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懲りない媚中閣僚の”前科”を暴く

潮匡人(国家基本問題研究所評議員)

2010年11月08日 公開 2022年08月17日 更新

懲りない媚中閣僚の”前科”を暴く

“支社”に責任転嫁する最低最悪の“本社”

 ついに反日内閣が誕生した。もちろん菅改造内閣のことである。リベラル左派であり、親中&親朝姿勢が色濃い。いや、端的に媚中と断じてよかろう。もし、媚中でないなら、弱腰を通り越した、腰抜けである。

 9月24日、政府は、尖閣諸島付近で起きた中国漁船の衝突事件で逮捕・拘置していた中国人船長を処分保留のまま釈放することを決めた。同日の記者会見で、那覇地検の鈴木亨次席検事は、「わが国の国民への影響や日中関係を考慮すると、これ以上身柄を拘束して捜査を継続することは相当でないと判断した」と無表情で釈放理由を語った。

 この日、菅直人首相と前原誠司外相は、二人ともニューヨークで開かれた国連総会に出席中で不在。つまり、那覇地検ないし検察庁が、外交的配慮に基づく判断を下したわけである。同日午前の閣議後、仙谷由人官房長官は早くも一部閣僚に釈放をにおわせていた。地検の発表前、仙谷官房長官は、検察庁への指揮権をもつ柳田稔法相と官邸で会談していた。仙谷官房長官が「前面に」出た「歪んだ政治主導」による釈放であろう(9月25日付『産経新聞』朝刊)。

 ところが、仙谷官房長官は同日午後の記者会見で、こうした見方を排し、「地検独自の判断だ。それを了とする」と繰り返した。柳田法相も会見で、「指揮権を行使した事実はない」と強調した。『産経』が「誰が言葉通りに受け取るだろうか」(同前)と疑義を呈したのも当然である。その後、訪米中の菅総理までが「検察の判断」と会見した。

 あえて「言葉通りに受け取る」なら、内閣として那覇地検に判断を一任し、自らの責任を放棄したことになろう。現場を預かる支社(地検)に責任転嫁するなど、最低最悪の本社(内閣)である。次席検事ら検察官はもとより、逮捕した海上保安官の本音は聞くまでもあるまい。現場が命懸けで頑張っても、本社の役員会(内閣)が、ライバル会社(中国)の不当な圧力に屈して台無しにするのだから。

 事実この日、CNNテレビは「中国の圧力は日本にとって大きかった」と報道。香港ATVも夜のニュースで「現時点では中国外交の勝利といえそうです」とコメントした。

 翌25日早朝、中国人船長は中国政府のチャーター機で帰国。報道陣に「日本が私を拘束したことは違法行為」と語った。船長の容疑は公務執行妨害。もし「拘束が違法」なら、日本側の公務も違法となってしまう。言いたい放題ではないか。しかも中国当局はこのとき、日本の取材陣にだけ記者証を配布しなかった。やりたい放題である。

 当事者や現場当局だけではない。中国外交部(外務省)は、釈放後にも「強烈な抗議」を表明。「日本は必ず謝罪し、賠償しなければならない」との「声明」を公式サイトに掲載した。自嘲を込めていえば、日本政府と違い、首尾一貫した組織的対応と評しえよう。

 しかも菅内閣は本稿の校了段階である9月29日時点において、衝突に至る場面を撮影したビデオを公開していない。たしかに刑事訴訟法は「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない」と定める(47条)。「訴訟に関する書類及び押収物」は情報公開法の適用も受けない(53条の2)。ゆえに公判が開廷されないかぎり、永久に公開されないという理由だ。

 しかし、以上の制度趣旨は、訴訟関係人の名誉と公序良俗を守り、裁判に対する不当な影響を防止することにある(昭和28〔1953〕年7月18日最高裁判決)。今回はむしろ、わが海保や検察の名誉を守るためにも公開すべきではないのか。刑訴法は「何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる」(53条)とも定める。もし、政治主導の幕引きで事件は終結したというなら、逆にビデオを公開すべきだろう。

 公判前非公開を定めた刑訴法47条も、「但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない」と規定する。過去(直接の根拠となる事案ではないが)法務省は、「重要な争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど、その証明に欠くことができない場合」等の要件を満たす場合は、「開示するのが相当」との指針を示している(平成16〔2004〕年5月31日付)。

 撮影されたビデオは右の要件を満たす。公開することは国益に資する。明らかに「公益上の必要」がある。非公開を貫くことで益するのは中国であって、日本ではない。いうまでもなく、菅改造内閣が守るべき最大の公益は、日本の国益である。

 仮に今後も非公開の方針を貫くなら、媚中を通り越した国賊内閣と評しえよう。「賊」とは「そこなう、やぶる、わる」(白川静『常用字解』平凡社)。損ない、傷つけ、台無しにする。それが「賊う」の意味である。国益を損ねるのは、字句どおり「国賊」の所業である。

北朝鮮と懇意にする国家公安委員長!

