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着物姿が美しく見えるのは、日本人の体型に理由があった

池田訓之(株式会社和想 代表取締役社長)

2023年10月23日 公開

 

着物を着ることで内面まで美しくなる

着物を着ている人は所作だけでなく、内面も落ち着いて上品に見えないでしょうか?

現代人は仕事や家事などで時間に追われ、表情も険しく、せかせかしているとよく言われますが、着物を着た人は表情も柔らかく、気持ちに余裕があり、ゆったりした印象があります。それは着物が外見だけでなく内面にもよい影響を与えているからです。

私は仕事柄ほぼ毎日着物を着ていますが、着物を着るたびに気持ちがしゃきっとします。京言葉で、上品かつ気品があり、明るくて華やかなさまを「はんなり」と言いますが、着物は着た人をまさに「はんなり」とした印象にさせてくれるのです。

着物は肌着、襦袢、着物に帯と、一つ一つをその日のコンデイションに合わせて身に着け、紐で結んで着付けをしていきますが、この結ぶという行為には、陰と陽の世界をつないでその中の体を守るという意味があります。

つまり着物を着るということは、自分の体の声を聞き、衣服とともに心を整えていくということでもあります。

着物や帯の多くには桜、梅、椿など草花をはじめとする美しい柄が描かれていますが、柄によって着るのにふさわしい季節が決まっています。

そのため、着物を着ることで自然と季節に意識が向くようになります。花びらだけを現した柄などは、草花というよりも一つの抽象的なデザインなので季節を選びません。

一方で幹から枝そして花と写実的に描かれている柄は、ある季節に咲き誇る草花を再現しているので時期を選びます。人は後ろを振り返るよりも、少し前を向いている方が心地よさを感じるので、季節感のある柄は、少し季節を先取りで着るのが良いとされています。

例えば、椿の花は花びらがはらはらと散ることなく、花の形を留めたままポトリと落ちます。それで「落ちても身をくずさず」という女性の生き様を現しています。

また、厳冬の中、濃い緑色の枝、そして色の深い赤や白の花を供え、生命力に満ち満ちているので、悪を寄せつけない神聖な花という意味もあります。そんな椿を写実的に描かれている柄の着物は、極寒に向かう前の11月から年の暮れごろに着るのがよいと言われています。

このように、着物を着ることで普段の生活では忘れてしまいがちな自然の変化に気付くことができ、心にゆとりが生まれ、非常に穏やかな気持ちになることができるのです。

 

着物で自分のための時間を過ごす

着物

着物は日本人の体型を美しく見せ、立ち居振る舞いや一つ一つの所作を上品に見せてくれます。また着物に向き合うことで気持ちが穏やかになり、はんなりとした印象を与えてくれます。

本人は特に頑張っていないのに、着るだけでその人を美しく見せてくれる着物は、本当に魔法のような衣服だと思います。

だからこそ「日本人の大多数が普段は着物を着ない」という今の状況は、あまりに寂しく感じてしまいます。日本人のための民族衣装なのに、着物を着ないなんてもったいないと思いませんか?

たまにはせわしい日常を忘れて、家族や友人を誘って、着物ではんなりとゆっくりお出かけしてみるのもよいのではないでしょうか。

【池田訓之(いけだ・のりゆき)】
株式会社和想 代表取締役社長
1962年京都に生まれる。1985年同志社大学法学部卒業。インド独立の父である弁護士マハトマ・ガンジーに憧れ、大学卒業後、弁護士を目指して10年間司法試験にチャレンジするも夢かなわず。33歳の時、家業の呉服店を継いだ友人から声をかけられたのをきっかけに、全く縁のなかった着物の道へ。着物と向き合うなかで、着物業界のガンジーになることを決意する。10年間勤務した後、2005年鳥取市にて独立、株式会社和想(屋号 和想館 https://store.wasoukan.com/)を設立。現在は鳥取・島根にて5店舗の和想館&Cafe186を展開。メディア出演や講演会を通じて、日本の「和の心」の伝道をライフワークとして続けている。著書に「君よ知るや着物の国」(幻冬舎)。https://www.amazon.co.jp/dp/4344941314

 

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