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やなせたかし「僕はもっと若い頃に世に出たかった。ただ…」

2013年02月18日 公開

やなせたかし(漫画家)

※本稿は、やなせたかし著『何のために生まれてきたの? 希望のありか』より一部抜粋・編集したものです。

 

前向きに考えよう

現在と未来しかないの。そうすると、現在とその未来をなるべく楽しく、なるべく面白く、生きたほうがいいんです。過去のことを、いくら考えてもしょうがない。

――アンパンマンの絵本に、連載のメルヘン、それからアンパンマンの映画とフル回転。毎日忙しく仕事をこなせるというのは、それだけお元気だということですよね。

僕は93歳なんですが、目が悪くなり、耳が悪くなり、心臓も悪くなりで、もう「引退したい」と言ったんです。けれども仲間が許してくれない。

そして東日本に震災が起こって、引退だなんて甘いことは言っていられなくなったんですよね。それで思いとどまって、少し先延ばしにしたんですけれど。

何しろ目がよく見えないので「絵が描けない」と言うと、編集者は「わかりました。それでは月末までに5枚お願いします」と言って、全然、僕の話を聞いていない。で、相変わらず仕事を頼みに来るんですよ。ほんと、困ったものなんですけど。

僕はがんはやっているし、こっち側(左側)の腎臓は取ってしまってないんです。それからすい臓も、すい炎というのをやって上から3分の1を切り取っている。胆のうもない。この間は腸閉塞をやって、腸を45センチも切りました。心臓にはペースメーカーも入っていて、だからもうボロボロですよ。

―― よく「一病息災」と言われますが。

一病ならいいけど、僕は一三病ぐらいあるんだよ。病気だらけ。それだけの病気を持っていると、自分と向き合って暮らしていかないとね。

生きている間はなるべく元気に、楽しく暮らしたいと思っているわけ。悩んでいてもしょうがないのでね。だけど、そのために、よく誤解をされるんだよね、「やなせさんは元気だ」って。元気じゃないんだよ、ほんとは。

なるべく僕は、物事を前向きに考えるようにしているの。倒れるんなら、前のめりに倒れようと思っているくらいでね。同じ倒れるんでも、そういうふうに考える。

病院へ行ったら、きれいなナースさんはいるかなあ……とまず探して、あの人ならいいなあとか、そういうふうに思えば、病院へ行くのも楽しい。まあ現実は、そういうナースさんにばかり当たるとは限らないけど。

物事は後ろ向きに、いくら考えてもしょうがない。というか、そういうふうに思うようにしているわけ。嫌なことは、考えないようにしているの。考えたってムダですからね。やっぱり悪いほうへ悪いほうへ、考えてしまいがちでしょ。だから、無理に考えないようにするんだ。すると、なんらかの状況は変わってくるもんですよ。

血圧が高いとか、不整脈があると、何かいろいろなことを考えちゃう。夜寝て、明日の朝、目が覚めなかったらどうしようかとか。つい悪いほうへとね。

だからあえて、考えないようにしているの。

 

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著者紹介

やなせたかし(Takashi Yanase)

漫画家、詩人

1919(大正8)年2月6日生まれ。出身は高知県香美市。東京高等工芸学校図案科(現・千葉大学工学部デザイン科)卒業後、製薬会社の宣伝部に入社。1941(昭和16)年、野戦重砲兵として日中戦争に出兵。終戦後、三越の宣伝部デザイナーを経て、独立。漫画家の肩書きを掲げるが、舞台美術や放送作家、演出家、作詞家、デザイナー、編集者など多分野で活躍する。1973年、代表作である『あんぱんまん』の絵本を出版。シリーズ化され、1988年、テレビでのアニメ放映が始まったのを機に大ブレイクし、現在に至る。
『詩とメルヘン』の編集長を長年務め(1973-2003年)、現在は季刊雑誌『詩とファンタジー』の責任編集を手がける。日本漫画家協会理事長を、2000年5月―2012年6月まで務めた。

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