1. PHPオンライン
  2. 生き方
  3. ハーバード大教授が明かす「不安な感情をコントロールする」5つのステップ

生き方

ハーバード大教授が明かす「不安な感情をコントロールする」5つのステップ

ロバート・ウォールディンガー(ハーバード大学医学大学院教授)、マーク・シュルツ(ハーバード成人発達研究副責任者)

2023年07月19日 公開 2024年12月16日 更新

 

第1ステップ...観察(心の一時停止ボタンを押す)

精神医学の世界には、「ただ座って患者の話を聞け」という古い格言がある。

第一印象というものは強烈なものだ。だが、最初の印象が状況を完璧に把握していることはまずない。人はなじみのあるものに目を引かれる傾向がある。だから視野が狭くなり、重要な情報を見落としやすい。

最初にどれほど丹念に観察していたとしても、必ず見逃しはある。ストレス要因に遭遇し、感情がわき上がってきたら、少しでいいから意志の力で好奇心を即座に働かせよう。考えをめぐらせながら観察すれば、最初の印象が影を潜め、視野が広がり、有害な反射的反応を防ぐ「一時停止ボタン」を押せるようになる。

観察とは、状況全体、つまり環境、相手、自分自身を見つめるということだ。この状況はいつもと同じか、違うのか? いつもなら次に何が起こるのか? 現状のなかで何か大事なことを見逃していないか? と考えてみよう。

観察のステップでは好奇心を発揮する。自分の心にわいてくる感情に対しても、好奇心を発揮しよう。

自分はどのように感じているのか、どうしてその感情がわいてくるのか、と考えていく。心拍が速くなる、唇をすぼめる、歯ぎしりする(怒りのサイン)など、身体的変化に気づく場合もある。

恥ずかしさのせいで攻撃的になったり、本心を隠そうとしたりしていることに気づくかもしれない。自分の反応や衝動的な行動をもっと自覚できれば、感情に飲み込まれるのではなく、むしろその波に乗ることができる。

 

第2ステップ...解釈(大切なものを見極める)

問題が起こるのは、たいていこのステップだ。

意識しようがしまいが、人は常に「解釈」を行っている。周囲を見回し、自分の身に起きていることを眺め、なぜそれが起きているのか、それが自分にとって何を意味するのかを考える。

現実を吟味するわけだが、現実はいつもきれいに割り切れるものではない。人は自分のやり方で状況を知覚し、解釈する。だから、「現実」は人によって異なる。全員が状況を同じようにとらえていると考えるのは、大きな落とし穴だ。めったにあることではない。

状況をできるだけはっきりと理解するには、まず自分にとって重要なものを把握する必要がある。たいていの場合、感情が生じるのは、自分にとって重要な何かが起こっているサインだ。そうでなければ、感情がわいてくることもない。

その感情は、人生の重要目標、不安の種、大切な人間関係などに関わっているかもしれない。この感情が生じているのはなぜだろう? と自問するのは、自分にとって大事なものを見つけるよい方法だ。大事なものを明確に把握できれば、状況をもっとうまく解釈できるようになる。

解釈のステップにおいて重要なのは、自動的に生じる第一印象を超えて、理解を広げ、深めることだ。さまざまな視点を検討すること。それがたとえ不愉快な視点であっても、だ。何か見落としてはいないだろうか? と自問することが大切だ。

繰り返しになるが、ここでも自分の感情に注意を向けることが役に立つ。恐怖や怒りで心拍が上がったり、心が落ち込み胃が痛くなったりしたときは、まっさらな好奇心で状況をとらえ直しし、ストレス要因だけでなく自分の感情そのものを深く考えるべきシグナルだと考えよう。

今、こう感じているのはなぜ? この感情はどこから生じているのだろう? 本当に重要なのは何? この状況の何が自分にとって難しいのか? と冷静に考えてみよう。

 

第3ステップ...選択(さまざまな可能性を探る)

状況をしっかり観察し、解釈し、(さらに解釈を重ねて)視野を広げたら、次に考えるべき問いは、何をすべきか、だ。

ストレスを受けると、人は選択肢を検討し終える前に、あるいはそもそも選択肢があるかもしれないと考える前に、反応してしまう。

だが、反応のスピードを落とすと、複数の選択肢を検討し、各選択肢がもたらす可能性を考えられるようになる。

自分にとって重要なことと、自分に使える手段を考えると、この状況で何ができるだろう? 目指すべき結果は何だろう? あの方法ではなくこの方法を選んだら、うまくいく可能性はどうなるだろう?

選択のステップとは、「目標」と「使える手段」を明確にするステップだ。自分は何を達成したいのか? 目標達成のためのベストな方法は? この状況において役立つ強み(例えば、険悪なムードを和らげるユーモアや人間力)、あるいはダメージをもたらすかもしれない弱み(例えば、批判されると心が折れやすい)はあるだろうか?

どの対応策を選ぶかは、その人次第だ。文化的な規範や個人の価値観も大きく影響する。正面から意見を述べるのは無作法だととらえる文化もあれば、成熟した真摯な態度だと見なす文化もある。判断は、経験に基づく直感を頼ることが多い。その瞬間に、この状況への最善策だと思ったものを選択する。

次のページ
第4ステップ...実行(トライするなら慎重に)

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×