疲れているけど、仕事が全部終わってから休もう――急ぎの仕事などがあると、ついつい休養を後回しにしがちですが、必要な時に休まないことで先延ばしが増えることになると、コーチングの情報などを発信し続けている株式会社ハイパフォーマンス代表取締役の名郷根修さんはいいます。
では、どのような休養方法が効果的なのか。本稿では、科学的にも効果が確認されている休養のコツ3選を紹介します。
※本稿は、名郷根修著『瞬動力』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
休養が疲れた脳を回復させる
瞬動力を高める要素の1つは「休養」です。「休む=疲れたときに取るもの、がんばったあとのご褒美」と捉えている人も多いのですが、脳科学の視点では、この考え方こそが、先延ばしを生む原因になり得ます。
ここでいう休養とは、夜の睡眠だけを指すのではありません。日中の短いオフタイムや、質の高い休憩も含めた脳の回復行為全般を意味します。本当に大切なのは、疲れ切ってから休むことではなく、脳が動ける状態を保つために休むことです。
休養は、サボりでも甘えでもありません。行動できる脳を維持するための戦略です。「動きが弱まった脳を回復させるために、能動的に休む必要がある」と考えると良いでしょう。
では、なぜ休養が足りないと、動けなくなるのでしょうか?これも脳の集中・判断・着手を担う前頭前野が影響しています。前頭前野は、脳の中でも最もエネルギーを消費する部位です。そして、長時間の集中、判断の連続、情報過多などによって、疲れやすいという特徴があります。
疲労やストレスが重なると、脳は「これ以上無理をさせないほうが良い」と判断し、行動をコントロールする司令塔の働きを一時的に弱めます。その代わりに優位になるのが、不安や回避反応を担当する、より原始的な脳の回路です。
この切り替わりによって、集中できない、判断が鈍る、先延ばしが増える、簡単な作業に逃げたくなる、といった、動けない状態を引き起こします。つまり、休養不足で脳の司令塔がオフになり、動けなくなってしまうのです。
「動ける脳」を回復させる休養の役割
休養の大切さは理解してもらえたでしょうか。ただし、ここで言う「休養」は、ゴロゴロすることでも、長時間寝ることでもありません。前頭前野の負荷を下げるために、休養の取り方にもコツがあります。科学的に効果が確認されている3つのポイントを紹介します。
①短時間の完全オフが前頭前野を回復させる
脳は「何もしない時間」に回復します。意識的な課題や判断から解放されたとき、脳は自動的に「情報の整理」「感情のリセット」「疲労回復」というモードに入るのです。3分程度でも良いので、一日の中で脳を完全にオフにする時間をつくってみましょう。
【3分でできる「脳の完全オフ」行動】
・目を閉じて座る
・窓の外をぼんやり眺める
・呼吸だけに意識を向ける
ポイントは、「うまくやろう」としないことです。思考が浮かんでも、追いかけず、ただ呼吸に戻る。それだけで十分です。短時間でも意識的に脳をオフにする時間を挟むことで、前頭前野の負荷が軽減され、再び行動に向かいやすい状態が整います。
②睡眠は「量」と「質」の両輪――脳を再起動する仕組み
睡眠は、最も強力な脳の回復手段です。眠っている間、脳の中では余分な老廃物が除去され、感情が整えられ、実行機能が回復する、といったメンテナンスが行われています。このメンテナンスによって脳の疲労がリセットされ、翌朝スッキリと起きることができるのです。睡眠不足の翌日に先延ばしが増えるのは、脳が怠けているのではなく、睡眠の質が悪くて回復できていないから、と言えます。
睡眠の質を上げるためには、寝る直前まで情報を入れたり、判断や仕事をしたりしないことです。脳をしっかりオフモードに切り替えることが大切です。寝る前についスマホを見てしまう、ベッドに入ると明日の仕事が気になって眠れない......という人も多いと思いますが、それでは脳を完全にオフにすることはできません。寝る前は「スマホを見ない・考え事をしない・判断をしない」を心がけましょう。
どうしてもすぐに寝つけないという人は、スマホを見るのではなく、読書がおすすめです。また、考え事をしてしまうという人は、ネガティブなことではなく、「今日一日の中で感謝したいこと」など、気持ちが穏やかになることに意識を向けましょう。脳にストレスがかからず、リラックスできれば脳が徐々にオフモードに切り替わっていきます。
また、寝不足や疲れの蓄積で、日中眠気に襲われてボーっとする、集中できない、という日もたまにはあると思います。そういうときは、短時間だけ仮眠をとる。パワーナップ(積極的仮眠)が効果的です。
ポイントは寝すぎないこと。長時間寝てしまうと夜の睡眠に影響するので、タイマーをセットして仮眠は20分程度にとどめましょう。また、ベッドに横になると深く眠り込みやすいため、椅子に座ったままなど、本格的な睡眠に入りにくい体勢を選ぶことも大切です。
③「回復する休憩」と「疲れる休憩」は別物
休憩についてはすでに触れましたが、重要なので改めて整理しておきます。
たとえば、長めの会議の合間に「5分休憩しましょう」と言われたら、あなたはどうやって過ごしますか? おそらく多くの人が、スマホでSNSを見たり、メールをチェックしたり、ネットニュースに目を通したりといった過ごし方をするのではないでしょうか。
これらの行動は一見休憩しているように思えますが、実際は脳の前頭前野を酷使している状態。休憩と言いつつ、脳が回復するような行動にはなっていません。脳が本当に回復するのは、①判断がいらない、②情報が少ない、③目的がない、この3つが揃った時間です。景色を眺めたり、ただぼんやりしたり、呼吸だけに意識を向けるような時間こそが、「動ける脳」を回復させる休養方法といえます。
これら3つのポイントを意識して休養をとることで、集中が戻り、着手が軽くなり、先延ばしが減る、という変化がはっきりと現れます。







