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「ディズニー流!」に学ぶ スタッフのモチベーションアップ術

糠谷和弘(スターコンサルティンググループ代表取締役)

2013年07月01日 公開 2024年12月16日 更新

「ディズニー流!」に学ぶ スタッフのモチベーションアップ術

『ディズニー流!みんなを幸せにする「最高のスタッフ」の育て方』より》
☆本記事は、2012年12月4日に掲載したものの再録です。

 モチベーションアップは、社長が率先して行うべき

★サンクスデーは正社員がバイトをもてなす日

ディズニーランドには、1年に1度、営業終了後にキャストを対象としたパーク開放日がありました。「サンクスデー」と呼ばれるこのイベントは、社員がキャスト役となって、パート・アルバイトをもてなします。

この日は、短時間ではありますが、空いているパークを存分に堪能することができます。開放されるのは、パークの一部ですが、アトラクションはもちろん、食事をすることもできます。

ちょっとしたギフトや抽選などもあり、とても楽しいイベントです。キャストは、一般ゲストには味わえない体験をしたことに、大きな喜びと優越感を感じることができるのです。

また、このイベントの副産物は「顧客体験」ができることです。ゲストと同じ体験をすることで、ゲストが「どうしてもらったら嬉しいか」を考えるきっかけになますし、逆に、「改善点」を知るよい機会にもなります。

話はそれますが、私は介護施設で“サービス改善”を行う際、利用者と同じベッドに横になったり、利用者の食堂で一緒に食事するようアドバイスしています。こうした体験を通じて、サービス提供法の間違いをいくつも発見できます。

例えばある施設の女性スタッフは、ベッドに寝ている利用者に対して、上から見下ろすようにして介助していたそうですが、ベッド体験で、それがとても失礼なことに気づき、腰をかがめてケアをするようにしたといいます。

サンクスデー以外にも、TDRのキャストには、さまざまな特典があります。

例えば、完成したばかりの新しいアトラクションに、一般公開前に乗る「プレビユー」というイベントや、入場チケットの割引販売、「キャストショップ」といわれるキャスト専用店でのグッズ割引購入などがありました。

当時は両親の故郷である静岡に遊びに行く際、親戚の子どもにお土産を買っていました。とても喜んでくれるのですが、その都度「いつもディズニーランドに行けるなんてすごい」と羨望のまなざしで見られて、恥ずかしい思いをした記憶があります。

このようにディズニーには、キャストをファンにするプログラムがいくつもあるのです。

★双方に嬉しい、社長主催・社員を祝う誕生会

ディズニーのサンクスデーのように、経営者が社員を招くイベントを実施し、社員満足に取り組んでいる事例を紹介しましょう。

この会社は、接骨院と大規模デイサービスセンターを運営しています。約 60人いる社員は、80%以上がパート従業員です。田んぼの真ん中という条件の悪い立地にもかかわらず、患者、利用者が常にいっぱいの人気施設で、その評判から全国各地の同業者が視察に来ています。

柔道整復師でもあるこの会社の経営トップは、普段は妥協しない施術者の顔ですが、社員思いの経営者としての顔も持っています。

例えば、年末の全社忘年会が近づくと、休みの度にこっそり出かけては、いろいろな景品を買い集め、ビンゴゲームでプレゼントしています。

その他にユニークなのは、社員への感謝の気持ちをこめて開催される「誕生会」です。その月に誕生日を迎える正社員、パート社員を、地元で「美味しい」と評判のお店に招待します。ホストはもちろん社長です。「社員に気を使わせない」というのが、この会のルールです。

誕生日を祝われるのは、何歳になっても嬉しいものです。社員はとても楽しみにしていて、いつもよりオシャレをして集合するそうです。社長も最初は、社員を喜ばせるために始めたそうですが、社長にとっても次のような成果があったそうです。

□職場では見られないスタッフの一面を見ることができた
□会議などでは聞けない現場の生の声を聞けた
□スタッフの隠れた能力を知ることができた

また、参加したスタッフからも「楽しかった」というだけでなく「普段は聞けないことを、質問することができた」「社長の考えがわかった」と、とても好評だそうです。社員満足・ファン化だけでなく、経営者との距離を縮める素晴らしい事例です。

【ポイント】
社員をもてなすイベントを、社長自ら企画する

 

全員参加のイベントで会社が1つに!

