[上司のNG行動]叱咤激励とパワハラは紙一重
2012年12月21日 公開 2022年12月07日 更新
自分より先に帰る部下は気に入らない
【事例】
Aさんは、自分のパワハラ意識をチェックしています。みなさんも当てはまる意識や行動があればチェックしてみてください。
1 □自分より先に帰る部下は気に入らない
2 □いつだって休日出勤は当たり前だ
3 □残業が少ない部下は評価しない
4 □人の好き嫌いを態度に出す
5 口人の趣味や習慣をバカにする
6 □出身地・出身校などで派閥をつくる
7 □お酒を無理に飲ませる
8 □人に許可なくタバコを吸う
9 □人の都合は考慮しない
10 □部下は自分の道具である
11 □よく八つ当たりをする
12 □部下をにらみつけて威圧する
× 自分の価値観を押し付ける
チェックが付いたからといって、それがイコールでパワハラではありません。ただ、少なくとも意識の危うさはあります。
たとえば、1・2・3は、人間らしい生活の営みを認めない意識や行動です。これは、個人の生活権を侵食することにもなります。具体的には、残業を暗に強要する、休みの日に部下を交えて時々会議を開くなどです。
4・5・6は、人の多様性や個性を否定する意識や行動です。これは、自分の人材像の枠に押し込めることや、自分の人材像の枠に入らない人を狭いモノサシではじくことになります。具体的には、従順でおとなしく働く人だけ評価するなどです。
7・8・9は、人の生き方や来し方を否定する意識や行動です。これは、自分の価値観を押し付けることになります。具体的には、仕事が生活の中心である、仕事こそわが人生である、だからお前もそうしろなどです。
10・11・12は、人の営みや行為を否定する意識や行動です。これは、部下の努力を認めないことにもなります。具体的には、部下が作った企画書を放り投げて返すなどです。
○ 一挙手一投足が影響を与える
上司のいっていること、やっていることを部下はよく見ています。特に自分が意識せずに行っているパワハラなどは、悪しきマネジメントとして部下にも影響を与え、部下が上司になったときに同じことを、その部下にもするようになります。
こうしたマネジメントにおける負の連鎖は、どこかで断ち切らなければなりません。ひとりの努力は、小さなことかもしれませんが、その小さな努力なしには、大きな変革も成し得ません。まずは、一歩でいいのです。
「自分から意識と行動を変えていくことが、部下や後輩たちにも影響を与えるだけでなく、これからの職場風土をつくっていくのだ」という強い自覚をもっていきましょう。
決して萎縮せずに、自分らしく部下とのコミュニケーションをはかりながら、伸び伸びとマネジメントすることです。そうした自然体の姿に、多くの共感が生まれてきます。
中村葉志生
(なかむら・はしお)
株式会社ハリーアンドカンパニー代表取締役杜長
1959年東京生まれ。わが国有数のシンクタンクである〔株〕日本能率協会総合研究所でビジネスエシックス研究センターを立ち上げる。現在は、日本経営学会などに所属し、複数の大学の教壇に立つ。あわせて、企業倫理、コンプライアンス、CSR(企業の社会的責任)、リスクマネジメント、組織風土改革などに関わるコンサルティング活動を展開し、活躍している。対象先は、世界的な製薬会社、食品会社、化学品メーカー、石油元売り会社をはじめ、日本を代表する電子機器メーカー、総合商社、金融機関、エネルギー供給会社、輸送機器メーカー、鉄道会社など。
近著に『等身大で語るコンプライアンス講座』(大学教育出版)、『経営倫理用語辞典』(日本経営倫理学会編・白桃書房)などがある。