そこにあった本当の親子以上の愛
高校に進学すると、いじめはなくなりました。母を少しでも楽にしてあげたい。そして、どこに生まれようが、どういう境遇だろうが、ちゃんと生きて立派になれることを証明したい。そんな思いで、高校生のときからテレビやラジオのお仕事を始めました。
「あなたは原石なのよ。磨けばきれいな宝石になるの。自分をダメな人間と思わないで。私があなたを磨いてあげるから」
仕事がうまくいかず落ち込んでいると、母はいつもそう言って励ましてくれました。
あるとき母に、「私は、お母さんに何か恩返しできたかな」と尋ねたことがあります。すると、母はほほえんで、こう言いました。
「恩返しより、困っている人がいたら助けてあげて。ただ、一つだけお願いがあるの。もし来世があるなら、次は私のお腹から生まれてきて。赤ちゃんのあなたを見たいの」
母と私の血はつながっていませんが、本当の親子以上の愛があると思っています。母の存在が、母の言葉が、いつも私の背中を押してくれます。
お母さん、ありがとう。
【サヘル・ローズ(俳優)】1985年、イラン生まれ。8歳で来日。主演映画「冷たい床」でミラノ国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞。国際人権NGO「すべての子どもに家庭を」の親善大使を務める。各国で子どもたちへの支援や青空教室なども行なっている。