だるさ、疲れ、不安、朝起きるのが憂鬱、気がついたら涙が出ている...など、50代後半からあらわれる心身の不調。この場合、じつは「質的な栄養失調状態である」ケースが多いことは、あまり知られていない。
医師の秋田巌氏はうつ症状がみられる患者に対して、向精神薬の服用やカウンセリングよりも速いスピードで症状を改善に向かわせる「藤川メソッドによる分子栄養療法」を実践する。そんな秋田氏に、人生100年時代はどう生き抜くべきか教えてもらった。
※本稿は、秋田巌著『60歳うつ』(PHP新書)より、一部抜粋・編集したものです。
60歳うつはジャンプする前のしゃがみ込み状態
人生100年時代の60歳の過渡期について、大きな課題があると書きました。もちろん、ひと昔前、ふた昔前も「60歳うつ」になる人はいました。いわゆる「荷下ろしうつ」と呼ばれる症状です。
定年を迎え、家のローンを払い終わり、子どもは独立して、人生の大きな仕事を終えてからのうつ病。重い荷物を下ろしてから、無気力になってしまう。
「私は何のために生きてきたのだろう」という気持ちになるのは、現代の「60歳うつ」も同じですが、昔は極端にいえば、その先の人生は長くない「死を待つうつ病」だったわけです。
たとえ虚無感に襲われたとしても、静かな時間を確保して、穏やかに気持ちを切り替えて店じまいしていくという、それこそ現代の「終活期」に近い意味合いがありました。
しかし、人生100年時代の60歳は、これからむしろ真価が問われる年齢です。前向きに捉えれば、自分の人生を思いきり自由に歩むことができる年齢なのです。
そこで「60歳うつ」に陥ってしまったのなら、それは次の段階にジャンプする前の、しゃがみ込みの状態。そのように捉えることもできます。うつ症状が出ている間は、しゃがみ込んでいる状態と思ってよいのです。
しゃがみ込まないと、バネを利かせて高くジャンプすることはできませんから。でも、あまり長い時間しゃがんでいると、足がしびれてジャンプするどころか、動けなくなってしまいます。
今の60歳なら70歳までは悩んでいい
ありがたいことに、今の60歳は昔の60歳よりも体力も気力も残っています。60歳までに準備ができなかった人も、70歳までは悩んだり準備したりできる期間だと捉えることができるのではないでしょうか。
本当に元気で100歳を目指すのであれば、70歳でもあと30年あるわけです。そういう意味では、60代から70代半ばまでなら、新しいことを勉強するという目標を持つのによい時期だといえます。
例えば環境を整えて、「学生」に戻って勉強し直してみる。そうした期間を持つことで、80歳からの生き方を充実させることができるでしょう。
第二の人生で、新しいことに挑戦!といっても、社会環境が変わり、価値観も違ってきている今の時代において、どうすればいいのか、自分には何ができるのか、と思う方も多いでしょう。
そういう時は、温故知新。昔の叡智を学んでみることをおすすめします。論語や実語教(千年間、日本の子どもたちが学んだ教科書)など、人としてどうあるべきかを学ぶ。
そして、学校では教わらない歴史を知り、自分が何者であるか、日本人がどういう民族であるのかを知ることによって、自分に自信が持てるようになり、何をすべきかがわかってくるようになるのではないでしょうか。