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GAFAで「営業利益率」断トツのトップは? 決算書から読み解く企業の“真の実力”

齋藤浩史(株式会社グローバルアップライズコンサルティング代表)

2020年09月14日 公開 2022年03月04日 更新

 

「利益率が低い=悪い会社」ではない

答えは、Facebook。みなさん、正解できましたか?

ちなみに営業利益とは、売上高から売上原価を差し引いた「売上総利益」から、さらに「販売費および一般管理費(販管費)」を差し引いたものです。そして営業利益の売上高に対する「割合」が営業利益率です。

図で比較すると、フェイスブックの営業利益率は50%近くを推移しています。この数値は、アップルやグーグルの倍近くの数値です。この強さの理由はどこにあるのでしょうか?

その理由の一つとしては、フェイスブックが実名登録制を採用していることに加えて、ユーザー当人が自身の個人情報(誕生日、出身地、居住地、勤務先(現在・過去))やユーザーの友人、またその人の行動やライフスタイル、趣味や家族に至るまでの情報をフェイスブックは公然に取得できることが考えられます。

これらの個人情報を取得すれば、個々に対してより正確で質の高い広告を出すことが可能になるでしょう。広告を出したい企業を集めやすいし、広告出稿量も増加していきます。ニーズが上がったことで出稿単価を上昇させることも比較的容易です。このことから、フェイスブックは高い営業利益率を得ることができているのです。

対して、ランキング最下位はアマゾン。だからといって、「利益率が低い=悪い会社」と考えるのはあまりにも短絡的です。

実は、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)は、上場しても独自の経営手法を貫いており、この結果は、その経営指針によるものなのです。

ジェフ・ベゾスが利益率より重視している経営指標とは、「フリーキャッシュフロー(企業が自由に使えるお金)」。

「利益率よりも長期のフリーキャッシュフロー(FCF)の最適化」を常に考慮しており、決算書でもFCFのコントロールを最も大切にしているのです。

アマゾンの決算書内Item7-MD&Aにもこう記載されています。

「Our financial focus is on long-term, sustainable growth in freecash flows(我々の財務で重視するのは、長期に持続可能なフリーキャッシュフローである)」

 

潤沢なフリーキャッシュフローを研究開発に投資するアマゾン

そして、アマゾンにとって、このFCFの水準はKPI(Key Performance Indicator)となっており、10K(米国企業が毎年提出する年次報告書のことで、日本では有価証券報告書のことを指す)の冒頭からFCFの最適化や効率化の視点を説明しています。

一般的に10Kにおける決算書の掲載順番はBS(貸借対照表)やPL(損益計算書)の後がCFS(キャッシュフロー計算書)のはずが、アマゾンは最初にCFSを掲載しており、ベゾスがいかにFCFを意識した経営をおこなっているかを垣間見ることができます。

図はアマゾンの営業CF、FCFと純利益額の推移を示したグラフです。営業CFの上昇に伴って、FCFも順調に増加しています。

また、アマゾンは、稼いだお金をイノベーションや成長戦略のための投資を行っています。アマゾンの場合、利益は出ているにもかかわらず、今後のイノベーションや成長戦略のために多額の投資を毎年おこなっているのです。2019 年末時点でのアマゾンの研究開発費(R&D)は約360億ドルにも上り、これは世界一の水準になっています。

アマゾンの投資先の詳細は公表されていませんが、アレクサやAmazon GoをはじめとするAIや視覚情報処理といった未来に可能性のある事業への開発投資が挙げられます。

ここからわかることは、ベゾスは目先の利益よりも長期的な成長を狙う戦略を取っているということです。

このように、決算書には各企業のさまざまなストーリーが詰まっています。このことを意識して読むことで、数字の裏にある壮大な物語が見えてくるでしょう。

難しいと思っていた「英文決算書」を、抵抗なく楽しく読めるようになれば新しい世界が開けるでしょう。その際、GAFAなど身近で特徴のある企業を題材に選ばれることをおすすめします。みなさんのキャリアアップにぜひ役立ててください。 

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