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夏井いつきさんが語る「俳句初心者の人に、まずやってほしいこと」とは?

夏井いつき(俳人)

2025年01月08日 公開

夏井いつきさんが語る「俳句初心者の人に、まずやってほしいこと」とは?


写真:御厨慎一郎

テレビ番組などで大人気の俳句の先生こと夏井いつきさんは、「俳句を始めると人生が楽しくなる」といいます。

「日々起こること、出会うものすべてが『俳句のタネ』になって、人生から『退屈』という言葉や、『暇だ』とか『つまらない』なんて時間は、どこかに吹き飛んでしまうんです」

その言葉に心を動かされた俳句の"ど素人"である編集者が、夏井いつきさんに弟子入りすることになりました。本稿では、俳句を始めるのに必要な「三種の神器」について教えてもらいました。

※本稿は、夏井いつき著『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。

 

俳句のスタートは、まずは形からでOK!

夏:前回は、俳句を始めるのに必要な「三種の神器」についてお話ししました。

K:はい! 「ペン」と「メモ用紙」と、もう一つは、え、えーっと......。

夏:「俳号」だったよね。俳号っていうのは、俳句を作るときの名前のこと。俳句を作る前に、まずは俳号を考えましょう。

K:まさかの、形から入るパターンですか(笑)。

夏:それでいいのよ。だって、本名で俳句を作ってコケたら痛いでしょ。「Kが作りました」「ヘタですね」っていわれたら。

K:確かに......。ショックで立ち直れません。

夏:正岡子規は、とんでもない数の俳号を使い分けていたのよ。学生の頃の回覧雑誌なんて、俳号を変えて、ほとんど自分一人で作っていたんだから。高浜虚子だって、本名は高浜清だしね。

K:はじめて知りました。

夏:だから、コケても傷つかないように、初心者こそ俳号を持ちましょう。それに俳号には、「これは他の誰のものでもない私の俳句ですよ」とマーキングする意味もあるの。

 

俳号にルールは一切なし! 何でもOK!

夏:それじゃあ、さっそくKさんの俳号を考えてみましょう。

K:えっ、ここでいきなりですか......(汗)?

夏:そう。ここで決めるのよ! Kさんの趣味は何?

K:趣味ですか。うーん......。

夏:私の知り合いには、競馬好きで「テイエムオペラオー」とか、何を思ったのか「鼻毛出て~る」なんてふざけた俳号の人もいましたよ。

K:そ、そんなに自由でいいんですか! 何でもありですね。

夏:何でもOKなの。ルールも一切ありません。「♪」「★」「♥」などの記号やアルファベットを使う人もいるね。

K:じ、自由だ......。

夏:俳句を作って仲間とお互いに披露しあう会を「句会」っていうんだけどね。その句会に参加したときに「あなたの俳号には、どんな意味が込められているんですか?」ってきかれたら、語りたいじゃないですか。まぁ、評判が悪かったら、出世魚のように俳号を変えるっていうのもありだし。構えず、気軽に考えてみてください。

K:途中でどんどん変えていってもいいんですね。

 

俳人は普段、俳号で呼び合う

夏:さぁ、Kさん、どう?

K:あっ、私、これといった趣味はないのですが、編集者としての仕事が大好きだということに、今、気がつきました。

夏:忠誠心の高い男だね~。それだったら、Kさんが勤めている会社、「PHP」からつけてみようか。「ぴー」っていう音、漢字であるかな?

K:うーん......。たとえば、「認否」「韓非子」......。

夏:「突飛」「神秘」なんかもあるね。

K:神秘の「秘」って、かっこいいですね!

夏:それじゃあ、「秘」でいこうか。「えいち」は......、「英知」なんてどう? 

K:合体させると......、「秘英知(ぴーえいち)」!

夏:すごい才能を秘めていそうな俳号だね(笑)。

K:きょ、恐縮です(笑)。

夏:だんだん目が輝いてきたね。では、今日からKさんは秘英知。忠誠心の高い男! 私もこれからは秘英知さんと呼ぶことにしますね。俳人は普段、本名ではなく、俳号で呼び合うので。

K:光栄です(照)。

夏:これで、「ペン」「メモ用紙」、そして「この本」......ではなく(笑)、「俳号」という「三種の神器」がそろいましたね。

K:はい! 簡単にそろえることができました。まさか自分の俳号を持つことになるとは思ってもいませんでした。

 

【夏井いつき(なつい・いつき)】
俳人。1957年、愛媛県生まれ。中学校国語教諭を経て俳人に。俳句集団「いつき組」組長。創作執筆に加え、句会ライブなど俳句の種まき活動を積極的に行なう。テレビ番組「プレバト!!」(MBS/TBS系)で人気を博す。

 

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