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「業務上の権限を渡さない上司」が部下を苦しめている

ローレン・B・ベルカー, ジム・マコーミック, ゲイリー・S・トプチック

2024年03月22日 公開

「業務上の権限を渡さない上司」が部下を苦しめている

プレーヤーからマネジャーになると役割も業務内容も大きく変わります。マネジャーの仕事とはいったいなんなのでしょうか? はじめてマネジャーになった人のよくある間違いとともに紹介していきます。

※本稿は『マネジャーの全仕事』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。

 

マネジャーの仕事とは結局、何なのだろうか?

いろいろな答え方ができるが、「俳優が役を捉えるように、マネジメントを捉えなさい」というアドバイスが最も有益だろう。マネジャーは幅広い役割を演じ分けねばならない。

コーチ、業務基準の設定者、業績評価者、教師、動機づけのプロ、ビジョナリーなリーダー、その他さまざまな役割から、状況と目的に応じて適切なものを選ぶのだ。

新人マネジャーへの助言として「ありのままの自分でいればいい」とはよく言われるが、これは間違いだ。役割を使い分けられない限り、優秀なマネジャーになるのは難しい。

新人マネジャーの多くは、「自分の役割は指揮をすることだ」と勘違いしがちだ。ああしろ、こうしろと部下に指示してやらせるのが自分の仕事だと思い込んでしまうのである。

確かにそれもマネジャー業務の一部ではあり、必要な場面もある。けれど、マネジャーとチーム、双方の長期的な成功を考えれば、部下が自発的に動けるようサポートするほうが重要なのだ。

すなわち、あなたへの信頼と仕事への責任感を部下に持たせた上で、必要な権限を与えて、部下が仕事をしやすい環境を作ること、それがあなたの仕事なのだ。

 

マネジャーの主な仕事

マネジャーの主な仕事は、業種や組織形態を問わず一定である。プロの経営者なら、この考えに同意してくれるはずだ。マネジャーの主要な業務は、採用、コミュニケーション、計画、組織の編成、育成、モニタリング、評価、解雇の8つである。

これらの業務に慣れてうまくやれるようになれば、マネジャーの仕事は楽になる。8つの業務の詳細は追って説明するが、ひとまずここで定義をしておこう。

1. 採用:該当の仕事ができる能力やポテンシャル、やる気と熱意のある人を獲得すること。

2. コミュニケーション:経営理念や目的、組織の目標を部下に伝え、部署や事業部、業界の動きについての情報共有を行うこと。

3. 計画:組織目標の達成に貢献すべく、自部署の目標達成に向けて施策を決定すること。

4. 組織の編成:それぞれの業務やプロジェクトを実行するためのリソースを確保し、どの部下に何をさせるか決めること。

5. 育成:部下一人ひとりの現状の能力を把握し、求められるレベルとの差を明確化して、それを埋めるべく学習の機会を提供すること。

6. モニタリング:業務の進捗を把握し、部下それぞれがプロジェクトやタスクをうまくやれているか確認、対処すること。

7. 評価:部下一人ひとりの業績を評価し、本人の役に立つフィードバックを行い、個人として、チームとして要求される水準との比較を行うこと。

8. 解雇:組織に貢献ができない人、あるいは個人として必要な要件を満たさない人を、部署から取り除くこと。

 

「部下思い」な上司になろう

マネジャーとして結果を出すためには、部下が何を求めているかを見落とさないことが大切だ。「部下を気にするのは弱い人間のやることだ」と誤解している人もいるが、心から部下に配慮できるのは人としての強さである。

部下が幸せに働けるよう配慮するのは、不当な要求に屈することとはまったく違う。これを理解できていない新人マネジャーは多い。気遣いと気弱さの区別がつかないのは残念なことだ。

本当の意味で「部下思い」なマネジャーになろう。うわべだけではダメだ。真に「部下思い」であるとは、部下の業務負荷が適切かを気にかけ、仕事ぶりを正しく把握し、うまくやれた場合には必ず褒めて報い、適切なフィードバックをすることだ。

「いい人になるぞ」と独りよがりで張り切るのではなく、部下に対する責任を真剣に負うことが重要だ。事実、マネジャーとチームは相互に責任を負っているのだ。組織目標と部下の個人目標が食い違わないよう注意しておきたい。部下には、「組織全体の目標に貢献せずして個人目標は達成できない」と理解させる必要がある。

部下に組織方針を示すことも重要だ。組織全体の戦略や目標を伝える通訳としての機能も、マネジャーの大事な仕事である。部署のメンバーには、情報をきちんと共有しなくてはならない。情報を隠したり、出し惜しみしたりすると、のちのち自分が苦しむことになる。

情報の不足部分を埋めるために、部下は他部署から情報を取ってくる。こうした又聞きの二次情報が間違っているリスクもある。そのうえ、情報共有に後ろ向きな上司の姿勢を見た部下は、「自分たちを信頼してくれていない」と感じるものだ。

 

新米マネジャーによくある間違い

新米のマネジャーがいきなり大人数の部署を任されることは稀だ。たいていは、部下が数名しかいないため、部下の業務に過剰に関与したくなるものだが、これは危険である。

昇進を重ねるうちに、管理対象の部下の数は増える。部下が35人もいる状況では、全員の仕事を詳細まで完璧に把握するのは不可能だ。だから今の時点から、業務の各論を気にするより、プロジェクトの全体像を掴む習慣をつけておいたほうがいい。

初めてマネジャーになった人にありがちなのは、自分の昇進で他の人に引き継いだ業務が他より気になってしまうことだ。

自分の行動や関わったことを重要視しがちなのは人間の性ではあるが、マネジャーになった以上、偏った考え方はやめる必要がある。以前の業務を、ただ慣れていて気楽にできるからといって仕事上の趣味にしてしまう誘惑に負けないように。

はじめての管理業務は、プロジェクト・リーダーなどのリーダー職であることが多い。プレーヤーとして実務をやりつつ、他の人の業務管理を行うリーダーの役割も同時進行しなくてはならない。この場合には、業務への関心を保って、しっかりと実務を行うべきだ。

だが、マネジメント専任の役職についたなら、手慰みに現場の仕事をしないこと。これをやると、全体像から目が逸れてしまう。

とはいえ、ときには加減も必要だ。管理職になった途端、業務で緊急事態の部下がいても、決して手伝おうとしない人がいるのだ。納期に追われて必死で働いている部下のそばで、「管理職には管理職の仕事がある」とばかりに、マネジメント専門誌をめくっているのは、シンプルに馬鹿げている。

こうした危機一髪の場面で、腕まくりをして解決をサポートできたなら、部下との関係性も一気によくなるはずだ。

また、部下に業務を割り振っておいて業務遂行に必要な権限は渡さない、というありがちな失態を犯さないよう、くれぐれも注意しよう。

あなたにも、仕事をうまく進めるために必要な権限をもらえず、職責だけを割り振られて困った経験はあるだろう。その場合には、業務が遂行できなかったか、上司に権限を付与してくれと直訴したか、いずれにしても難しい状況だったはずだ。

上司も故意ではなかったのだろう。業務遂行上、必要な権限についてよく考えていなかっただけかもしれない。同様に、あなたも部下をわざと苦しめるつもりはないはずだ。

部下に業務を割り振る際には、職務を果たすための権限も一緒に移譲できているか、忘れずに確認しておこう。割り振りを決める際に、必要な権限について部下と話し合っておくとよい。

部下の仕事がうまくいけば、あなたはマネジャーとして評価が上がり、成功できる。部下が仕事で結果を出せるよう、職責と権限は必ずセットで割り振ることだ。

 

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