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社会

宗教統制を強化する中国 それでもローマ教皇とバチカンが見せる自信

徳安茂(元外交官、在バチカン前公使)

2019年01月10日 公開 2019年11月23日 更新


ローマ教皇・フランシスコに謁見する徳安茂氏

<<ローマ教皇庁を擁するバチカンは世界最小の国だが、2000年の歴史を有するインテリジェンス・ネットワークと12億人以上のカトリック人口を背景に世界情勢に大きな影響を与える存在となっている。特に2013年の就任以来世界的な人気を誇るフランシスコ教皇の下でこの傾向は顕著なものとなっている。

「なぜローマ法王は世界を動かせるのか」の著者であり、元バチカン公使の徳安茂氏が同著において、ローマ教皇とバチカンが世界に対して持つ大きな影響力を解説している。

ここでは、来日の可能性が高まってきている教皇フランシスコの素顔と昨今話題に上ることの多いバチカン・中国関係の動向に関する一節を紹介する。>>

※本稿は徳安茂著「なぜローマ法王は世界を動かせるのか」より一部抜粋・編集したものです。
 

世界が熱狂するフランシスコ法王の素顔

カトリックはいわばキリスト教諸宗派の老舗といってもよい。

ギリシャ正教はローマ帝国の東西分裂(395年)後に東ローマ帝国の国教として発展し、正式にカトリックから分離したのは11世紀に入ってからである。プロテスタントは、16世紀の宗教改革でカトリックから分離している。

カトリックの大きな特徴は、ローマ法王を頂点とする明確な組織性にあるといえる。プロテスタントや正教会は、カトリックのように世界中の信者を網羅する組織立った構成をとっていない。

とくに、プロテスタントは教会(および聖職者)と聖書の役割に対する認識に違いがある。カトリック、プロテスタント双方とも同じキリスト教として教会も聖書も重要なのはもちろんである。

しかしプロテスタントにおいては、個々人が神とつながっているのはあくまで聖書を通じてであり、その意味では教会や聖職者の役割は補助的なものととらえられている。16世紀の宗教改革以来の伝統といえよう。

これに対し、カトリックにおいて法王が有する権威は文字どおり神聖不可侵であり、その権力と役割はまさに専制君主のそれであるといってもよい。

バチカンに属する者は、日本の首相にあたる国務長官であれ枢機卿であれ、みな法王に仕える個人的使用人のような立場にある。その意味では、法王への独占的な権力集中度は、米国における大統領のそれよりもずっと顕著であるといえる。

したがって、その時代時代の法王の性格や能力が極めて重大な意義をもつことになる。法王=バチカンといえるほど、法王の個人的資質がその時代のバチカンのあり方に濃厚に反映されるのである。

バチカンが国際政治のなかでどのように動き、今後どこへ向かっていくのかを考えるためには、法王個人に焦点を当てる必要がある

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自分の言葉で話す、原稿を読まない法王

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