完璧ではないロボットだから、人とともに過ごしていける
ロボットがあまりにも優秀だといじめられるのに対して、ちょっとバカなところがあると、みんなが助けてくれる。ロボットを賢くつくることだけが、必ずしも問題解決につながるわけではないのです。
ご存じの方も多いと思いますが、ドラえもんというのは、完璧なロボットではありません。私の大好きな話の一つに、『ドラえもん24巻』(小学館)収録の「ションボリ、ドラえもん」というものがあります。
このお話では、セワシくんが、いつも喧嘩ばかりしているのび太とドラえもんを見るに見かねて、ドラえもんとドラミちゃんを交代させようとします。
ドラえもんと違って優秀なドラミちゃんは、のび太をどんどんサポートして大成功させていき、セワシくんはドラえもんを説得してドラミちゃんとの交代を言いわたします。
ですが、そこでのび太は、「いやだ‼ ぜったいに帰さない‼」と交代を断固、拒否するのです。
ある意味、ドラえもんも弱いロボットであり、それゆえのび太に愛され、そしてそんな弱い二人のやりとりを見て、読者も彼らを愛するようになるのかもしれません。
完璧なロボットに対しては、「ロボットに支配されてしまうのではないか」という不安を抱きやすいですが、できの悪いロボットには共感し、助けてあげたくなる。そういう心理もふまえて、人間とともに過ごすロボットを開発していく必要があります。
HAIは、ロボット単独で問題を解決するのではなく、人間とのかかわりのなかで、ロボットと人間が協力して問題を解決していく技術です。
ドラえもんのコミックは、ロボットであるドラえもんと、人間であるのび太たちが協力して問題を解決していくストーリーですから、まさにHAIの考え方そのものです。