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歯の不健康が、がんや心筋梗塞を引き起こす!?

花田信弘(鶴見大学教授)

2016年07月28日 公開 2023年09月13日 更新

 

歯の表と裏だけでなく「4面」を磨こう!

 口の中の悪玉菌を減らすポイントは、一にも二にも、歯磨きを丁寧に行なうこと。先のインディアナ大学やハノーバー医科大学の実験でも、歯磨きを再開すると、エンドトキシン濃度や動脈硬化マーカーの値が下がっています。

 そのときに強く意識してほしいのは、歯の四つの面を磨くことです。表と裏の2面だけしか磨かない人が多いのですが、歯と歯の間に隠れた左右の側面も磨かなければ、歯間に溜まったバイオフィルムは除去しきれません。

 歯ブラシの毛先を歯と歯の間に突っ込んで磨くだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも使って、歯の間もきれいにしましょう。歯間ブラシやデンタルフロスは歯磨きをするたびに使うほうが良いのですが、時間がないなら、水流で歯の間を洗浄するウォーターピックもお勧めします。家電量販店に行けばさまざまなメーカーの商品が売られています。

 意外と汚れが残りがちなのが舌。舌の粘膜は剥離することが少ないため、舌苔と呼ばれる白い苔状のものが溜まり、そこで雑菌が増えやすいのです。しかも舌苔を取り除くのは難しく、歯ブラシでゴシゴシ磨きすぎると、舌の表面が傷つくことがあります。舌専用のブラシがドラッグストアで売っているので、それを使うようにしましょう。

 歯磨きは1日に何回してもやりすぎということはないのですが、ヤニ取り用の歯磨き粉は強力な研磨剤が入っていて歯を傷つけてしまうので、使わないでください。

 

さらに念を入れたい人は毎朝5分の「3DS」でケア

 もっとも、バイオフィルムが増えすぎてしまうと、歯磨きで除去するのが難しくなります。完璧を期したい人には、「3DS(スリー・ディー・エス)」という方法をお勧めします。口の中のバイオフィルムを歯科医院で物理的に取り除いてもらったあと、毎朝、殺菌消毒薬を使って、口の中の悪玉菌を取り除く方法です。

 具体的には、歯型を取り、自分の歯の形に合ったトレーを作ります。そのトレーに薬液を入れて歯にセットし、5分間放置するのです。

 トレーを使うのは殺菌消毒薬が唾液によって希釈されないようにするため。薬液を口に含むだけだと十分な効果が得られません。

「口の中の良い菌まで殺してしまわないだろうか」と心配される人がいますが、トレーは歯面で増殖する虫歯菌や歯周病菌などの悪玉菌だけを殺菌するように作られていますので、心配はいりません。

 ネックは、保険の効かない自由診療であるため、それなりにお金がかかること。口内フローラの細菌検査の外注、歯面クリーニングとトレー作製などの費用で10万円ほどかかります。しかし、私自身、実践しており、それだけの価値はあると断言できます。生涯にわたって健康を維持したい人は、ぜひ試してみてください。

 

《取材・構成:杉山直隆》
《『THE21』2016年7月号より》

著者紹介

花田信弘(はなだ・のぶひろ)

鶴見大学教授

1953年、福岡県生まれ。福岡県立九州歯科大学歯学部卒業、同大学院修了。米国ノースウェスタン大学博士研究員、九州歯科大学講師、岩手医科大学助教授、国立感染症研究所部長、九州大学教授(厚生労働省併任)、国立保健医療科学院部長を経て、2008年より現職。この間、健康日本21計画策定委員などを務める。著書に『白米が健康寿命を縮める』(光文社新書)などがある。

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