「学業よりも人間性の時代は終わった」 企業が学生を選ぶたった2つのポイント
2019年05月20日 公開
なぜ勉強する人のイメージがネガティブだったのか?
もうひとつの背景としては、「学び続ける」ことに対するイメージが悪いことが考えられます。
じつは、学生時代から自発的な学びの経験がある人は、全体の12.6%に過ぎません(※リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」プロジェクト)。それ以外の人は、勉強してもおそらくテストのためであり、勉強したいから勉強していたわけではないのです。
つまり、「リストラの対象になる」とか「資格を取ったら給料が上がる」などの明確なコスト・リターンの関係がない限り、学びに意識が向かいづらく、「学び続ける」ことに対するポジティブなイメージがないことが考えられます。
さらに、採用や昇進にあたって、個人の専門知識や技能を活かすスペシャリストではなく、幅広い部署を経験したジェネラリストが求められてきたことも背景にあるでしょう。
色々な部署を行き来して多くの業務に携わった経験と、そのなかであまり角を立てずに世渡りしていくような「人柄」が重視されてきたため、学びよりも組織への適応のほうが優先されていたのです。
要するに、わざわざ自己投資をして「勉強して成長する」よりも、「組織への情緒的な適応を進める」ことこそが、個人がサヴァイヴするための合理的な戦略だったわけです。
企業が学生を見るポイントは変わった
繰り返しますが、僕は自己投資や「学び直し」はとても大切で、色々な意味で必要不可欠なものだと考えています。
なぜなら、いまの時代には、初職で覚えたノウハウを退職まで引っ張れる仕事はほとんどないからです。やはり、仕事内容の変化を見据えて、どこかのタイミングでスキルアップしていくことは大切なことです。
加えて、特に人生の後半において、自分がどんどん社会の「お荷物」になっていく状況に備えておくことも必要でしょう。この話は本章の後半で再び触れます。
そして、いま組織の側も、産業構造の転換を睨んで「学び続ける」ことを社員に要求するようになっています。
これは、僕がいま教員として大学生を見ている立場から実感していることですが、ここ数年であきらかに変化しているのが、多くの有力企業が採用に際して学生の学業成績を重視するようになったことです。
その指標としてもっとも参考にされるのは、GPAと呼ばれるもの。いわゆる評定平均のことで、科目ごとの評価を5段階に数値化したものの平均値を参考にする企業が増えているのです。
また、GPAでなくとも、少なくとも大学の成績証明書は絶対に提出させられるし、面接においても成績について問われる状況になっています。
さらには、学業の中身についても詳しく聞かれます。具体的には、ゼミや研究室でどのような研究をし、どんな内容の卒業論文を書くつもりなのか。少なくとも、大学でなにを学んできたのかを必ず聞かれ、その答え方も厳しく見られるようになっているのです。
企業はいったい、学生のなにを見ようとしているのでしょうか?
まずひとつは、日本企業ならではの面もありますが、いわゆる「がんばった経験」です。
つまり、学生時代に力を入れたこと(「ガクチカ」とも言われる)で、たとえばなにかの課題に直面したときに、その課題をどうやって乗り越えたのか。そんなエピソードを聞きたがっているのです。
もうひとつは、入社してからも学び続けてもらうために、「学び続ける意欲があるかどうか」を見ています。内定後に資格を取らせる企業も多く、資格取得のための研修課題を出すことがあたりまえになっています。
また、入社後の自己投資を推奨する企業も増えているため、「学業成績が良くなければ、働きながら学び続けられるわけがない」と評価されているのです。
つまるところ、研究内容に興味があるというよりは、学習に対してモチベーションを持って取り組んだかどうかを見るために、学業成績を確認することが増えています。