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不機嫌な時は隠さず「事前宣言」で職場の人間関係が変わる

パスカル・フロリ,セドリック・フロリ,前田康二郎(流創株式会社代表取締役)

2025年01月06日 公開

不機嫌な時は隠さず「事前宣言」で職場の人間関係が変わる

仕事が忙しく、ついイライラ...気を付けようと思っているのに不機嫌になってしまう時、どう感情をコントロールしたらいいのでしょうか。日本語教師としても活動する前田康二郎さんが出会った、フランス人のパスカル・フロリさん、セドリック・フロリさん夫妻に学んだ「人間関係を良好に保つコツ」について、書籍『改定新版 自分らしくはたらく手帳』よりご紹介します。

※本稿は、パスカル・フロリ、セドリック・フロリ、前田康二郎著『改定新版 自分らしくはたらく手帳』(クロスメディア・パブリッシング)を一部抜粋・編集したものです。

 

どうしても自分の不機嫌さを隠せない時

「職場で一番『困るなあ』と思う人はどんな人ですか?」という質問をすると「不機嫌な人」を挙げる人も多いのではないでしょうか。しかもその人が「一人担当者」で、業務上どうしてもその人とやりとりをしなければいけなかったりすると、周囲の人はとても気疲れします。

たとえば紙の契約書の原本を保管しているキャビネットの鍵を、一人担当者のAさんが管理しているとします。Aさんの機嫌が良いときは、同僚が「今度新規の契約を結ぶので、過去の他社との契約書を参考に見せてもらいたいんですけど」とお願いしたら「いいですよ!」とすぐ見せてくれるのですが、不機嫌なときは「え? どうして契約書を見る必要があるんですか?」「契約書って誰にでも見せていいものではないからとりあえず見せてほしいって言われてもな......」と、その人が周囲にとって「高い壁」になってしまうことがあります。

それが繰り返されると「過去の契約書を見せてもらうためだけに、どうしてAさんに頭を下げたりお伺いを立てたりしないといけないんだろう」という空気になっていくことがあります。

その一方、なぜこのようなことが起こるかというと、一人担当者は負担とそれに伴うストレスが多いからです。自分が休暇をとっている時にでも「あなたしかわからないから」と、会社の人達から代わる代わる連絡があったり、二人担当者がいればダブルチェックができるものも、一人で何回もチェックをしたりしなければなりません。中には「自分の仕事の価値をわかってくれている人がこの職場にはいるのだろうか」と、懐疑的になっている人もいるでしょう。

そのような時に、相手から「こっちは急いでいるんだからさっさと契約書見せてよ」「融通が利かないなあ」などと言われると、一人担当者のストレスは溜まります。しかし一人なのでそのストレスを誰かに共有も発散もすることもできず、お腹に溜まっていくのです。

もし私達がAさんのような一人担当者の立場になったとき、自分の不機嫌さを取り繕おうとしてもどうしても「無理だな」と思ったら、どう振る舞えばよいでしょうか。

私でしたら、問い合わせに来た人に、「お疲れ様です。すみません、今日の私は絶不調で不機嫌な顔をしていると思うんですけど、個人的な理由なのでどうぞお気になさらず用件おっしゃってくださいね」と最初に言います。

「不機嫌な人」になぜ困るのかというと、何が理由で不機嫌なのかがわからないからです。たとえば私がAさんに「Aさんお疲れ様です」と声をかけて「え?」と不機嫌な顔をされたら、自分がAさんに何か悪いことをしたのか、もとから好かれていないのか、話しかけるタイミングや話しかけ方が悪かったのかなど、「自分に何か非があるのかな」と思い、こちらがネガティブな気持ちになりますよね。

でも最初から「今日、私は不機嫌さを隠せません。でもあなたのせいではないですから許してくださいね」と宣言されれば、相手も「何があったの? 話聞くよ」という人もいるでしょうし、少なくとも「自分のせいで不機嫌じゃないんだ」と安心します。

不機嫌なことがあったときに、自分の不機嫌さに自分も周囲も振り回されてしまうくらいなら、いっそのこと「いま私は不機嫌です」「今日の私は絶不調です」と口に出して「見える化」し、自分の機嫌を自分の手の内に入れてコントロールしてしまいましょう。

 

うまくいかないときは、 ちょっと一息入れよう

パスカルさんに日本語を教えているときに、便利だからどうしても知っておいてほしい日本語などがあると、私も熱が入ってしまいます。だからパスカルさんが難しい顔をしていても、ごり押しして説明をしてしまうときがあります。

でも結局、パスカルさんの顔がさらに難しい顔になり、そこで自分も我に返り、引き下がります。そして、私は教えたいけれど、相手にとってその言葉は本当に必要なのかを考え、必要がなければ、そこでやめておきます。もし、やはり伝える必要があると思ったときは、また違う教え方の方法を冷静に考えて、そのタイミングが来るのを待ちます。

Reculer pour mieux sauter.
よりよく跳ぶために一旦後ろにさがる

たとえば、仕事の企画や提案などで、あと一歩なのになかなかうまくいかない、というとき。力ずくで相手を負かしてしまうと、後から反動が来ます。そして人間関係にもそれが影響し、その関係性が場の雰囲気にも出てしまいます。

もし、議論の場で膠着〈こうちゃく〉状態になったら、一旦自分から身を引いて、冷静になりましょう。そしてもう一度最初から自分の企画提案を見直してみましょう。自分本位になっていないか、もっとよい提案の仕方がないかを見直して、再度、絶好のタイミングを待つのです。

子どもの頃、大きな水たまりを前にして、飛び越えようとしたことを思い出してみてください。勢いをつけるために、まず数歩後ろにさがり、水たまりの大きさを確認してから、一気にジャンプしたのではないでしょうか。仕事の課題も水たまりと一緒だと思えばいいのです。

「思ったより大きな水たまりだ」と思ったら、逆に思い切りさがって、準備したほうがいいのです。一旦さがることは悪いことでも負けでもありません。むしろ課題が大きければ大きいほど、大きくさがって助走をつけたほうが、よりよく跳べるのです。

 

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