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「うっかり忘れ」は記憶力のせいじゃない

飯野謙次(スタンフォード大学工学博士/東京大学特任研究員)

2019年11月29日 公開 2022年07月22日 更新

 

「失念できない」を仕組み化する

「そうはいっても、昔は問題なく覚えることができていました」
という方もいるかもしれません。

たしかに、連絡手段が基本的には電話だったりパソコンのメールだった頃や、もっと以前のシステム手帳だけで予定管理ができていたような時代には、予定やスケジュールは非常にシンプルなものでした。覚えておくことも、それほど負担ではなかったはずです。

また、現在のように、「残業はほどほどにして、ワークライフバランスを」という風潮ではありませんでしたから、仕事の予定さえ覚えておけば、だいたいの自身の行動は把握できました。

しかし今や、会社と家の往復だけで1日が終わることは減りつつありますし、また、仕事でも私生活でも、チャットのような即時性の高いやり取りが増えました。

「脳が気にかけておかなければいけないこと」は、私たちが意識していないうちに格段に増えてしまっています。

そうはいっても、人間の脳は、必要なときには機械でもできないような精密作業ができるほどの集中力や正確さを発揮する一方で、普段の世の中の把握は大雑把にするようにできています。

前者の例でいえば、今でもミクロン単位の研磨が必要な作業は機械ではなく人間が行なったほうが正確だといわれています。後者の例でいえば、何年かぶりに会った人が多少変化していても同一人物として認識する、ということが挙げられるでしょう。

そんな脳にとって、普段から細かい予定を精密に覚えておき、しかも適切なタイミングで気づくために注意力を払っておく、というのは負担の大きい作業なのです。

このような作業が得意なのは、人間ではなく機械です。

つまり、失念してしまう人に必要なのは、

「記憶力をもっとよくしよう」「注意を払って、気づけるようにしよう」
という精神論ではなく、

「予定が決まったらすぐにスケジュールに入れて、直前になったらリマインドされるように設定しておこう」
「手帳をこまめに見る習慣をつくろう」

という「仕組み化」です。

うっかりや失念の原因を、「注意不足」「記憶力不足」ではなく、「予定管理不良」ととらえるようにするだけで、「どうすれば予定管理をより正しくできるのか」を考えられるようになります。

うっかりや失念を、根本から防ぐことができるのです。

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子どもの頃の「高い記憶力」の正体

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