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「パワハラする人は、セクハラもしがち」 仏教典が指摘する“嫌な人のパターン”

鵜飼秀徳(ジャーナリスト・浄土宗僧侶)

2019年12月20日 公開 2024年12月16日 更新

2019年は、企業の不祥事がらみの話題に尽きなかった。とくに目を惹いたのが、セクハラやパワハラなど、上司によるハラスメンであろう。なぜ、ハラスメントはなくならないのか。自身も企業に勤めていた経歴をもつ“ジャーナリスト僧侶”の鵜飼秀徳氏が、企業が直面する課題と仏教の教えの関連性について解説する

※本稿は、『ビジネスに活かす教養としての仏教』 (PHP研究所)の内容を一部抜粋、編集を加えたものです。

 

増え続ける「嫌がらせ」

近年、組織のパワーハラスメントや、セクシャルハラスメントに関する不祥事が相次いでいます。

記憶に新しいのが、吉本興業トップによる所属芸人へのパワハラ騒動ではないでしょうか。反社会的勢力の会合に出席して金銭を受け取った問題で、宮迫博之さんと田村亮さんが謝罪会見をしたいと訴えたのに対して社長が、

「会見をやってもええけど、ほんなら全員連帯責任でクビにするからな。俺にはお前ら全員を首にする力があるんだ」

などと言い放ったといいます。

遡ぼれば、わが国が不況にあえいでいた2000年代初頭。メーカーなどの多くの企業で大規模なリストラが実施されました。そして、人減らしのために辞めてほしい社員を「リストラ部屋」に閉じ込めるなどの、露骨な嫌がらせが横行しました。

窓のない殺風景な部屋で電話受けなどの単純作業をひたすらさせ、退社に追い込むといった手法です。これは、組織ぐるみの悪質なパワハラと言えるでしょう。

ここ数年はコンプライアンス遵守が叫ばれ、企業内での研修や内部通報制度が拡充してきました。目に見える形でのパワハラやセクハラは少なくなってきているようにも思えます。

しかし、社外などの見えないところで様々なコンプライアンス違反が横行し、苦しんでいる人が大勢いるのも現実です。

最近では、「就活セクハラ」のニュースがちらほら聞かれます。人気企業に所属する会社員が、OB訪問でやってきた学生に選考をちらつかせてデートに誘ったり、しつこく連絡したりする事例が多数報告されています。

 

あなたの会社は、ガタピシしていないか?

パワハラもセクハラも、立場の差を利用して相手を傷つける卑劣な行為です。こうした組織は、「ブラック企業」と呼ばれ、非難の対象になっています。しかし、ブラック企業根絶には程遠いのが実情です。

そうしたブラック企業は、労働者本位の健全な組織とは言えません。社内全体の人間関係がギスギスしていけば、いずれは組織全体が傾いてしまうことでしょう。

何事も円滑にいかないことを、家屋の建具の不具合になぞらえて「ガタピシ」と言うことがあります。今では木の建具が少なくなってきましたから、ガタピシという言葉は死語に近くなってきましたが、昔はよく「ふすまが、ガタピシしてきた」などと言ったものです。あなたの会社はガタピシしていませんか。

ガタガタ、ピシピシという擬音語から「ガタピシ」が生まれたと思う人は、多いでしょう。しかし、実は仏教用語なのです。漢字で書けば「我他彼此」です。「我他彼此見(けん)」という使い方もします。

これは、「我=自分」と「他=他人」、あるいは、「彼岸=悟りの世界」と「此岸=迷いの世界」との二項対立の構図を表したものです。

仏教は本来、無我(永遠不滅の実体があるものは存在しない=とらわれない)の悟りの境地を理想としていますので、「私は、もっと評価されてもいいはず」「あいつが、社長だからうまくいかないんだ」というネガティブな意識を持っている人は、悟りからは程遠い「迷い」の状態にあると言えるでしょう。

このような人は、日頃の行動が独善的(自分にとらわれた状態)になり、他者への気配りができません。ひいては、パワハラやセクハラなどの問題行動を引き起こしかねません。

多くの組織では、同僚たちと比較する形で、相対的な成果が問われます。なかには自己の評価を上げるために相手を攻撃し、陰で誹謗して相手を陥れる者も決して少なくないです。客観的に見れば、それは「自己防衛」の裏返しなのでしょう。しかし、攻撃されるほうはたまったものではありません。

他者を傷つける行為は、お釈迦さまも嘆きのタネであったようです。お釈迦さまは、このようなことを言っています。

「愚かな人は他人に害を与えることを好む。その言葉にはまごころや真面目さがない。他人に与えることをしないで、奪うことをする。そのような人は好んで他人の女を犯す 」
(法句経第26章 10)―『原始佛典 全訳『法句経』 』宮澤大三郎著

今風に言い換えれば、

「パワハラをする人は自制が利かないのが特徴で、言葉遣いも荒く、人の成果をも自分の手柄のようにし、セクハラも犯す」

ということでしょう。あなたの会社に、このような暴力的でかつ、女性関係にもだらしない上司や同僚はいませんか?

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非難されない人はいない

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