉を見れば、オーバーワークを防げます。こうして自分をコントロールすれば、いかなるときも心身ともに健かな状態を保てるでしょう」

身体を健康に保つことも、マインドを健康に保つために欠かせない重要な要素だ。

「健全な肉体に健康な精神が宿る、とよく言いますね。これは真実で、体調が悪いと、良い面に注目する力や活路を拓く力が鈍るものです。

ですから、私は毎日ジョギングをしたり、ジムでトレーニングをしたりして、身体を鍛えてきました。今はウォーキングにしていますが、1日に1万5,000歩くらいは歩くようにしています」

この習慣は、もともと、家族を支えるために始めたものだった。

「自分が倒れたら家庭が崩壊してしまうと思っていましたから、基礎体力をつけ、病気にならないように細心の注意を払ってきたのです。時間をムダなく使い、きちんと休むことも心がけていましたね。休息もまた、心身の健康維持に不可欠ですから」

(※『THE21』2015年10月号特集「最強のメンタル強化術」より)

 

著者紹介

佐々木常夫(ささき・つねお)

佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役

1944年秋田市生まれ。6歳で父を亡くし、4人兄弟の次男として母の手ひとつで育つ。1969年東大経済学部卒業、同年東レ入社。30代前半に倒産しかけた会社に出向し再建。1987年社長のスタッフとして経営企画室で経営革新プログラムを担当。1989年繊維の営業でテグス(釣り糸)の流通改革を断行。1993年プラスチック事業企画管理部長。2001年取締役経営企画室長。2003年東レ経営研究所社長。2010年同社特別顧問。2013年より佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役。著書に『会社で生きることを決めた君へ』(PHP研究所)などがある。

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