「神様の女房」松下むめの の “生きたお金の使い方”
2011年10月15日 公開 2022年10月05日 更新
お金儲けの秘訣
お金儲けの秘訣は何かといえば、私は、お金を使わないことだと思います。そうすれば、お金はみな手もとに残りますけれど、実際にはそれは不可能ですから、結局、ムダ使いをしないことに尽きると思います。それに関連して買い物のコツといったら何ですが、私がいつも心がけていることをお話ししてみましょう。
女性は特に衝動買いが多いといわれていますが、私はまず計画を立てて買い物をするように努めています。また買い物にはお金をあまり持っていかないほうがよいですし、掛け買いもいけません。現金で買ったほうがよいと思います。掛け買いの場合、手もとのお金が減りませんので、ついついあれこれ品物を安易に買ってしまったり、必要のないもの、よけいなものまで買ってしまったりしてしまうのです。百貨店でもカードでしたら、一応月末まではタダですから、どうしても買いすぎます。また割引きチケットをいただいても、安いから今買っておこうということで、来年のものまで買ってしまいがちになります。そのときはちょっと得をしたと思うのですが、ほんとうはそうではないのですね。
私はやはり、そのときそのときの相場で買うほうがよいと思うのです。高ければ高いなりに始末していく方法はあります。そんなことを言ったら、電気製品が売れなくなるかもしれませんね。これは皆さんも心当たりのある方が多いことと思いますが、私の場合もそうなのです。
それと、もう1ついつも心がけていますことは、割安でも必要のないものは買わないということです。たとえば、八百屋さんでかりにナスが3つ一山で10円としましょうか(ほんとうはもっと高いでしょうが)。それが、2つだったら7円とか8円とかいいますね。そうすると、誰でも一山、3つのほうが得なような感じがします。けれどもそのとき、今3つも買う必要がなく、2つあったら十分間に合う場合には、私はそのナスを3つ一山で買う必要はないと思うのです。3つ買ったほうが割安で、2つなら割高だとしても、必要な数が2つなら、2つのナスだけを買うほうが結局は上手な買い物の仕方だといえます。 要らないものまでついつい買ってしまう。それはよくないことだと思うのです。今でも、自分で市場に行って買い物をしていますが、まあ、このごろはこの家にいる人も少しは多くなりましたし、少々多く買ってもみな食べてくれるだろうと思って買ってくることもありますけれども、やはり必要なものだけを買う、それが私の基本方針です。
ですから、私は株とか投機といったものもあまり好きではありません。株を買ってかりに儲けたとしても、またそれを少なくしてしまったら、申しわけないという感じがするのです。
著者: 松下むめの(まつした むめの)
明治29年(1896)、兵庫県淡路島浦村(現在の東浦町)にて井植家の次女として生まれる。 浦高等小学校卒業後、大阪・船場の旧家に奉公に出る。
大正4年(1915)、19歳で松下幸之助氏と結婚。大正7年(1918)、松下氏が創業した松下電気器具製作所(現在のパナソニックグループの前身)の草創期には、経理事務を一手に引き受ける一方、住み込み従業員の食事や風呂の世話などして事業を支え、「社員の母」と慕われた。昭和8年(1933)、本店・工場が現在の門真市に移ったのを機に、第一線から退いたが、その後も幹部社員の夫人の懇親会「みどり会」を結成し、側面から経営を支援した。
平成5年(1993)9月5日、97歳で死去。
弟に、井植歳男氏(井植家長男、三洋電機(株)創業者)、祐郎氏(次男、同社二代目社長)、薫氏(三男、同社三代目社長)がいる。