医学部卒の息子が「こんな家に生まれたくなかった」と嘆く理由
2019年07月24日 公開 2023年01月11日 更新
ブランド志向が子どもを追い詰めていく
こういう環境なので、私も医者か薬剤師になるように子どもの頃から言われていました。
私の家は、異常なくらい教育に厳しく、医学部受験に実績のある中高一貫の進学校を受験したのですが、落ちてしまい、母から『恥ずかしくて、親戚に顔向けできない』と言われました。
仕方なく、滑り止めの女子大の付属校に入り、そのまま内部進学で女子大に進んだのです。私が中学受験に失敗してから、親の期待は弟に集中するようになり、弟は中高一貫の進学校から国立大学の医学部に入って、今は研修医です。
母は、『親戚から、あなたの結婚相手はどんな人と聞かれて、MRだなんて、恥ずかしくて言えない!』と言います。おまけに『高いお金を払ってあなたをお嬢さん学校に行かせたのは無駄だった。
お父さんのお友達に頼んで大学病院の医局秘書にしてもらったのは、医者と結婚させるためだったのに、なんでわからないの! そんなところに嫁にやるために育ててきたんじゃない!』とか、すごい言い方をします。
私が何を言っても、聞く耳を持たず、結婚を認めてくれそうにありません。両親は二人ともブランド思考で、人一倍世間体を気にしているので、結婚相手を職業だけで判断するみたいです。
それはよくわかっていたので、今まで本当に好きな人がいても、『いい大学を出ていないので認めてもらえないだろう』『彼の仕事は親が気に入らないだろう』などと考えて、紹介できず、別れたこともあります。
今の彼は、大きな製薬会社に勤めていて、認めてもらえるかもと思ったのですが、職業だけで判断されて、どうにもなりません。そのため精神的に参っていて、気分が落ち込んでいるのですが、弟も同じみたいです。
親のプレッシャーで「仕方がなく」医師になった弟の本音
弟は私と違って優秀で、医者になりましたが、本当はゲームやソフトの開発をしたかったようです。理数系が得意で、IT関連の仕事に就きたかったのに、両親が許しませんでした。
父は『そんな水商売みたいな仕事、絶対許さん』と言い、母は『うちの子が誰も医者にならなかったら、親戚から笑われる』と言いました。
そのため、弟は仕方なく医者になりました。しかし、患者さんと話すのがあまり得意ではなく、自分は本当に医者に向いているのかと悩んでいるようです。
臨床医ではなく、基礎医学の研究者になろうかとも考えて、父に相談したところ、『基礎の研究者なんて食えないぞ。うちの親戚は金持ちばかりだから、肩身が狭い』と反対されたとか。
私も弟も恵まれた家庭で育ったように見えるかもしれませんが、世間体や見栄を優先する両親のせいで、鬱屈した日々を過ごしています。二人で『こんな家に生まれたくなかった』と言い合っています」
このように子どもの気持ちよりも世間体や見栄を優先する親が本性を現すのが、進学と結婚という節目である。
「中学受験に失敗したときに、母から『恥ずかしくて、近所を歩けない』と言われた」
「高校受験で公立に落ちて、私立に通うことになってしまい、父から『うちの家系はみな国公立なのに、恥ずかしい』と言われた」
という類いの話を聞くことも少なくない。