「限定質問」と「拡大質問」の違い
対話をする上では外せないセオリーであることを紹介しました。実はまだ、重要なことをお伝えしていませんでした。
「拡大質問」を使えないと、「ココロ(考えや想い)」を聞き出すことはできないということです。
まず、質問には「限定質問」と「拡大質問」があることを押さえておきましょう。前者を「クローズドクエスチョン」、後者を「オープンクエスチョン」とも言います。「ココロ(考えや想い)」をなかなか聞き出せない人は、「拡大質問」を使っていないことが原因です。
では、この2つの質問についての違いを確認しておきましょう。
【限定質問】
・単語で手短に回答できる質問(一問一答式)
■Yes/Noで回答できる。
■答えが1つしかない。もしくは単語で答えられる。
(例)「困ったことはない?」「いつ、やったの?」「誰がやったの?」など
いわゆる一問一答式の質問で、聞きたいことを聞く際に使う質問です。意識せずとも自然に使えます。
【拡大質問】
・考えや背景を自由に「文章」で語ってもらう質問
■Yes/Noでも、単語でもなく、「文章」で回答。
■「想い」や「考え」、または「状況」を自分の言葉で答える。
(例)3つの「D」を用いる。
「D:どうして?」...「どうして、そう思うの?」
「D:どんな?」...「どんなことになっているの?」
「D:どのように?」...「どのようになればいい?」
この拡大質問を使った会話をしている人は3割程度。これができる人は、相手の本心を聞き出すことができる。
これが、「限定質問」と「拡大質問」です。実際、この拡大質問を使えるようになると、会話の比率がぐっと変わります。相手が7~8割、話をしてくれるようになるのです。
部下の本心を引き出す「3つのD」
拡大質問の効能について、さらに話を進めましょう。拡大質問を使えば、次の2つの効果が得られます。
(1)本心を聞き出すことができる
(2)考えてもらう効果がある
特に、後者の「考えてもらう効果」は大きく、部下の主体性を高めることができるようになります。たとえば、こんな質問です。
「どんなことがあれば、乗り越えられそう?」「どうするのがいいのだろうね?」
このように考える機会を与えることで、部下は自分なりに考えるようになります。「こうすべき」「こうしたい」、そんな主体性を発揮する機会を拡大質問によって作っていくわけです。
主体性が低いのは部下の問題ではなく、上司の問いかけの問題であることのほうが多いのが現実です。
ここでは、拡大質問が簡単にできるようになる方法を紹介しますね。私が編み出したとっておきの方法です。先ほど紹介した「3つのD(どうして、どんな、どのように)」をクッション言葉とともに"ぶち込む"だけです。
"ぶち込む"と言ったのは、後先や文脈を考えずとも、適当に「3つのD」を使えばほとんどのケースで会話が成立するので、言葉に詰まった際はぶち込むだけでもOKというわけです。こんな感じです。
部下「そうなんですよ。店は大行列です。どこも入れませんでした」
上司「(まずい。言うべきことが見つからない......、適当に"ぶち込んで"みよう) 差し支えなければ聞いてもいい?どんな感じだったの?」
ここでは、「1つ聞いてもいい?どうしてなの?」でもOKです。相手が流れを解釈し、いろいろと話してくれます。ぜひ、トライしてみてください。