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殺処分ゼロが遠い日本 パピーミル、多頭飼育崩壊...その原因は“飼い主”にあった

中村 仁 (原案), 天城理伊 (漫画)

2025年09月22日 公開

殺処分ゼロが遠い日本 パピーミル、多頭飼育崩壊...その原因は“飼い主”にあった

日本のペットを取り巻く環境には、多くの深刻な問題があります。ブリーダーやペットオークション、ペットショップ、さらには心ない飼い主の存在によって、多くの犬や猫が苦しめられているのが現状です。令和4年から5年にかけての調査では、動物愛護センターで把握されているだけでも、1日に約33頭が殺処分されています。しかも、愛護センターに引き取ってもらえない犬猫は統計に含まれておらず、実際の数はさらに多いと考えられます。

原案・中村仁さん、漫画・天城理伊さんによる『ファミリールール~笑顔を守る命の約束~』では、こうしたペット業界に蔓延する闇を漫画で分かりやすく描いています。本稿では、その一部をご紹介します。

※本稿は『ファミリールール~笑顔を守る命の約束~』(辰巳出版)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

日本では動物はモノと同じ扱い

ペット業界の裏側

ペット業界の裏側

殺処分とは、動物愛護センターや保健所に収容された犬や猫のうち、譲渡先が見つからず、病気や攻撃性などの理由で新たな飼い主が決まらない場合に行われます。処分の多くは「ドリームボックス」と呼ばれる機械により、炭酸ガスを用いて実施されます(睡眠薬を用いる場合もあります)。

民間団体による保護活動や譲渡推進の取り組みにより、その数は減少してきましたが、現在もなお年間で約1万頭が殺処分されています。

さらに、動物愛護管理法の改正によって、行政が民間からの犬猫の引き取りを拒否できるようになりました。その結果、飼い主に捨てられた犬猫が餓死や病死するケースが増え、統計には表れない命が存在していると考えられます。

日本のペット産業には、こうした殺処分以外にも深刻な問題が隠されています。繁殖を繰り返させる「パピーミル」、競りにかけられるペットオークション、需要のない動物を引き取る「引き取り屋」などがその一例です。

さらに、飼い主側のモラル不足も大きな課題です。「かわいいから」といった安易な理由でペットを迎え入れ、世話の大変さや費用の負担を理由に飼育を放棄するケースが後を絶ちません。

ペット業界の裏側

ペット業界の裏側

ペット愛護先進国とされるオーストリアでは、保護施設からペットを迎えるのが一般的であり、動物を殺処分する施設は存在しません。スイスでも動物保護やペットに関する税制度など、ペットファーストの仕組みが多く整えられています。さらにドイツでは、動物を飼うために免許が必要とされています。

日本が真のペット愛護先進国となるためには、まず飼い主一人ひとりの意識が変わることが欠かせません。ペットを迎える前に、本当にきちんと飼えるかどうかを慎重に判断し、「飼わない」という選択も大切です。ペットショップで安易に購入するのではなく、動物愛護センターや信頼できるブリーダー、動物保護団体から迎えることを考えましょう。

ファミリールール

ファミリールール

「ファミリールール」は、本書原案の中村仁さんを筆頭に、動物愛護先進国で実施されている「ペット認可制」の導入を提案し、活動を続けているプロジェクトです。こうした仕組みを社会に根付かせることも、日本がペット愛護先進国へと近づくための大きな一歩となります。

命に対して責任感と正しい知識を持ち、ペットとともに幸せな生活を築くことが、社会全体のペット愛護の基盤となります。

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