“無宗教葬”が増えている理由 自由な葬儀に潜む課題と確認すべきこと
2025年09月19日 公開
近年、檀家制度の衰退に伴い、特定の宗教儀式にとらわれない「無宗教葬」が広がりつつあります。自由に葬儀を執り行える一方で、進行方法が定まっていないため、遺族や関係者が迷いやすいという課題もあります。
30年以上にわたり葬儀の現場に携わってきた株式会社ディライト代表・高橋亮さんは、著書『後悔しない葬儀とお墓選び』で無宗教葬のメリットとデメリットを解説しています。本稿では、その一節をご紹介します。
※本稿は、高橋亮著『後悔しない葬儀とお墓選び』より内容を一部抜粋・編集したものです
無宗教葬という選択肢
日本では古くから、家族が代々特定の寺院と関係を持ち、葬儀や供養を任せる「檀家制度」が広く根付いていました。寺院は檀家の供養を担い、檀家は経済的な支援を通じて寺院を維持するシステムです。しかし、近年では核家族化や都市化の進行に伴い、先祖代々の寺院とのつながりが希薄になり、「檀家離れ」が加速しています。
現代では、檀家制度の衰退と共に、宗教色のない生活を送る人々が増加し、特定の宗教儀式にとらわれない「無宗教葬」が普及し始めています。
無宗教葬は「自由葬」とも呼ばれ、宗教的な形式にとらわれずに、式の流れや内容を遺族が自由に考えます。故人の遺思や家族の意向に沿って、自分たちらしい葬儀ができるメリットがあります。
ただし、無宗教葬は自由度が高い反面、内容や進行方法が定まっていないため、関係者に迷いが生じやすい形式でもあります。具体的に式で何をするか考えるのに苦労したり、読経や焼香などが行われないことで参列者が戸惑ったりする場面がよく見られます。
そのため、仏式の葬儀での流れにならって行われることも多くあります。「読経」部分を黙祷・献奏に変えたり、「焼香」の代わりに献花を行ったりするなど、宗教色の強い儀式のみを取り除いて実施する場合も、無宗教葬となります。無宗教葬を行う場合、四十九日や年忌法要などの行事を行うか否か検討する必要があります。
無宗教葬をする前に注意すべき3つのこと
無宗教葬は、旧来の葬儀の形ではないことから、実施する場合は、各方面に問題がないか、慎重に確認が必要です。ここでは事前に確認しておくべきことを3つご説明します。
① 菩提寺との関係性
直葬や一日葬の場合と同様に、無宗教葬を選択する際には、故人や家族の菩提寺に確認する必要があります。菩提寺がある場合、無宗教葬では納骨を断られたり、追加で読経などの供養が必要になったりする場合があります。
② 納骨場所の確認
特定の菩提寺がない場合でも、無宗教葬の場合は基本的にお寺のお墓に入ることができません。そのため、宗教や宗派を問わず納骨できる霊園や納骨堂などを確保する必要があります。
③ 親族の同意
無宗教葬は比較的新しい葬儀の形式であり、現在も一般的なものとは言えません。そのため、伝統的な儀式や宗教的慣習を重視する親族がいる場合、受け入れがたく思われる可能性があります。円滑に進めるためには、故人の遺志や葬儀の意義について十分に話し合い、親族の理解を得ることが重要です。
親族に反対されたものの、どうしても無宗教葬を希望する場合、まず家族葬などの小規模な仏式の葬儀を執り行い、後日改めてお別れの会を開くといった方法も考えられます。最終的な判断は喪主が行うものですが、その決定が事後の親族との関係性に大きく影響を及ぼす可能性があるため、親族で相談し、慎重に検討しましょう。
宗教・宗派がわからない/家族で混在している場合の対処法

故人の宗教や宗派に沿った葬儀を実施しようと思っても、長年離れて暮らしていた場合などは、詳しいことがわからないことがあるかもしれません。宗教・宗派によって葬儀の作法が異なるため、できる限り確認する必要があります。
まずは親族に確認してみるとよいでしょう。特に年配の親族からは昔からのお寺とのお付き合いなど、詳しい情報を聞ける可能性があります。もし菩提寺がわかっていて宗派だけが不明な場合は、菩提寺に直接確認します。
他にも、仏壇内に祀られている本尊(仏像や掛け軸)や、脇侍(本尊の両脇に祀られる像)から宗派を判断できる場合があります。天台宗であれば本尊は阿弥陀如来や釈迦如来の坐像、真言宗であれば本尊は大日如来など、それぞれに特徴があります。
また、宗派によって戒名の構成や特徴も異なります。位牌に記された戒名の形式や内容から宗派がわかる場合もあるため、先祖の位牌がある場合は確認してみるとよいでしょう。
もし家族内で異なる宗教・宗派が混在している場合、葬儀は故人が信仰していたものを尊重して執り行うのが一般的です。夫婦が異なる宗教・宗派を信仰している場合でも、基本的には故人に合わせた葬儀を行います。
そのほか、葬儀は無宗教葬で行い、供養を故人が信仰する宗教・宗派の形とする場合や、葬儀を前半と後半で区切って複数の宗教・宗派に対応するケースもあります。
宗教的背景がある場合もない場合も、故人を悼む気持ちを共有し、それぞれの信仰を尊重しながら葬儀を進めることが大切です。家族間で葬儀の形式について意見が分かれた場合は、宗教者や葬儀社に相談して中立的な立場から助言を得ることも有効です。
【関連情報】
『株式会社ディライト』https://delight.co.jp
『葬儀の口コミ』https://soogi.jp
『お墓の口コミ』https://oohaka.jp