 仙谷官房長官は、なぜ、保釈による幕引きを図ろうとしたのか。「歪んだ政治主導」の背景に、仙谷氏自身の左翼思想があったとすれば、事は重大である。

 仙谷代議士は日本社会党公認候補として出馬、初当選を果たした。以下、指摘するように、菅改造内閣には仙谷氏をはじめ、旧日本社会党出身者が四名も居並ぶ。仙谷代議士も、外国人参政権付与を推進する「在日韓国人をはじめとする永住外国人住民の法的地位向上を推進する議員連盟」に属す。今年7月7日には、日韓請求権協定で個人請求権が消滅した経緯について、「法律的に正当性があるといって、それだけでいいのか、物事が済むのか」と会見した。日韓併合百周年に配慮し、防衛白書の閣議了承を先送りした官房長官でもある。かつて選挙公報で、「『常時駐留なき安保』をも選択肢の一つとした平和の配当を追求」とも公約した。

 公式サイトが掲げる「政治理念」の筆頭は、「地球市民として世界の人と仲良くしよう」。だが、地球市民の前に、日本国民ではないのか。官房長官として、国益を守るのが仕事ではないのか。中国人船長を保釈しても、抗議を受け、謝罪と賠償を迫られるのだ。氏はいつまで空疎な政治理念を掲げるつもりなのか。

 問題は官房長官一人ではない。船長釈放の共同謀議に参加した柳田法相も“A級戦犯”と評しえよう。

 リベラル左派が居並ぶ菅改造内閣では、労組出身の閣僚が4名と目立つ。旧民社党出身の柳田法相もその一人だ。公式サイトが掲げる「ヤルキダくん日記」には、労組集会への参加や挨拶回りの記録が並ぶ。昔は、集団的自衛権行使や憲法改正にも言及していたが、近年、そうした言動を聞かない。子ども手当法案を強行採決した参議院厚生労働委員長でもあった。

 東大工学部卒業の柳田氏がなぜ、法務大臣なのか。総理の任命意図すらわからない。さらに不可解なのは、柳田法相が拉致問題担当相を兼務したことだ。仙谷官房長官は初閣議後の記者会見で、「彼はいままでこの問題に関心をもって、それなりの人脈をもっている」と説明した。

 ほんとうにそうか。柳田議員は、国会の「北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会」の委員だった。家族会の増元照明事務局長は何度も委員会を傍聴したが、柳田氏が委員を務めている事実を知らなかったそうだ。面識もないという。同じく飯塚繁雄代表も、「拉致議連の人も知らないと言っていた。外務大臣も代わり、今まで継続していたものが切れた感じがする」と落胆を隠さない(時事通信)。

 菅総理は、拉致被害者の家族が「見たことも、聞いたこともない」委員を担当大臣に起用した。それを女房役の官房長官が先のとおり強弁し、擁護する。法相を兼務する以上、拉致問題に割ける時間的余裕はあるまい。少なくとも、拉致に関するかぎり、「ヤルキダくん」のやる気はみえない。

 最大の悲劇は、国家公安委員長(内閣府特命担当大臣)に就任した岡崎トミ子参議院議員である。『産経』紙上の連載コラムでも指弾したが(9月23日付)、岡崎議員には、わが国旗の中央に大きな「×印」をつけた看板が並んだ在ソウル大使館前での反日デモに国会議員として参加。「日本は謝罪しろ」などのシュプレヒコールに合わせて拳を振り上げた“前科”がある。

 かつて朝鮮学校理事長(朝鮮籍)からの違法献金が発覚した際は、「日ごろから懇意にしていた」と釈明した。それがいまや、国家公安委員長。菅総理は、法相に拉致問題担当を兼務させ、北朝鮮と日ごろから懇意にしていた人物を閣僚に任命した。現内閣には、拉致問題を解決する能力もなければ、意志もない。

 岡崎議員も日本社会党出身。女性局長も務めた看板マドンナ議員であった。以前から選挙公報で、「選択的夫婦別姓」や「防衛予算の削減」を主張している。いまも公式サイトで、「すべての基本は平和。平和憲法の理念を世界のルールに」「武力ではなく、ルールと国際協調によって平和と秩序をつくり・守る」などと訴える。

 もちろん国旗国歌法案には反対。外国人参政権は推進派で前記議連に属す。そのほか、「歴史リスクを乗り越える研究会」呼びかけ人。「人権政策推進議連」呼びかけ人。小泉首相の靖国参拝に反対した「日本の歴史リスクを乗り越える研究会」や「リベラルの会」等々、文字どおりリベラルな議連をハシゴする。

 ちなみに「リベラルの会」の基本理念は、「憲法第9条の精神を世界に広め、活かしていきます。自衛隊は専守防衛に徹し、一部の国を敵国扱いすることとなる集団的自衛権は行使せず、国連を中心とした集団的安全保障の確立を目指します」。官邸の寺田学首相補佐官もメンバーである。

