堀江翔太選手は、パナソニックやサンウルブズで、キャプテンとして手腕を振るい、ラグビー日本代表ではベスト8に貢献するなど、日本ラグビーを一つにまとめあげたベテランだ。
所属していたオーストラリアのラグビーチーム「レベルズ」での学びや、これまでに出場した数々の試合で得た知見を基に、「若手、組織」を動かすリーダーに必須の振舞いについて語る。
※本稿は、堀江翔太著『ベテランの心得 まずは自分が動かなアカンよね | 堀江 翔太』(PHP研究所)を一部抜粋・編集したものです。
伝え方にも技術は必要ですよね
キャプテンというのは、チームの状況を俯瞰して見ていく必要があります。人間関係とか、ゲームプランだとか、あれこれ考えを巡らせる立場になって、たしかに仕事は増えます。
でも、恵まれているのは、チーム内でいろいろな情報回路を持てるようになることです。監督、コーチと直接話す機会も多くなるし、他のメンバーともしょっちゅう話せる。それだけではなく、「第三の回路」というか、メディアの人からの情報も入ってきますし、メディアを通してチームにメッセージを発信することもするようになったりします。
僕は公の席で相手を挑発するような発言をするのは好きではないので、メディアの人に話す時は、チームの身内に向けてメッセージを発信することが多かったです。「こうしたほうがええんちゃうかな」ということがあれば、メディアを通して身内に伝わるように話していたんです。選手たちは、結構記事を読むものなので。
僕はいろいろな伝え方があっていいと思ってます。メディアを通したほうが効果的という場合はそういう選択をする。一方で、試合が終わってすぐにロッカールームで伝えたほうがいい場合は、そちらを選びます。
パナソニックでキャプテンを務めていた時は、勝った時は喜びつつ、よかったところ、それに反省すべきところを話してました。基本的には、次の試合に向かってポジティブなエネルギーを出すことを意識してました。
負けた時も一緒です。反省点、よかったところ、どちらも次の試合に勝つために必要な要素です。完璧な試合というものはなくて、勝っても反省すべき点はあるし、負けてもいいところはある。そこから前向きな要素を取り出して、みんなと共有したい。それはレベルズでの経験から導き出された結論です。
どうも、日本の人ってゼロか100かで考えがちだと思うんです。勝ったからOKだとか、負けたら全否定だとか。それ、違うと思うんです。負けてるから全部が悪いというイメージを持ってしまうと、ドツボにハマってしまうんじゃないかと思うんですよ。
だから、僕の場合は勝ってる時はあえて悪いところを探して、負けた時こそ、いいところを探す。そういうスタンスです。
試合が終わってから必要なことは、どういうパフォーマンスをしていたのか、いい分析をして、次の場所に進むということじゃないですか? 試合を肥やしにして、次にもいい試合をする。要は、勝っても負けても次の試合に向けて向上していくことがいちばん大切だと思うんです。
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リーダーそれぞれに、ふさわしい言葉のトーンってあると思うんです