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生き方

常に疲弊してる人がやめられない「他人への批判」

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2022年03月25日 公開 2024年12月16日 更新

レジリエンス=心の回復力がある人は、自分のエネルギーを効果的に使っていると加藤諦三氏は言う。逆にレジリエンスのない人は、間違ったエネルギーの使い方をし、いつの間にか自分自身を疲弊させてしまう。心のエネルギーを正しく使うとは、いったいどういうことなのか。

※本稿は、加藤諦三著『心の免疫力「先の見えない不安」に立ち向かう』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

「批判すること」にエネルギーを使うのをやめる

レジリエンスのある人は、効果的に自分のエネルギーを使う。持っているエネルギーの量が違うのではなく、その使い方が違う。

私が考えるに、彼らは「自我価値の防衛」にエネルギーを使わない。つまり人を批判したり、嫌がらせをしたり、操作することにエネルギーを使わない。

人を批判しても何の意味もない。現実は悪化するだけで、問題は何も解決はしない。無益であるのになぜ人の批判を繰り返すのか。それが神経症というものである。

つまりレジリエンスとは、神経症の反対なのである。

レジリエンスのある人は、ポテンシャルが高い。

子どもの成長に対する生育環境の影響についての特に珍しい研究がある。カリフォルニア大学デービス校の心理学者で「レジリエンスの母」といわれるエミー・ワーナーは、32年間にわたり、698人の「ハイリスクの子ども」のグループを研究した。

ハワイのレジリエンスのある子どもには、共通性があった。

それは自分が持っているものを使うということ。

ポテンシャルが低い人が、神経症者。

ポテンシャルが高い人が、レジリエンスのある人。

とにかく自分の能力を生産的に使う。  

人は、どれだけの能力を持っているかが問題なのではない。持っている能力を使うか、使わないかが問題なのである。

ストレスに弱い人は、能力を間違って使っている人である。

神経症者は人を操作するためにエネルギーを使っている。レジリエンスのある人は、神経症になるような人と正反対の能力の使い方をしている。

 

うつ病者とは自分を偽って生きるのに疲れた人

神経症的傾向の強い人は、嫌いなことばかりを一生懸命にやってきた。そうして生きてきて、心身ともに疲れ果てている。

楽しいことは何もなかった。

何か楽しいことがあれば、もっとエネルギーが湧いてくる。「この困難を乗り越えよう」というエネルギーが湧いてくる。

うつ病者も、楽しいということがなかった。だから、いったん倒れてしまえばもう立ち上がれない。

もう自分を偽って生きていけなくなった。うつ病は、「私はできません」という反応である。

人生で起きるよくないことに、前向きな解釈をするのはエネルギーがいる。神経症やうつ病の人はもう「疲れている」。

心身ともに消耗している人に「もっと楽観主義になれ、前向きになれ」と言っても無理な話である。

レジリエンスのない人が、ある人とトラブルになる。

そんな時に、次から「あのタイプとはこうしよう」という反省をしない。そうするエネルギーは、外との戦いにではなく、我慢することに使われてしまった。

 

自分自身を知るために生きてゆく

レジリエンスのある人は、成長そのものを目的としている。つまり、マズローのいう成長動機で動いている。

マズローはいう。

「自己実現している人は、自分の潜在的可能性や適性や創造性を活かし、自分自身を知ろうという必要性によって生きている。

その結果ますます人格が統合され、ますます自分が真に何者であるかに気がつく。ますます自分が本当に望んでいるものは何かに気がつく。

あるいはますます『自分の使命、職業、運命を自覚するようになろうとする欲求』を持つようになる」

自分に気づくためには、自己実現することを積み重ねて生きることである。

成長動機で動いている人は「他人に頼ることが少ないので、両価的になることはまれで、不安や敵意も、賞賛や愛情を求めることも、少ないのである」。

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なぜ人は自由から逃げたがるのか

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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