「入社後に給与の低さに絶望した」「年収が想定の半分で生活が苦しい」。こんな悲痛な声を、転職経験者から聞いたことはないだろうか? 実は、転職活動中に企業の年収を把握できず、入社後に後悔する人が後を絶たない。いわゆる「給与ブラックボックス症候群」だ。応募前に企業の年収を予想する具体的な方法を、退職学(R)の研究家・佐野創太氏が徹底的に解説する。
※本稿は、佐野創太著『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
3851社の平均年間給与は、無料で調べられる
日本企業への転職活動は、中途採用であっても新卒採用のように「お金のことは何となく聞きにくい」空気が漂っています。
SNSでは人事担当者が「給料で会社を選ぶ人は採用したくない」と投稿して賛否両論を呼ぶことがあるくらい、採用側もお金についてあまりオープンに語りたがりません。求人票を見ても「350~800万円」など、幅があり過ぎてよくわからないという声もいただきます。
「だいたい、どのくらいの年収になりそうか」は、入社前に、できれば応募前に知りたくはありませんか? その方法をお伝えします。
仮に「好きなことであれば給料は低くてもいい」と考えている人であっても、厳しくチェックしていきましょう。お金以外の報酬のために働く場合でも、給料が不当に低くていい理由にはなりません。
まず、上場企業であれば「有価証券報告書」が企業の財務情報のページで公開されています。ただし、一社ずつ調べるのは現実的ではないかもしれません。日本取引所グループ(JPX)によると、2022年12月1日時点で、「上場企業は3851社」もあるのですから。
そこで、金融庁が運営する有価証券報告書等の開示書類を閲覧するサイトである「EDINET(Electronic Disclosure for InvestorsʼNETwork)」を使ってください。
名前の通り投資家用のサイトですが、転職活動でも使えます。「提出者/発行者/ファンド/証券コード」に企業名を打ち込み、「書類種別」の「有価証券報告書/半期報告書/四半期報告書」にチェックを入れて「検索」を押します。
検索結果の「提出書類」から「有価証券報告書」をクリックすると、左ページに「表紙」が表示されます。その中の「第一部 第1」の「5 従業員の状況」をクリックします。「(2)提出会社の状況」に「平均年間給与(円)」が出ています。併せて「平均年齢(歳)」と「平均勤続年数(年)」が表示されるので、目安として使えます。
自分の給料に「見合わない企業」を炙り出そう
とはいえ、日本企業の99%近くは未上場企業であり、ほとんど情報を公表していません。国税庁が2022年5月27日に公表した「令和2年度分会社標本調査結果」を見ると、株式会社だけで258万3472社あります。株式会社は組織別法人の構成比の92.1%を占めています。
そうした中で、『就職四季報 優良・中堅企業版』(東洋経済新報社)の「平均年収」を使って調べる方法もあります。「地方有力企業など、総合版に載せきれなかった4600社を掲載」という宣伝文句で展開しています※1。
また、応用として「OpenMoney」というWebサービスを使ってみることもできます。グレード(等級)と年収を見ることができ、「自分の年齢や役職でどれくらいの給料になるか」といった当たりをつけるには、いい手段です。
これらで大切なのは、ピンポイントでいくらもらえるのかを知ることではありません。あなたの年齢や業界の給与水準などから、「明らかに自分に見合わない企業」を除外することです。「志望企業は、この業界の中で適正か」を図る指標になります。
たとえばA業界の35歳時点の平均年収が500万円の時、受けている企業が400万円だったら「100万円を下回ってでも入社する、金銭以外の報酬はあるのか」と立ち止まってください。
企業分析ではありませんが、最終的には、内定が出た時に通知される「雇用契約書」の説明を受ける際、聞くこともできます。「企業に直接聞きにくい」と思ったら、転職エージェント経由で企業に聞いてみることをお勧めします。
給料は、あなたの努力や工夫に対して会社が見る目を持っているかを図る重要な指標です。労働者として会社と契約することは、あなたの人生の中の貴重な時間を商品にすることと同用です。給料も企業を分析する対象に加えてください。