あの部下、あの同僚にどう対応する?
業務を進めるうえで問題が生じたら、上司や同僚は、まず通常の方法で指導してみます。しかし、それでは改善されず、同じことが繰り返されるようであれば、指導方法を見直す必要があります。
つい「自分と同じようにやるべき、できるはずだ」と考えがちですが、人にはそれぞれ、いろいろな感じ方や認知特性があり、その人に合わないやり方ではうまくいきません。
本人の認知特性に合うやり方で仕事を進めてもらいましょう。それが、その人が持っている力を最も発揮させる近道です。
●アドバイス
本人に「なぜ?」と問いつめたり、大きな声を出したりすることは避けましょう。本人は自分の状況や認知特性を説明できないことも多く、頭ごなしに叱責されたり、問い詰められたりするとパニック状態におちいって、持っている力さえも発揮できなくなってしまいます。
働くときの具体的コツ
【自閉症スペクトラム障害(ASD)特性がある場合】
・構造化する(業務を明確に組み立てる)
・見える化する(文字、図、作業手順、やってみせる、など)
・具体的に指示する(やるべきこと、やらなくていいことを明確に)
・優先順位を伝える(今やること、次にやることを明確に)
・作業環境を整える(パーティションなどを利用して、落ち着ける場所を用意)
【注意欠陥多動性障害(ADHD)特性がある場合】
・作業環境を整える(パーティションなどを利用して、落ち着ける場所を用意)
・ 優先順位を伝える(今やること、次にやることを明確に)
・ チェック体制を整える(重要書類などの確認の流れを整備)
・ 整理を手伝う(机やパソコン内の要不要を判断し整理する)
・ 傾聴する(頭の中をなぞるように話すと整理できる)
【両方に共通】
上司と1対1の短時間の打ち合わせを定期的に実施(問題が発生したときではなく、週1回〇曜日の〇時から、などと決め、進捗、優先順位、要不要の判断、困りごとなどを確認)
●アドバイス
できるだけ短く業務を区切り、口頭、文字情報、絵や図など複数の方法を組み合わせて情報を伝えて、本人が作業をイメージしやすくなるよう調整してみてください。
パートナー、子どもとどう接する?
【パートナー:相手の言動に他意はない】
統計的に、自閉症スペクトラム障害(ASD)は、男性のほうが女性の数倍多いといわれています。もし特性があるパートナーを持ったとしたら、情緒的な交流がしにくいことに傷つくかもしれません。
「こんなことをする(いう)のは、私のことを大切に思っていないからだ」と考えてしまうのです。
しかし、パートナーにそういった意図はなく、これも認知特性の違いです。「気がついてくれない」「気持ちをわかってくれない」のは、冷たいからでも、あなたを愛していないからでもありません。
「察してほしい」と考えず、明確に、具体的に、してほしいことを伝えることで、うまくいくことが増えると思います。
【子ども:大切なのは自己肯定感】
みんなと同じような行動をさせたい、問題行動をなくしたい、と考えてしまうものですが、ここでも認知特性にそって対応することが大切です。
その子にとってわかりやすい情報処理の方法を「学習スタイル」といいます。癇癪を起こすような場合は、情報の与え方や環境が、その子の学習スタイルに合っていない可能性があります。
その子の学習スタイルで物事がわかるようになり、それをほめてもらうことで、自己肯定感は必ず育ちます。時に、養育者は心が疲れてしまうこともあるかもしれませんが、ぜひがんばっている自分をほめてください。
そして、「ほかの子と違ってOK!」と考えて、宝探しに出かけるような気持ちで子どもが持っている力を見つけてほしいと思います。