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年金で最もトクする"支給開始の年齢" 調べてわかった「損益分岐点」

荻原博子(経済ジャーナリスト)

2019年01月31日 公開 2023年09月12日 更新

年金を活用しないともったいない

そもそもなぜ、いま年金の受給開始年齢の引き上げが議論されているのでしょうか。

もちろん、財政の悪化を止めたいという政府・財務省の思惑からでしょう。団塊の世代前後で人口が多い層への支払いは、少しでも先延ばしにしたいわけです。

いままで身を粉にして働いてきた人びとに対し、何とも身勝手な話だと思います。加えて年金の仕組みが複雑すぎて、国民がしっかりと理解できていない。

だからこそ、私たちの知らないうちに受給開始年齢が上がっていた、ということがないよう目配せする必要があるのです。

世間にあまり知られていない、という点では、遺族年金と障害年金が挙げられます。

遺族年金は、夫婦どちらかが18歳未満の子どもを遺して他界した場合に支給され、サラリーマンだと妻と子ども2人を遺して他界すると、毎月15万円前後のお金が支給されます。

またサラリーマンが亡くなると、1000万円から2000万円程度の死亡退職金(各企業によって仕組みや額は異なる)が出ます。

さらに住宅ローンがあっても夫名義ならば、民間の金融機関で借りたもののほとんどは団体信用生命保険とセットになっていますので、残債は保険と相殺されます。

遺された家族は、ローンを支払う必要のなくなった家に住めるので、遺族年金と死亡退職金で暮らしていけます。奥さんがパートなどで働けば、より家計に余裕が生まれるはずです。

このとき、考えていただきたいのが生命保険です。「いざというとき」を想像して、莫大な額の生命保険に入っている方は少なくない。ところが遺族年金の仕組みを知っていれば、サラリーマンだと必ずしも多額の保険に入る必要がないことがわかります。

家計上、とくに問題になるのは子どもの教育費。大学まで通わせると1人約1000万円かかる、といわれています。その分を賄える額の生命保険に入ることは理に適っていますが、逆にいえば、子どもが巣立てば生命保険の必要性は減るので掛け金は減らして構わない。

もう1つの障害年金について、あまり知られていないのは、身体に障害を抱えた方はもちろん、鬱病などの精神病も支給の対象になる、という点です。

会社勤めの人は企業の健康保険に入っているはずなので、病気で休んだとしても最長1年半のあいだ、給料の3分の2が支給されます。月給30万円の方ならば20万円は受け取れる。

もし1年半が過ぎても、今度は障害年金をもらうことができます。金額は障害の程度によって変わりますが、障害が重く、奥さんと18歳未満のお子さんがいれば月12万円前後の給付があります。

この制度を知っていれば、多額の医療保険に入る必要がない、と申し上げたこともおわかりいただけるでしょう。

年金というと、読者の方は先行きへの不安から、ともすれば暗いイメージを抱きがちです。しかしシステムが複雑で完全に整備されていないとはいえ、しっかり理解して制度を使いこなせば、私たちの暮らしをより良くする手助けとなるのです。

せっかく高いお金を払っているのですから、仕組みを理解して活用しないともったいない。注意を払う分だけ、あなたの暮らしはもっと豊かになるのですから。

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