「正月や土日に読める本」が、本当のやる気を見極めるヒント
「仕事」や「プロセス」を自分が好きかどうかは、どうしたらわかるのでしょうか?
「その本を、正月やゴールデンウィーク、土日に読めるか?」
これが、「自分が好きかどうか」を見極める、もっともかんたんな方法の1つだと考えます。
私は、食品メーカーで会社員時代を過ごしました。就職活動での志望職種が「マーケティング」だった私は、見事に希望が叶って、28歳で冷凍食品のマーケティングの部署に異動となります。
そこでの私のメインの担当製品は、「ハンバーグ」でした。さぁ、ハンバーグにだれよりもくわしくならなければ…ただ、職場で「ハンバーグ」に関する本をやおら取り出し、鳴っている電話や飛び込んでくるメールを無視してゆっくりと読み込む、なんて時間はありません。
というわけで「土日にゆっくり読もう」と考えるのですが…恥ずかしながら、私は土日に、買っておいたその「ハンバーグの本たち」を開くことがどうしてもできなかったのです。頭では「今週こそ読まなければ」と思うのですが、これは理屈ではありません。
自分に甘い私は、土日は、どうしても「自分の好きなこと」で「仕事で疲れた自分に埋め合わせ」をしたくなってしまうんですよね。
そうです。「ハンバーグの製品開発」は、正直に白状すると、残念ながら「私が好きな仕事」ではなかったのです。
そんな私は休職し、復職して数年たった時に、自分でも考えたことのなかった「人事部教育担当」になります。異動して迎えた最初の元旦、自分はあることに気づいてびっくりします。そうです。元旦の昼間、自分は無意識に、なんの気負いもなく、「人財育成に関する本」を読んでいたのです
土日に、どんな本なら喜んで読めますか?そこに、独立のヒントはあります。
「問題解決」「ファシリテーション」「データ分析」…たとえばこのような本が喜んで読めるなら、問題を解決したり、ファシリテーションをしたり、データ分析したりといったことが「好きなプロセス」なのでしょう。
食品関係の本が喜んで読めるなら「食品関係の仕事」が、建築デザインの本を貪るように読めるなら「建築関係の仕事」や「デザイン関係の仕事」が、おそらく「好きな仕事」なのです。
現在の私は、テレビを見ていても、公園をジョギングしていても、落語を見ていても、美術館に行っても、常にどこかで「研修」のことを考えています。ジョギング中に「そうか、今度こういうワークをやってみよう!」などと思いつき、ニヤニヤしたり、テレビでの芸能人同士の会話から「そうか、本番前はそんな準備をするのか!」などと気づいたりしています。
そういう意味では、年中無休で「研修講師」なのかもしれません。しかし、まったくそれが苦にならないのです。好きですから。
「経験や能力は高いが、その仕事が好きではない人」と、「まだ能力は高くないが、好きでたまらない人」がいたら、最後に勝つのは後者だと、私は確信しています。
「"お客様としての"好き」と「"仕事としての"好き」は違う
「好きな貢献」、つまり「好きな仕事」を見つけていくうえで、気をつけていただきたいことがあります。
まず大事なのが、「"お客様としての"好き」と「"仕事としての"好き」は違う、ということです。
「食べるのが好き!」「旅行が好き!」
→だから食品会社に、旅行会社に就職する!
これがいかに危険な就活かは、すでに働いている方にはおわかりですよね。"お客様として"レストランで食事をし、海外旅行に行くのが好きだからといって、それを"仕事として"好きになれるかどうかはまったく保証できません。
その生き証人の1人が、この私です。私はたまにおいしいハンバーグを食べるのは大好きでしたが、四六時中ハンバーグのことを考え、お客様の要望とコストや工程の現実の中で悩みながらハンバーグを開発するのは、残念ながら好きではなかったのです。
自分が得意で好きだと思っている「キラー・プロセス」があるなら、ぜひ実際にそれを"仕事の中で"使って、本当に得意なのか、そして好きなのかを、頭ではなく"体で"確認してください。もし旅行関係の仕事が好きだと思うなら、実際に"仕事として"やってみて、本当に好きなのか、自分のもっとも深いところに尋ねてみてください。
仕事として実際にやってみなければ、好きか、自分に合うかなどわからないのですし、実際に経験して、そのうえで「よし、この仕事は好きだ!」と確認してから独立したほうが、未経験の仕事を好きだと信じ込んで独立してしまうより何万倍も安心です。
たとえば、もし研修講師になりたいのであれば、会社員時代に、会議や発表会やディスカッションの場を徹底的に検証の場として活用してください。やってみて、会議でのプレゼンが実際には楽しいものでなかったのであれば、講師として独立するのは大変に危険です。
「自分だってやればなんでもできます!」
「自分には無限の可能性があります!」
などと、やったこともないのに、なぜか根拠のない自信にあふれている人がいます。そして、その人たちは共通して、独立の夢を語りながら永遠にそれを具体化できない傾向があります。データはないですが、いろいろな人の独立相談を受けてきた中での私の実感値です。