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「なんとなく時間外も作業」は規則違反に? 注意すべき在宅勤務の残業ルール

鈴木麻耶(社会保険労務士)

2022年06月07日 公開 2022年06月10日 更新

 

勝手に残業させない

在宅勤務時の残業について、見えないからこそ「その残業は必要なのか」という業務上の必要性の精査は必須です。例えば残業を事前申告制にして、その残業は納期や業務状況から見て本当に必要なのか、個人的なこだわりで進めていないかの精査をします。申告制を入れる場合、申請方法等ルールの構築が面倒なのは事実です。

しかしながら、事後に「やらないと終わらないため残業した」等の判別困難な状況説明をされないためも、会社側として「今日残業の必要性のある業務か、それはどれくらいの時間で終了できるのか」を明確にして、必要であれば残業命令するという形で残業の客観視をしておくことが重要です。

また、深夜にかかる残業や休日勤務をアクセス制限をかけるなどして禁止している会社も多くあります。放っておくと自分の体力と仕事のチキンレースになってしまう個人の性格や、実際にできてしまう環境があるため、制度として最初に歯止めをかけているのです。

 

ICTを利用し勤怠管理

業務の部分でICT環境が整っているのであれば、従業員自身の勤怠情報もその環境に乗せられるはずです。クラウドの勤怠管理システム等、ネットに接続するだけでどこからでも始業・終業時刻に打刻することができます。ついつい本業についてのみICTで見える化の目が向けられますが、何よりその本業に労働時間を提供している従業員の勤怠を、実際のPC等のログと矛盾なく「見える化」をしていく必要があります。

 

コミュニケーションツールの必要性

実際在宅勤務をしてみて、圧倒的に口数が少なくなったと全員が感じています。出社時にちょっと休憩室に誘われることや、同僚のどうでもいい世間話には、実は「一人で仕事をしていない」というチームワークの再認識と、メンタルを整えるセイフティネットの作用がありました。

このセイフティネットを何に置き換えるかなのです。Web会議ツール等、定期的にコミュニケーションをとれる仕組みを導入することも有効です。孤独感は、メンタル不調や勤怠の乱れに直結します。また、相談や進捗確認のタイミングを逃して、不安から残業した結果体調を崩すという悪循環のケースも多くあります。

会話ができる、顔が見える環境設定は、他者の温度を感じる強力な安心材料です。こういったツールの利用によって、チーム内での情報共有ができるとともに、上司としては危険信号を発している従業員がいないかが確認でき、ケアのタイミングを逃さない材料にもなるのです。

ただ、これだけ在宅勤務が定着しても、実に5割以上の方が在宅勤務は通常勤務よりも長時間労働になるという調査結果があります。それはどんなに仕組みを構築しても、最終的には自分の状態管理は自分がしなければいけないという結果に他なりません。自分の仕事ルーティンを作る、リセットの方法を決めるなどセルフマネジメント力も高めていく必要があるでしょう。

かくいう私もフル在宅の身です。幸い自宅が寺なので、煮詰まってきたら一度リセットの為長い廊下の雑巾がけをしています。1往復で息切れするので、この頃体力面が心配です。

 

【プロフィール】 鈴木麻耶 (すずき・まや)

社会保険労務士、採用定着士。大槻経営労務管理事務所所属。 実家の寺院を継ぐことになり、子の小学校入学を機に夫とともにUターン。現在フルの在宅勤務。事業規模、業種ともさまざまなクライアントを担当し、「離れていてもできる!伝わる!やりきれる!」を実践中。

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