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なぜ期待はずれの本を選んでしまうのか? POPで養う「本を選ぶ力」

田口幹人

2018年08月17日 公開 2022年06月22日 更新

 

探している商品が無くても、「予期せぬ出会い」を演出したい


『震える牛』(小学館文庫)のPOP。田口氏によると、このPOP展開により「めちゃくちゃ売れた」とのこと。

超大型の三店舗に囲まれたさわや書店フェザン店は、在庫量では絶対的に勝ち目はありません。全国的なデータを基に組まれた棚と圧倒的な在庫量に、物理的に太刀打ちできるはずがないからです。

それでも足を運んでもらうために何ができるのかを考え抜き、辿りついたのが「探している本がなくても、帰りに二・三冊、手にとっている店づくり」というコンセプトでした。

本との予期せぬ出会い。それが僕らの目指すところです。

駅ビルにあるこの店は、お客様の性別・年齢層も幅広く、それだけにいろいろな本をおすすめしていて、その結果、店内にはPOPが乱立しています。しかも頻繁に入れ替わります。

まあ、見る人が見たら、下品な店なのかも知れません。しかしそれもまた、さわや書店フェザン店という場の特徴ではないでしょうか。

わざわざPOPだけを読みに来店されるお客様も、たくさんいらっしゃいます。お客様とのコミュニケーションツールとしての機能も果たしている気がしています。

POPは、書いた書店員の個人的なものではありません。また、その書店員の自己満足のために書かれたわけでもありません。

今まで店に立ち寄ってくださったお客様と、これからご来店されるであろうお客様を想像し、文章を書いています。

「一冊の本を、より輝かせる言葉はなにか」に尽きるのです。だから、誰かの自己満足のために、さらには出版社や著者のために書かれたPOPは、効果が薄いです。当たり前ですよね。

これから本屋に立ち寄る際には、ぜひ書店員が書いたPOPを読んでみてください。さらには、その書店員が今までどんな本をすすめてきたかも見てください。

本を通じて友達になれる書店員もいるかもしれませんし、まったく趣味が合わない書店員もいるかもしれません。

しかし、一冊の本をすすめようと思い、POPを書く書店員には、意志があります。POPを書くことで、敬遠される可能性があることを考えると、POPをつけないという選択肢もあるからです。

それでも手にとってほしい、読んでほしいという想いの強さが勝るからこそ、POPをつけるのです。

書店員は、発売された本すべてを読んでいるわけではありません。書評家のように、体系立てて本を読んできた人も少ないでしょう。

言い換えれば、お客様側に近い存在です。だからこそ、POPに書かれてある言葉を、本選びの一つの選択肢として使ってほしいのです。

信じて読んで失敗だった、と感じることもあるでしょう。いや、もしかしたらそう感じることの方が多いかもしれませんよね。

だからこそ、POPをつけるのは難しいのです。どの本に、どの様な言葉を添えて店頭に並べるか。僕はいまでも、真剣に悩みに悩んでPOPを書いています。

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販促物や書評に裏切られ、そして本を選ぶ力が身につく

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