コロナ禍で一気に浸透した在宅勤務。便利な一方で、長時間労働が常態化している人も存在します。この状態を変えるには、在宅勤務時の残業の規則を再度確認し、企業と社員の双方がルールに則って動くことが重要です。社会保険労務士の鈴木氏に解説いただきます。
それ残業といえますか?
「みんな寝て静かになったし、今からプレゼン資料作っちゃおう。」
「明日朝イチ会議だからなー。。。できるとこまでやっちゃおう。」
これは在宅勤務慣れした日本全国の会社員が必ず通る道だと思います。ICT環境さえ整えば自宅で制限なく勤務できる環境が定着しました。
全員出社がデフォルトの4.5年前を思い返してみてください。残業については、上司が進捗状況を間近で見て「今日残って」という声掛けのもとに仕事をしていました。また、そういった声掛けがなくとも、業務量や納期を考えると残業せざるを得ないという他者から見た明らかさがあり、暗黙の「残業確定だな」という指示と空気感のもとで残っていました。
在宅勤務者の労働時間にこのような「他者から見た明らかさ」はありません。その時間、本当に働いていいのでしょうか。
おさらいしよう!「残業」とは
「残業」という用語は実は法律用語ではなく概念的なもので、会社と決めた労働時間を超えて働いた分という意味合いです。
従業員は、会社が定めた就業規則や労働契約書で定められた労働時間働く義務があり、これを「所定労働時間」といいます。この所定労働時間を超えて労働した時間がいわゆる「残業」となります。
そして残業は、法定内残業と法定外残業の二つに分かれます。
労働基準法では基本的に「働かせていい時間」が1週40時間、1日8時間と決まっており、これを「法定労働時間」といいます。この法定労働時間を超えるかどうかで分けていきます。
法定内残業とは法定労働時間を超えない残業の部分で、法定外残業とは法定労働時間を超えた残業の部分です。例えば、1日の所定労働時間が6時間の会社で9時間働いた場合、法定労働時間の8時間を超えない2時間が法定内残業になり、8時間を超えた1時間が法定外残業になります。法定外残業については「法律の枠を超えた残業」なのでいわゆる残業代(割増賃金)の支払い対象になります。