 文部科学大臣に就任した高木義明代議士も、労組出身の旧民社系(連合組織内議員懇談会世話人)。ご多分に漏れず、外国人参政権の推進派で人権政策推進議連(副会長)や日朝友好議連に属すリベラル左派である。以前から「地球の平和と環境の保持」を主張する。公式サイトで、米印原子力協定に関し「核拡散防止に逆行する本協定を断じて容認できない」との立場も明かす。日印協定を進める外務省とも、同協定締結に理解を示した岡田克也前外相とも立場を異にするが、これで大丈夫なのだろうか。

「ミスター年金」と呼ばれた前任者に代わり、厚生労働大臣となった細川律夫代議士も、旧社会党出身。社民党を経て、民主党に入った筋金入りの政党遍歴である。やはり、日朝友好議連に属し、民主党の「日本の近現代史調査会」事務局長も務めたリベラル派だ。労組との関係も深い。以前から選挙公報で、「軍事費を減らし」「世界に誇る平和憲法を柱に自衛隊の海外派兵をやめて」云々と訴えてきた。

 昨年の終戦記念日にも、自身の公式サイトで「私たちは歴史の経験に学び、二度と悲惨な戦争を繰り返さないよう、平和な国家と世界を築いていかなければならない、と改めて感じている」と明かした。いまも「差別等の人権侵害をすみやかに救済するための機関を設置します」と訴える。

 当然のごとく、外国人参政権を推進する。「構想日本」のアンケートでは、「日本国籍のない在日外国人に、地方選挙(地方議会議員および自治体首長)の『選挙権』を与えることについてどう思いますか?」との質問に、「永住者(特別+一般)には与えてもよい」と回答している。

 同様に「外国人の(地方)参政権問題が政策課題となる仕組み上の背景には、『国籍単一主義』と『血統主義』の組み合わせがあります。国籍法が定める『国籍単一主義』についてどう思いますか?」との質問には、「すべてのケースで二重国籍を認めてよい」。さらに「国籍法が定める『血統主義』についてどう思いますか?」との質問にも、「『出生地主義』に変えるべき」と回答している。細川大臣らの主張が実現すれば、今後、特別永住者の在日韓国・朝鮮人や一般永住者の中国人が、参政権を手にするばかりか、今後、日本の国籍を続々と取得することになる。

悲しいかな、“前科”持ちの総理を抱く日本

 経済産業大臣に就いた大畠章宏代議士も、元労組専従役員で社会党出身。前記「歴史リスクを乗り越える研究会」の呼びかけ人でもある。ちなみに9月25日現在も、公式サイトは「現在リニューアル中です」。きっと、忙しいのだろう。

 蛇足ながら、『産経』紙上で私に指弾されることを避けたのか、NHKが中継した官邸での就任会見では国旗に敬礼したが、経産省の会見場に掲揚された国旗には欠礼した。加えて、片山善博総務相と鹿野道彦農水相も霞が関では欠礼した(前記拙稿)。

 マスコミは注目していないが、環境相の松本龍代議士も筋金入りのリベラル左派である。人権擁護法案を推進する文字どおりの「人権派」でもある。部落解放同盟副委員長を務め、選挙公約は「部落解放基本法の成立」。環境相内定を速報したNHKニュースは、「豊富な政治経験に加え、とりわけ人権問題や部落解放運動に精通していることが評価されました」と報じた。「人権問題や部落解放運動に精通していることが」環境大臣の資質と、どう関係するのか、訳がわからないが、きっと菅総理やNHKには理解できるのであろう。

 もちろん、外国人参政権の推進派で、日朝国交正常化議連にも属す。ちなみに、この議連には、菅総理に加え、国民新党から入閣中の自見庄三郎大臣も名を連ねる。

 経済財政担当となった海江田万里大臣も、以上の例外ではない。日朝友好議連に属す親北朝鮮派。1997年には、金正日の国防委員長推戴を記念する祝賀宴に鳩山由紀夫前首相らと参加。2000年にも、朝鮮総連の招請で訪朝した“前科二犯”である。

 その他割愛するが、悲しいかな、菅総理自身が社民連出身の「市民派」を任じるリベラル陣営に属す。新人議員時代、拉致実行犯(辛光洙を含む政治犯釈放の要望書に署名した“前科”もある。鳩山内閣での就任会見では、国旗に欠礼する無様な姿を晒した。総理になるまで、防衛大臣が文民であることも、総理大臣が内閣を代表し自衛隊の最高指揮監督権をもつ事実すら知らなかった御仁である。自ら任命した閣僚同様、国益を擁護する姿勢は微塵もみえない。

 旧日本社会党と労働組合の出身議員が居並ぶ菅改造内閣。『産経』拙稿が「必ず、不実の正体を現す」と断じた翌日、案の定、政府は中国人船長を釈放。早くも、媚中、親北リベラル左派の正体を現した。新政権の今後には、何らの希望もみえない。覆水盆に返らず。失われた国益は計り知れない。

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