 ★一体化のカギは「本気」

TDRのクリッターカントリーに、「ビーバーブラザーズのカヌー探検」というアトラクションがあります。ちょっと乗り場がわかりづらいので、知らない方もいるかもしれません。15人程度が乗れるカヌーにのって、アメリカ河と呼ばれる水路を、ひたすら漕ぐという肉体系のアトラクションです。

乗った方はわかると思いますが、これが結構きつい。全長700mくらいのコースを1周するのですが、ずっと漕ぎ続けますから、腕がだるくなります。小さな子どもが自分の後ろに乗ると大変です。たまに疲れてパドルを止めるので、水しぶきが上がって背中にビシャッとかかったりします。

ここで働くキャストも大変ですね。友人が働いていましたが、みるみるうちに、上腕が太くなり、肌は日焼けして真っ黒になっていました。

ディズニーでは、このカヌーで競争するキャスト向けのイベントが年1回開催されます。開始時間は早朝、パークのオープン前です。カヌーというのは、1人ひとりのテクニックや体力以上に、チームワークが重要なスポーツです。同じタイミングで漕がないと、スピードが出ません。リーダーのかけ声に合わせて、一緒にパドルを動かせるかどうかが、勝負の分かれ目です。

こういうチーム競技は、キャストが一体化するのにはとても効果的です。私は参加できなかったのですが、出場したキャストたちは、終了後、とても距離が縮まったようです。

★半年かけて行われる、リネン王決定戦

兵庫県に社会福祉法人あかねという総合福祉事業者があります。県内に施設を複数展開しており、社会福祉法人としては、大規模な事業者です。

福祉業界では“常識破り”とされるユニークな取り組みを数々していて、業界内だけでなく、他業界からも注目されています。毎年、福祉系以外の大学からも、就職試験に数百人が応募する人気企業でもあります。

この法人が社内で取り組んでいるイベントの1つに「あかねグランプリ」というものがあります。毎年、競技種目が変わり、施設対抗で競います。2011年は「リネン」がテーマでした。介護施設では、ベッドのシーツを交換するのも重要な仕事ですが、その「速さ」「正確さ」「美しさ」を競い「リネン王」を決定するというものです。

競技は半年かけて行われます。各施設から選ばれた職員は、予選、本戦を勝ち抜かなければなりません。決定戦は体育館で行われ、その様子はネットで各施設に配信されます。競技に参加する職員はもちろんですが、応援する職員も本気です。審査結果はその場で発表されず、忘年会で発表されます。

その様子は、社員でなくてもネットでも見ることができます。ご覧になれば、その盛り上がりぶりや、各チームの団結力の強さにびっくりすることと思います。
 http://www.e-akane.com/index.html

さて、こうしたイベントを、社内の一体感やロイヤリティアップにつなげるには、ポイントがあります。

□本気でやる
仕事だけでなく、スポーツから披露宴の余興に至るまで、チームでやるものは何でもそうですが、本気でやるところに一体化のカギがあります。仕掛ける側としても「1等には食事券プレゼント」のように、何とか各チームを本気にさせるための工夫をしましょう。

□ベテランから若手までを巻き込む
若手だけで盛り上がっていたり、逆にベテラン社員だけで一生懸命になっていると、次第に世代間の溝ができてしまいます。

□ユニフォームをつくる(かなり重要です)
スポーツなどのユニフォームには「敵」と「味方」を分けるという役割がありますが、さらにいえば「味方」であることを意識する効果があります。実際に、同じ服を着ることで「連帯感」の促進に成功した事例が多数あります。

□表彰式を演出する
皆で勝利を喜ぶ場を演出すると、負けたチームは「次こそは」という気持ちになるので、次につながります。

イベント自体は、スポーツ大会でも何でもよいでしょう。とにかく、会社規模が大きくなったら、一生懸命に汗を流せるイベントを企画してみましょう。

 【ポイント】
社内イベントは、一体感を高め、全力で取り組めるものを考える

 

糠谷和弘

(ぬかや・かずひろ)
 
〔株〕スターコンサルティンググループ代表取締役、経営コンサルタント

1971年生まれ、東京都出身。大学生時代、ディズニーランドのキャストとして「日本一の顧客サービス」を経験。大学卒業後は旅行大手の〔株〕ジェイティービーに入社し、海外旅行専門店で農業、小売、環境、電力、高齢者福祉をテーマに、企業・法人・自治体の海外視察を企画・同行。その後、コンサルティング会社の〔株〕船井総合研究所に入社。介護保険施行当初から介護サービスに特化したチームを自ら立ち上げ、幅広く経営指導にあたってきた。現在は、活動の範囲を広げるために介護に特化したコンサルティング会社を設立。高齢者住宅の立ち上げから組織マネジメントシステムの導入まで、さまざまなテーマで活動している。『ガイアの夜明け』(テレビ東京)などのテレビ出演や業界紙への執筆多数。コンサルティング実績300社以上。年間講演回数40回以上。 

 

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