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世界で戦える人材の育て方~永守重信・日本電産会長兼社長

『衆知』編集部

2016年07月01日 公開 2023年01月19日 更新

 

グローバル人材は「脱日本」と「創業イズム」で育てる

創業から40年で、海外33カ国に拠点を持つ世界トップのモーターメーカーへと成長した日本電産。このグローバル企業を一代で築き上げた永守重信氏は、ビジネス雑誌のアンケート「社長が選ぶベスト社長」のナンバーワンに輝いた“社長の中の社長”だ。その人材育成は、「知的ハードワーキング」「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」といった熱血指導で有名だが、近年のグローバル化とともに大きく進化を遂げている。さらなる飛躍を目指す永守氏は、はたして世界で戦える人材をどう育てようとしているのか。

 

永守重信(日本電産会長兼社長)
ながもり・しげのぶ。1944年京都府生まれ。職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒。1973年7月、28歳で日本電産株式会社を設立。1998年東京証券取引所1部上場、および大阪証券取引所1部に昇格。1980年代後半からは、駆動技術に特化した事業の強化・拡大に向けM&Aを積極的に展開し、同社を屈指のグローバル企業へと成長させた。著書に『奇跡の人材育成法』(PHP研究所)など多数。

取材・構成:高野朋美
写真撮影:白岩貞昭

 

他社の倍働いても勝てない時代

昭和50年、わが社が念願だった自前の工場を設立した時、一番困ったのが「ヒト」です。当時は零細企業ですから、新卒募集をしても一流の人間は来ない。いわゆる三流、四流の人材しか集まりませんでした。こうした人を一流に育てるにはどうしたらいいか、真剣に考え、議論しました。

その中から編み出された採用方法が、声の大きな人を採用する「大声試験」、昼飯を早く食べた人から採用する「早飯試験」などです。そして、入社した人材は徹底的に叱りました。叱られるのは見込みがあるからだ、人は叱られるようになってこそ一人前だ、という考え方を浸透させ、忍耐力と向上心をかき立てていきました。でも、今そんな人材教育をやったら、誰もわが社に応募してきませんし、育てるのに膨大な時間がかかります。ならば、外からいい人材を採るしかないと考え、この10年はハーバード大や東大の出身者を大量に採用してきました。

ところが、これがことごとく失敗に終わった。彼らには辛抱する力がなかったのです。素質はあったのだから、せめて3年、私のもとで辛抱して学んだら立派な人間になっただろうに、と思います。

経営は、成績がよければできるものではありません。やはり「気概」とか「執念」が必要なのです。成績のよい人が成功できるなら、日本の大企業は軒並み業績がいいはずですが、そうはなっていないのが証拠です。

だいたい、利益を2倍にしようと思ったら、2倍の努力では足りない。2乗倍の4倍の努力が必要なのです。ですから利益を3倍にしようと思ったら、9倍頑張らないといけない。

これまで、「人の倍働く」「納期を半分に」というやり方で倍増を目指し、それで勝つことができました。でもそれは、日本企業が競争相手という土俵の上だったからです。1日の労働時間も決まっていて、企業体系もほぼ横並びだったから、他社の倍働けば勝てました。

ところが、今は状況が全く違います。日本とは事情が異なる国々と戦わなければならない。賃金も違えば、為替も違う。いかに効率を上げるかがビジネスの勝敗を決める中、われわれも働き方を変えていかなければならないのです。

 

日本の感性で築かれたシステムを変える

私は、残念ながら日本の将来は非常に暗いと思っています。仕事がラクで、早く帰れて、給料がよい企業が学生の人気ランキング上位を占めている。これから成長するベンチャー企業に入って業績をよくしてやろう、という気概のある学生はほとんどいません。親もまた、知名度があって安定している会社に就職しろと言います。

でも、学生に人気の企業上位100社を見ると、そのうち80社はリストラを行なっています。学生はそういうところを見ようとしない。名前が通っているかどうかだけを気にしています。

そんな状況ですから、わが社は日本国内ではなく、海外に目を向けて人材を集めています。現在、従業員の9割が外国人。気概や執念を持った、ハングリー精神のある人がたくさんいます。その点では、日本の将来は暗いものの、わが社の将来は明るいと感じています。

これからグローバルに打って出ようとする企業にアドバイスしたいのは、「日本の悪しき感性は捨てろ」ということです。人事体系から給与体系から、現在日本で当然のことと考えていることを、いったんすべて忘れる。そして、グローバル社会で通用することしかやらない。例えば、英語を話せる人しか雇用しない。年齢や性別に関係なく、いい人材はどんどん登用する。家族手当などは一切廃止する。その代わり、グローバルベースの賃金をきちんと払う。そんなふうに、システム自体を変えていかなければなりません。

外国人を見ていると、ハングリー精神はもちろん、「こうなりたい」という明確な目標を持っています。ところが日本の場合は、「お前を課長にしてやる」と言うと、「いいです。しんどいですから」と断ってくる。これが中国だったら「A君が課長になったのに、なぜ自分はなれないんだ!」とかみついてきますよ。こういう社員をたくさん抱えなければ、企業に競争力なんてつきません。偉くならなくていいと言うわりには、給料が安いと文句を言う社員ばかりでは、話にならないのです。

 

※本記事はマネジメント誌『衆知』2016年7・8月号、特集「世界で戦える人材の育て方」より、その一部を抜粋して掲載したものです。

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