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獣医師が教える「愛犬の腸内環境を整える」6つのメリット

林美彩(獣医師),古山範子(監修)

2024年04月16日 公開

獣医師が教える「愛犬の腸内環境を整える」6つのメリット

近年、脚光を浴びているワンコの腸。腸内細菌の役割、また腸内の環境が乱れるとどんな問題が起きてしまうのでしょうか? 獣医師の林美彩さんが解説します。

※本稿は、林美彩著、古山範子監修『獣医師が考案したワンコの長生き腸活ごはん』(世界文化社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

現代のワンコの腸はどうなっているの?

ワンコの腸は腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)という菌の集合体を持っていて、善玉菌、悪玉菌、日和見菌が存在します。

人間もそうですが、ワンコの場合も"善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7"の割合で存在しているのが理想のバランスであり、善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れることで、下痢や便秘、肝臓・腎臓などの内臓の疾患、アトピーなどの皮膚疾患、アレルギー、精神疾患などさまざまな不調の恐れもあります。

獣医師として感じるのは、現代のワンコたちは過去のワンコと比較して、多少なりともわたしたち人間と密に関わるようになったこと。医療の発展や環境・食事なども見直されるようになって長生きワンコが増えてきました。

一方で、祖先であるオオカミと比較して腸の長さはやや長くなり「雑食性」が強くなったものの、人と比較した場合にはまだ「肉食寄り」の体のつくりです。

しかし、現代の食事は、ワンコが消化しにくい栄養素が多く含まれているものが多く、胃腸に負担がかかってしまっていたり、生活環境でも有害物質などがあふれていたりするため、それらによる腸内環境の乱れから、体調不良を訴える子も少なくありません。

 

ワンコの腸内環境が良い状態と悪い状態

人間と同じようにワンコも、善玉菌と悪玉菌のどちらかが多すぎても、少なすぎても、腸内環境は悪化してしまいます。これに日和見菌を加えた、バランスの良い状態が健康的といえます。

割合としては、くり返しますが、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7であることが理想です。善玉菌が悪玉菌より多いことで、日和見菌が善玉菌の味方になってくれます。

日和見菌は文字どおり、生活習慣や食生活などの様子をうかがい優勢なほうにつく菌です。そのため、悪玉菌が多くなると、日和見菌は悪玉菌の味方についてしまい、腸内環境は悪化してしまいます。

犬の腸内環境が悪化すると、アレルギー性皮膚炎やがんなどの症状を発症する可能性や、肥満や糖尿病につながることも指摘されています。また、腸内環境はストレス、老化・食べ物などによって悪化します。

 

\腸内環境に悪影響を及ぼすNo.1・ストレス/

環境や気候の急激な変化や、運動量が少ない、室内で長時間過ごしている、遊んでもらえない、飼い主に叱られるなどです。逆に、過剰すぎるワンコへのコミュニケーションや多頭飼育がストレスになる場合も、腸内環境のバランスを崩す要因になります。

\年齢を重ねることは避けられない老化/

年齢を重ねると老化が起こり、体の状態も変化します。そして、老化により善玉菌が減少し、悪玉菌が増えることで腸内環境が悪化します。

\質により腸内環境を左右する食事/

脂肪分や添加物の多い食事は、体に負担がかかってしまい、腸内にも悪影響を及ぼします。ほかにも治療による抗生剤の投与が、腸内環境に影響を及ぼす場合も! 悪さをしている菌を抑える目的で抗生剤を使いますが、その際に善玉菌にも作用してしまうため、腸内環境の悪化につながってしまうことがあります。

 

免疫の7割を担っている!? 腸内環境を整えるメリット

腸内環境がいい=健康ということはなんとなくわかるけれど、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか? その疑問にお答えしましょう。

免疫の7割は腸が担っていますので、腸内環境を整えて免疫がしっかり働けるようにするということが大事です。

では、免疫とは何でしょう? それは、ひと言で言えば、体内に生じるさまざまな異物に反応し、それらを抑え込んでくれる機能のことです。例えば、ウイルスが体内に入ってきたとしましょう。

すると、体内で伝達物質を分泌して、ウイルスの細胞を破壊するよう命令します。このように、ウイルスに感染した細胞を破壊する防御機能を免疫と呼ぶのです。

免疫がしっかり働ける=健康が保たれる=長生きの秘訣であると考えています。
また、今は脳腸相関、腸肝相関、腸腎相関、腸皮膚相関というように、腸+そのほかの器官の相互関係もわかってきているので、ワンコも腸を整えておくことが、結果的にほかの器官のケアにもつながるということです。

実際、アトピーのワンコは腸内細菌の種類が少ない、肥満のワンコは腸内細菌のバランスが悪い、認知機能が低下しているワンコの腸内細菌は多様性が少ないなど、腸内細菌と疾患の関係性を研究した論文がここ数年でたくさん出てきています。

 

①免疫バランスが整う

腸内環境のバランスがよいと腸の免疫細胞が正常に働きます。それによって、腸内細菌のバランスが乱れているときと比べて、さまざまな病気のリスクが低くなります。

②老化予防に期待

老化は経年による影響だけではなく、細胞や組織の炎症によっても起こるといわれています。腸内環境を整えると免疫細胞がよい状態に保たれて、炎症を抑えられるため、老化予防につながります!

③肥満予防

腸内環境のバランスを整えると、酢酸や酪酸などの総称である短鎖脂肪酸がきちんと作られるようになります。短鎖脂肪酸は、エネルギー代謝をコントロールする役割があり、肥満予防にも効果があるといわれています。

④代謝UP!

腸が活発なら栄養素を効率よく吸収し、エネルギーを体の隅々にまで届けられ、全身に運ぶことで、血液の循環もよくなり、体温も上がります。エネルギーが行き渡った内臓は、働きが活発になり、基礎代謝もアップ!

⑤口臭予防に

食べ物として摂取した炭水化物やたんぱく質が腸内で腐敗してしまったり、悪玉菌が増えて腸内環境が悪化してしまうと、口臭がきつくなる可能性も! 善玉菌を増やすことが重要です。

⑥幸せホルモンが増え、イライラしない!

腸内環境を整えることで、必須アミノ酸のトリプトファンが吸収されやすくなり、それが脳に送られることで、脳内セロトニン(幸せホルモン)が作られ、精神安定や食べすぎ抑制が期待できます。

 

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