たくさん寝たいとは思っていても、多忙な日はどうしても睡眠不足になってしまうこともあります。よく眠れなかった日をリカバリするには? スリープトレーナーのヒラノマリさんによる書籍『世界のエリートが実践! 人生を変える睡眠術』より、睡眠時間の管理の仕方について解説します。
※本稿は、ヒラノマリ著『世界のエリートが実践! 人生を変える睡眠術』(大和出版)を一部抜粋・編集したものです。
後天的なショートスリーパーはほぼいない
普段ちゃんと寝ている人が、プレゼンの前日で緊張したとか、なんらかの理由で数日睡眠不足になった。でも、本人の体調にはまったく問題がない。こんなとき、なぜ短時間睡眠でも悪影響を受けないのでしょうか?
●睡眠習慣の積み重ねがモノを言う
その理由は、それまで毎日ちゃんと睡眠をとってきた恩恵があるからです。これは、睡眠不足になる前に一時的にたくさん寝たという、「寝だめ」のような行動ではなく、それまでの「睡眠習慣」がしっかりできているということです。
この蓄積があれば、寝つきが悪かった日が1日くらいあっても、それだけで体調が崩れてしまうことはありません。そのような態勢を作るためにも、普段からちゃんと眠っておくことが重要です。
「毎日4時間しか眠れなくても大丈夫」という自称ショートスリーパーもいますが、睡眠不足が重なると、本人が麻痺してわからなくなっていることもあるので、気をつけたほうがいいでしょう。
知らないうちに健康被害を受けていて、あるとき倒れて入院して、初めて自分がどれだけ体に負担をかけていたか気づく─。そういう状態になる前に、ぜひ睡眠時間を増やす努力をしていただきたいのです。
ちなみに、後天的にショートスリーパーになることはできません。カリフォルニア大学の研究によると、ショートスリーパーは10万人に約4人だそうです。あまり寝なくても健康な人と同じ状態でいられるかは、遺伝子で決まっているからです。
ですから、もともと普通に眠っていたのに、大人になって短時間睡眠になっている方は要注意。いきなり睡眠時間を増やすのは無理でも、やはりできるだけ7時間睡眠に近づけるようにしてください。
どこまでが遺伝の影響なのか
2017年の論文にて、中途覚醒にかかわる遺伝子について発表されていました。また、睡眠ホルモンを形成する脳内物質であるセロトニンが分泌されやすいかどうか、光にどう反応するかなども、遺伝子による影響を受けるこ
とがわかっています。
眠れない原因がわかると、それに応じた対策をとれるので、私は睡眠コンサルでサポートする際にも遺伝子検査(唾液を採取することで生まれ持った体質の傾向を知ることができるもの。すべての不眠の原因がわかるものではありません)を導入しています。
私自身も遺伝子検査を受けたところ、セロトニンの合成があまり得意ではないことがわかりました。実際、日照時間の短い冬や雨の日などには調子がよくないことが多く、それがずっと気になっていたのです。
原因がわかった今は、セロトニンを分泌できるように地下鉄の駅を1駅〜2駅余分に歩いたり、雨の日でも光を浴びながら歩けるようにビニール傘を持ち歩くなど、対策をとるようになりました。
●「夜型・朝型」の半分は遺伝子の影響
いわゆる「夜型か朝型か」という部分は、遺伝的な体内時計の影響が45%くらいあると言われています。そこに生活習慣からの影響がプラスされて傾向が決まります。
「朝がものすごく苦手」というタイプならば、朝活が流行っているからといって無理に早起きすることはありません。体質に合わないことをすると、体内時計が乱れて睡眠の質が下がってしまうこともあるからです。
ネット上でも、自分の体内時計のパターンがわかる「クロノタイプ診断」というテストができるので、気になる場合は一度調べてみるといいでしょう。
眠れなかった日のリカバリの仕方
あまり眠れない日があっても、翌日しっかり眠れば、だいぶ回復できるのは確かです。そこに頼りすぎて、睡眠のコントロールがおろそかになるのは問題ですが、1週間単位で見て、だいたい足並みがそろっていればよしとしましょう。
「足並みをそろえる」と言えば、「何時間眠るか」という部分だけでなく、起床時間や就寝時間もできるだけ固定しているのが望ましいです。そのほうが体内時計への影響が少なく、体のためにいいからです。出社時間が決まっている人は、起床時間もだいたい決まっていると思います。
●1週間の仕事・スケジュール・睡眠傾向をメモ
問題は就寝時間です。忙しくて残業や出張が多いと、どうしても寝る時間が不規則になりがちですよね。そのような場合は、1週間のスケジュールを手帳で確認しながら、ざっくりと対策を考えてみてください。
そうすれば、「就寝時間が遅くなりそうな日をあらかじめ把握して、翌日は早く帰宅して、いつもの時間に眠れるようにスケジュールを組む」という調整もできます。
たとえば、
「〇曜日は、残業で帰宅が遅くなる」
「〇曜日は、子どもの寝かしつけをする日だから早く帰宅する」
「毎週月曜日の午前中に部の会議があり、そのことを考えて日曜の夜は寝つきが悪い」
「週の後半になると、残業が増えて帰宅時間が遅くなる」
「大きい会議の前日は、準備のために夜寝るのが遅くなる」
「飲み会があった次の日は、寝起きが悪い」
などと。
そういった自分の傾向がわかると、対策をとりやすくなります。たとえば、「今週はちょっとバタバタして全体的に睡眠時間が短い」とわかったら、「翌週は出張がないから、毎日仕事を早めに切り上げて早めに寝よう」とマネジメントできるわけです。
1か月単位で全体的な傾向をつかむ
おすすめは1週間単位で管理して、1か月単位で俯瞰すること。睡眠は俯瞰する作業が大切です。
私自身も、「今月この日とこの日に出張があって朝が早く、夜も担当している方との連絡があるから睡眠時間が短くなる。でも、週前半は余裕を持ってちゃんと眠れるようにしよう」と、ざっくりとした計画を立てています。そうするとつねに睡眠を意識できるので、体調管理もしやすくなります。
記録を続けていくと、
「季節の変わり目に体調を崩しやすい」
「冬はちゃんと眠れているけど、夏は眠れない日が多い」
「梅雨時はあまり眠れない」
「だいたい秋口に体調を崩している」
と、季節ごとの傾向もわかってきます。
また女性の場合は、ホルモンバランスの影響もあるでしょう。「生理前は深部体温が下がりにくくて寝つけないときがある」といった変化にも注目しながら、記録していくといいですね。メモをとることで、自分の睡眠や健康に関するいろいろなことがわかり、生活習慣の改善にとても役立ちます。