「しっかり寝たはずなのに、疲れが取れない」「仕事中にイライラや眠気が襲ってくる」......そんな悩みは、毎日のちょっとした習慣で改善できるかもしれません。自律神経を整える鍵は、良質な睡眠、腸を動かす食事、そして意識的な呼吸にあります。医学的視点から考案された、1日1分でできる「長生き呼吸法」や、睡眠負債をリセットする「睡眠の日」の作り方など、今日から実践できる心身のメンテナンス術をご紹介します。
※本稿は、小林弘幸著『科学的に証明された 自律神経を整える習慣』(アスコム)より一部抜粋・編集したものです。
週に1回「睡眠のための日」を作る
質のいい睡眠とは? と聞かれて、その中身を科学的、医学的にスラスラ答えられる人はなかなかいないと思います。しかし、目覚めたときにすっきりしていて、「今日はよく眠れた!」と感じる場合は、その日の眠りの質はよかったといえると思います。反対に、「しっかり寝たはずなのに、なんだかまだ眠い」なんていう日は、あまり熟睡できていなかったのでしょう。
質のいい睡眠をとるには、規則正しく睡眠をとることを習慣化していただけるといいでしょう。よい睡眠の確保は、自律神経を整えるためにもっとも大事な要素のひとつですし、何より「気持ちよく眠れた!」という日の活力がどれほど豊かで生き生きとしているかは、みなさんよくご存じでしょう。
そういう日をもっと増やすために、どんな習慣を心がけると助けになるでしょうか。
基本は、「毎日〇時間寝る」「夜△時に寝て朝×時に起きる」と決めておくことが大切です。そのとおりにはいかないことも多いと思いますが、眠る際に「枕に向かって誓う」だけで、意識は変わってきます。
そのためには、副交感神経を出せるような、よい眠りのためのスイッチをたくさん作っておきましょう。
たとえば、寝室内にリラックスして眠れるような仕掛けや環境を整えてみるというのはどうでしょうか。リラックスできる音楽、眠りを誘う香り、読むと必ず眠くなる本......。そんな、睡眠のきっかけになるものをつねにそろえておくようにするといいでしょう。
温めたタオルを首に巻き、首の筋肉を温めるのもおすすめです。首には神経や血管が集まっていて、温めると副交感神経が活性化しやすくなります。
忙しくてなかなかまとまった睡眠時間をとれない場合は、せめて週に1回は「睡眠のための日」を作りましょう。睡眠不足のまま仕事や勉強を続けても、やがてパフォーマンスは落ちてしまいます。今日は寝る日と決めたら、昼間は適度に運動をするようにしましょう。運動で生まれるセロトニンは夜寝るためのメラトニンを生成するので、スムーズに眠りにつくことができます。
私の場合、夜は仕事のメールチェックはなるべく控えて、起きてから見るようにしています。交感神経のスイッチが入らないようにすることで、睡眠の質を下げないようにするためです。メールだけでなく、ネットなどでネガティブな情報を、寝る直前まで見ることをやめることも大切です。
食事はやっぱり1日3食
食事のとり方やタイミングも、自律神経に影響します。
そもそも、私たちはなぜ1日3食なのでしょうか。もっとも、さまざまな説があり、みなさんのなかには1日2食派、1食派の人もいるかもしれませんが、私は自律神経を整える目的なら、1日3食を強くおすすめします。
やはり3食しっかり食べて栄養をチャージすることが大切なのか......と思われがちですが、自律神経のためだけに限れば、そうではありません。第一、消費カロリー以上に摂取してしまうと、当然の話として太ってしまいます。ただでさえ在宅勤務が増えている状況ですから、積極的に運動をしていない限り、消費カロリーはむしろ下がっている可能性があります。
自律神経にいい「1日3食」とは、「3食しっかり食べましょう」というより、「1日に必要な栄養素を取り入れる際、3回に分けて食べましょう」という意味合いだと理解してください。
自律神経を整えるために大切なのは、腸をつねに、一定の勢いで動かしていることだからです。
まずは、朝食は必ずとるようにしましょう。
なぜなら、体が目覚める朝に腸を刺激しないと、副交感神経が下がりすぎてしまうからです。本格的な活動を始める前に適度に食べておくことで、副交感神経を適切な水準に上げておくことができます。
時間がないときは、ヨーグルトとバナナ、あるいは「長生きみそ汁」(赤みそ+白みそ+おろし玉ねぎ+りんご酢のみそ玉に具材を加える)だけでもOK。噛む行為もまた、脳を刺激し、体温を上げて体を目覚めさせます。どうしても食べられない場合は、せめて水や白湯、お茶だけでも体に入れるようにしてください。腸はその重さを感じただけでも動きます。
私たちは空腹になるとイライラしますが、これはいわば自律神経が乱れている状態と考えられます。反対に、おなかがいっぱいになると眠くなり、仕事や勉強の能率が下がってしまいます。これはリラックスのしすぎで、逆の意味で自律神経が乱れてしまっていることになるわけです。毎日適度な量を食べることで、腸が働き、自律神経が整うのです。
そして、寝る3時間前までには夕食を終えるようにしましょう。なぜなら、腸が食べ物を消化するのに3時間程度が必要だからです。睡眠の質を下げないためには寝る3時間前までには夕食をとるのがベストですが、どうしても夕食の時間が遅くなってしまう場合は、なるべく消化のいいものを食べるようにしましょう。
長生き呼吸法で自律神経を整える
私たちは、1日で2万回もの呼吸をしています。
呼吸はまさに自律神経によって動いていますから、ほとんどの人は普段、意識すらしていないでしょう。以前は私も呼吸についてなど強く意識したことはありませんでしたが、50代のなかごろに、急に喉頭蓋が腫れ、咳が止まらず、呼吸ができなくなってしまったことがありました。たった数十秒でしたが、大げさではなく死を意識したことで、呼吸の大切さを痛感しました。
呼吸は、交感神経優位だと浅く・速くなります。
もしも1分間で20回を超える呼吸をしているのなら、交感神経が上がりすぎているサインです。取り込んでいる酸素量が不足して、自律神経にも悪影響を与えかねません。
そこで私は、毎日1分程度、意識しながら行なうだけでよい呼吸の習慣ができる「長生き呼吸法」を考案しました。ここではその概要をご紹介しましょう。
自律神経を整える「長生き呼吸法」の基本は、「鼻から3秒吸い、口から6秒吐く」という、「1:2」のリズムです。この呼吸法を覚えたら、次のような動作とともに行ないます。
【1】足を肩幅程度に開き、まっすぐ立つ。肩の力を抜き、両手を脇腹に当てて、肋骨の下を軽くつかむ。
【2】3秒間、鼻から息を吸いながら、上体をそらして両手の力を緩める。
【3】6秒間、口からゆっくり吐きながら、上体を前に倒し、両手で脇腹の肉をおへその側に集め、腸に痛くない範囲で、適度な刺激を与える。
以上で1セットです。1日1分程度でもいいですし、何度やってもOKです。
さらには夜寝る前、副交感神経を優位にして、睡眠の助けになる呼吸法も紹介しておきましょう。
【1】足を肩幅程度に開き、まっすぐ立つ。両手を上に伸ばして手首をクロスさせ、鼻から3秒息を吸う。
【2】 一気に力を抜いて両手を下げ、口から6秒息を吐く。
これを繰り返すことで、全身からほどよく力が抜けます。
睡眠前の習慣に取り入れておくといいでしょう。








