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リモート従業員を抱えるチームが「直接会う時間を定期的に設ける」必要性

クレア・ヒューズ・ジョンソン(Stripe執行役員兼顧問), 二木夢子(翻訳)

2025年05月06日 公開

リモート従業員を抱えるチームが「直接会う時間を定期的に設ける」必要性

コロナ禍を経て、リモートワークをはじめとする多様な働き方が浸透しました。出社とリモートのメンバーがチームに混在する場合、リーダーはどのようにマネジメントしていくべきでしょうか。GoogleでYouTubeやGmailなどを急成長させ、オンライン決済のStripeでCOOを務めたクレア・ヒューズ・ジョンソン氏による書籍『スケーリング・ピープル』より解説します。

※本稿は、クレア・ヒューズ・ジョンソン著, 二木夢子(翻訳)『スケーリング・ピープル 人に寄り添い、チームを強くするマネジメント戦略』(日経BP)を一部抜粋・編集したものです。

 

仲間外れをつくらないミーティング慣行の構造と規範を打ち立てる

対面のやりとりは、ある程度の期間にわたって、チームの構造的な弱さを覆い隠してくれる。ある意思決定が下されたときに関係者が全員同じ部屋にいたのなら、きちんと文書化されていなくても致命的ではない。

しかし、チームメンバーのひとりが別のタイムゾーンにいて、かつ意思決定が記録されていない場合、情報の非対称が生じ、信頼が徐々に失われる。リモートチームのオーナーシップ、オペレーティング・ケイデンス、そして説明責任のしくみについて明確にし、自分が必要だと思うよりも詳しくコミュニケーションの規範を文書化しよう。

 

場を平等にする

リモートチームのタイプと課題

チームメンバーがきちんと議論に参加してくれるかどうか心配な場合、一番重要な対策は、リモート従業員が出社組との扱いの違いを感じるような慣行を最小限に抑えることだ。リモート従業員にとってのチームミーティングと、出社組にとってのチームミーティングについて考えてみよう。

チームの誰かがミーティング招待状を送信した。オフィスからは複数名が参加するため、招待状には部屋番号を記載しているが、ビデオ会議のリンクを貼るのを忘れてしまった。

リモート従業員はミーティングの主催者に連絡して、リンクか電話番号を教えてもらわなければならなかった。ミーティング前に出社組のメンバーが昼食でたまたま一緒になり、この後のミーティングの議題について話し出した。しかし、リモート従業員はそのことをまったく知らない。これでは、ミーティングが始まる前からすでに重要な文脈が抜け落ちてしまう。

いざ会議が始まると、リモート従業員の自宅の近くで工事をやっていたので、マイクをミュートに設定しなければならなかった。出社している人たちが議論を始めるが、リモート従業員にはよく聞こえないので、同僚の議論を尻目に無言で座っている羽目になった。

リモート従業員は、実にさまざまな面で、社員が1カ所に集まっているチームと異なる経験をする。どれくらい条件を平等にするかは、会社の哲学による。

完全な分散型企業であるAutomatticでは、たとえ複数名が同じ職場に出勤していたとしても、全員が別の場所から電話会議に参加することを求めている。そうすることで、一部の社員だけが共通の場所にいて、他の人が電話で参加する会議を避けている。また、少なくとも1年に1回全員が対面で集まる機会を設けている。一部のチームは四半期ごとにミーティングをしている。

Stripeでは、すべてのリモート従業員が適切な形で電話会議に参加できるように、ハードウェア設定が適切かを確認している。また、些細なことや手続き的なことでも、仕事に関する議論はSlackまたはメールで進めるという規範を設けている。対面とリモートの経験には違いがあり、場合によっては有害な亀裂になりうる。その認識から、リモート従業員の環境改善が始まる。

 

直接顔を合わせる時間を確保する

わたしは長年、対面で過ごす時間がなくても、分散型の集団を強いチームにできると考えてきた。世界各地に社員がいるチームが効果的に動いている例はいくらでもある。でも、直接会う質の高い時間を定期的に設けることに代わる有効な手段は、まだ見つけられていない。これは次のような価値がある。

・自然な社会的交流やつながりが生まれる。人間は群れで行動する動物で、仕事上の関係を超えたつながりが求められる。もちろん、場所が離れていても仕事以外の話題でつながれるが、事前の計画なしに社会的交流を持ち、深い関係を培うことも大切だ。一緒に笑い、個人的な興味関心の話をして、単なるビデオ会議ではない経験を共有できるようにする必要がある

・チームメンバーを、日常業務を超えたマインドセットへと導く。人は日常業務のリズムにすぐに適応する。だからこそ、あまり長くそこに安住していると、オペレーティング・ケイデンスが停滞してくる。時々、全員が日常を離れて、45分から60分のミーティングでは難しい意識合わせを実現し、理解を深める必要がある

わたしは数年間にわたって、Stripeが操業するすべての国の収益部門を率いるグループをマネジメントしていた。このグループは、北米、ヨーロッパ、アジアの国と地域のリーダーで構成されていた。

最初にグループを結成した頃には、四半期ごとに直接会っていた。社員はたいていサンフランシスコに集まり、職場を離れて(オフサイトで)2日間仕事をして、チーム交流イベントを少なくとも1回開催していた。サンフランシスコに出張する社員はまる1週間滞在し、他の社員やチームとも交流する。こうして一緒に過ごす時間が、チーム内の関係と、Stripeの収益を高める戦略の両方を築くために欠かせなくなった。

初めての対面ミーティングでは、チームが成功するために対応、解決、構築するべきあらゆることをリストアップして、巨大なホワイトボード3枚が埋まった。まだ黎明期にあったマーケティング部門に力を入れるべきかについて、やたらと議論がヒートアップしたのはおかしかった。わたしは、国内の見込み顧客の引き合いにすら対応しきれていない状態ではないでしょうか、と突っ込んだ。

最終的には、優先順位のつけ方の下手さと、悩みのぜいたくさに、みんなで笑った。言うまでもなく、ホワイトボードに書いたことすべてに対応するのにはかなりの時間がかかったが、一緒に時間を過ごすことで効果的な対応への基礎が築かれた。

さて、リモートチームはどのくらい頻繁に対面で顔を合わせるべきだろうか。初めてリモートチームを組んだときは、四半期に一度以上くらいの頻度で、会う計画を立てよう。しかし、しっかりとした対面のやりとりを何度か経験したら、もう少し頻度を下げても問題ない。対面で一緒に計画を立てれば、離れてからも、より速く長時間にわたって走り続けていられる。のちには半年に1回に移行しても構わないだろう。

ただし、会社が成長期にあり、チームに新たなメンバーが続々加入している間は、しばらく四半期に一度の対面ミーティングを続けることを勧めたい。世界的なパンデミックなど、対面で会えなくなる状況が発生する場合もあるが、やはり対面ミーティングは不可欠だとわたしは思っている。ただし、Stripeで実践したように、Zoomによる半日間のオフサイトのような形で試行錯誤する必要もあるかもしれない。

 

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