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生き方

15秒で上司に言いたいことを言う技術

齋藤孝(明治大学文学部教授)

2018年11月13日 公開 2022年12月21日 更新

上司から「お前」と呼ばれるのが嫌なとき


イラスト:たつみなつこ

「"お前"と言われるとどうしてもテンションが下がってしまいます。別の呼び方をしてもらえませんでしょうか」

ひと昔前なら、上司が部下を性別に関係なく「お前」と呼ぶことは珍しくありませんでした。いまでも、そう呼ばれて平気な部下は多いでしょう。

しかし、実際に社内で「お前」と呼ばれたことで嫌気がさし、退職してしまったというケースもあるようです。「両親からもそんなふうに呼ばれたことはなかった」というのが、大きな理由だそうです。

前述のパワハラも同様ですが、いままでの慣習がどうであれ、言われた側が不愉快に感じるなら、言う側が悪い。それが昨今の社会常識です。だから言われた側には、それを申し出る権利があるということです。

上司の側も、そう指摘されれば「そうか、それは悪かったな。親しみを込めて"お前"と呼んでいたんだけど」と素直に思うはずです。多くの場合、"お前"という呼び方にこだわりがあるわけではないので、それを嫌がる部下がいるなら改めるでしょう。

要は、部下の細かな事情を知っているかどうか、だけの話なのです。どういう言動が嫌なのか、部下自身がそれを伝えなければ、上司は知る由もありません。その共通理解を図るために、十五秒という長さが最適なのです。

もしこのとき、部下に対して「甘えるな」と一喝する上司がいたとしたら、おそらくその上司の地位はやがて危うくなるでしょう。

上司に言って埒が明かないなら、その経緯を上司の上司、もしくはしかるべき窓口に申し出るしかありません。

これはあくまでも最終手段で、その前に上司と直接話すことが前提ですが、それほど社会はパワハラに対して厳しくなっているということです。もちろん、セクハラについても同様でしょう。

ちなみに昨今は、部下を呼び捨てにしただけでもパワハラと言われかねません。男性の場合は「○○君」、女性の場合は「○○さん」が妥当な呼び方ですが、中には「○○君」と呼ばれることを嫌がる人もいる。その場合は全員を「○○さん」と呼ぶしかありません。

「男女平等」の観点からも、また性同一性障害の方への配慮という意味でも、全員一律のほうが適していると言えるでしょう。

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