THE21 9月号書評から
2011年08月12日 公開 2022年09月15日 更新
『世界で生きる力』
マーク・ガーゾン 著/松本 裕 訳
英治出版/1,995円(税込)
世界に通用する人材になるためには?
外国人と仕事をする機会が増えてくれば、英語でコミュニケーションを取るという外的な変化も必要だが、「自分をグローバル化する」という内的な変化も必要だと、①『世界で生きる力』は指摘する。多様な背景をもった、出自の違う人びとを相手にするために、「直視する力」「学ぶ力」「連帯する力」「助け合う力」を身につけなければならないというのだ。
「直視する力」とは他者を正しく捉えて接点を見出だす力、「学ぶ力」とは、自分の固定観念に気づいて、それを捨てる力のことだ。「連帯する力」とは他者と感情を通わせて人間関係を構築する力、「助け合う力」とは自分と同類ではない相手とでも協力する力のことである。これらの能力をもつ「グローバルな経営者は『イタリアやスペインでは組合があるからそんなことはできません』『日本では財務省のせいでそれができません』と言われても素直に受け入れたりしません。文化を根拠とする言い訳の山をかき分けて、イノベーションの機会を掘り起こすのです」と、本書に紹介されているグローバル・ビジネスの専門家はいう。
②『世界で稼ぐ人 中国に使われる人 日本でくすぶる人』は、T・フリードマン著『フラット化する世界』(日本経済新聞社)を参照して、2000年までの企業中心のグローバル化に代わって、それ以降、個人がグローバル化の主役になっているとする。そして、個人として外国人と競争していくために必要なのは、「外交力(語学力・コミュニケーション力、人脈形成力、世界情勢判断力)」「専門性」「リーダーシップ」だとし、それぞれの磨き方を解説する。
グローバルな人材といえば米国の一流大学を卒業しているというイメージがあるかもしれないが、③『米国製エリートは本当にすごいのか?』の著者で、スタンフォード大学大学院に留学した佐々木紀彦氏によると、米国の一流大学の優秀な学生は、日本の優秀な学生と大差ないという。ただし、大量のインプットとアウトプットをさせることで、学生全体の平均値を上げているとのことだ。
佐々木氏は、少子化、不況、さらに成熟社会に達して米国への憧れを失った日本から米国への留学生が減るのは当然だというが、④『創発的破壊』の著者・米倉誠一郎氏は海外留学生の減少を嘆く。世界を知ることでこそ、イノベーションが生まれるという。(S.K)
『世界で稼ぐ人 中国に使われる人 日本でくすぶる人』 |
『米国製エリートは本当にすごいのか?』 |
『創発的破壊』 |
THE21 最新号紹介
THE21 2011年9月号
楽天やユニクロによる英語の社内公用語宣言から一年がすぎ、多くの企業にその意識が浸透しつつあり、これまで英語とは無縁ですんでいた人も、いつ会社から急にTOEICの点数を課されてもおかしくない状況に変わりつつあります。その一方で、多くのビジネスパーソンからは、「学校卒業以来、ブランクがあるのでいまさら無理」「忙しくて、英語学習にばかり時間を使えない」「何度か挑戦したが、身につかず挫折した」という悲鳴も聞こえてきます。そこで今月号では、忙しくて勉強時間がとれない社会人のための「最短最速勉強法」を紹介します。今度こそ挫折しない、最強の勉強法が集まりました。