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都築明寿香・都築学園グループ副総長 日本の大学が国際社会で果たすべき役割とは

高井昌史の教育改革対談

2018年12月23日 公開

建学の精神の教化が大学を形づくる

高井 アメリカで多くを学んで日本に戻られて、ご自身の生家が教育者の家系なのだと改めて意識されたのでは?

都築 それがあまり意識したことがないんです(笑)。ただ、両親からは「教育と経営は両輪であって、母体となる経営がしっかりしていないと、教育という花は開かない」と常々言われていました。

高井 教育界には「やせ我慢の経営」という言葉があります。教育者がお金の話をするのは慎むべきという風潮からきたのでしょうが、経営が成り立たなければ教育も成り立つわけがないですよね。

都築 はい、ボランティアで私学経営はできません。教育理念にしても、しっかり経営ができてこそ実現できるのです。

高井 理念というと、都築学園グループには、頼助先生が定めた「個性の伸展による人生練磨」という建学の精神があります。

都築 はい。六十年前の精神を現代の教育に反映させるために、今年から日本経済大学(以下、日経大)をモデルケースとして、建学の精神とは何か、その精神を実践するには各分野で何をすべきか、これらを体系化する取り組みを教職員の皆さんと一緒に進めています。

高井 教職員の採用も、先生が最後には一人ひとり面接されるそうですね。そこで、建学の精神を共有してもらうために。

都築 今後はもっともっと共有していこうと思います。というのも、企業は新人研修で企業理念や社訓といったものを徹底的に教えますよね。
それなのに大学ではなぜやらないのか不思議でした。だから教職員研修でちゃんと教えるべきだなと思ったのです。大学というのは、先生一人ひとりが建学の精神を意識して取り組むことで形づくられますし、それが学生にも伝わっていきます。

高井 それは大切なことですね。ところで、日経大は以前にくらべ日本人学生が増えています。それは、日経大に入れば外国人の友人がたくさんでき、海外留学の機会も多々あると評判になっているからでしょう。

都築 日経大の日本人卒業生の中には、就職してみずから東南アジアへの異動願いを出して現地で勤務する人がいます。彼らは帰国すると母校を訪れ、「こういうチャレンジができたのも、やっぱりこの大学で多国籍の生活を経験できたからです」と言ってくれます。

高井 グループ内の大学にも留学生は多いですね。今何人ぐらいいるのですか。

都築 グループ全体の高等教育で約5000人です。大学院より学部に留学生が多いのが特徴ですが、いわゆる短期留学ではなく、4年間の長期留学を目指して来日してくる学生がほとんどです。そして彼らの約半数は、将来日本での就職を希望しています。今後、ますます少子化が進んでいく日本では、国策にも取り入れられ始めていますが、留学生のマンパワーが必須になるはずです。

高井 私が感心するのは、留学生も日本語で講義を受けていることです。来日前から日本語を勉強しているんですよね。そういう学生が長期間日本にいれば、さらに日本語が上達するし、日本の企業の戦力にもなると思います。

都築 はい。外国人留学生に英語で教育している大学は多いのですが、将来日本で働いてもらうことを考えると、やはり彼らには日本語を使ったほうがいいと考えます。日本語教育、そしてマナーや文化を教えることは、ぜひ国策としてもやるべきです。
それに、留学生が卒業後も日本に留まれるようにすることも大きな課題です。当グループの留学生も、日本で就職してもだいたい十年働くと帰ってしまう。この対策にも国として取り組むべきだと思います。例えば慢性的に人手不足の介護や看護、保育の世界では、留学生は大きな戦力になるはずですが、なかなか定着できないのが現状ですから。

高井 これは私が常々言っていることですが、介護資格を日本とベトナムの両国共通にすれば、日本でも、ベトナムに帰ってからも介護福祉士ができます。そういう仕組みをつくらないと、この少子高齢化社会を乗り切ることはできないでしょう。
都築 彼らは日本語を勉強しているので、あとはコミュニケーションをどうとるか。介護される人ときちんとコミュニケーションがとれれば、現場で十分に働けると思います。

※本稿は、マネジメント誌「衆知」2018年9・10月号・「高井昌史の教育改革対談」より転載したものです。

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