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社会

安倍晋三氏と「ともに闘う」日本 - 日本精神の復活

日下公人(評論家/日本財団特別顧問)

2013年02月15日 公開 2022年10月13日 更新

『日本精神の復活』より》
写真:
福田一郎(トップページ)海老名進(文中)

「ブッシュ大統領を裁判に」

日本は平和ボケだと言われるが、ありがたいことに「目を覚ませ」とばかりに日本の領土や資産を掠め取ろうとする国が現れてきた。この現在を予見して国防に関する備えを進めた政治家は、安倍晋三氏ただ一人である。

安倍晋三氏の外交感覚の鋭さを知ったのは、私が働いていた東京財団が主催する講演会に氏を招いたときのことである。

2003年のイラク戦争勃発後、サダム・フセイン元大統領が拘束されてしばらく経った時期で、首相になる前の安倍氏が、公開の場で「アメリカの正義」に異を唱えた。

「大量破壊兵器があると言ってアメリカは戦争を始めましたが、そんなものはどこにもありませんでした。だからブッシュという人は、いわれなき戦争を仕掛けた戦犯ですよね。国際司法裁判所はブッシュ大統領を呼んで裁判にかけ、有罪か無罪かを問わなければいけないと思うのですが、多分実現はしないでしょうね、アハハ」

大勢の観客を前に、正々堂々と正論を言える政治家がわが国にも現れた、と私は思った。だが安倍氏以外の政治家から、そうした正論は聞こえてこない。

 

国連と世界の改善案を提案して信を問う

また、私は別の東京財団主催の講演会で、こんな話をした。

「日本が国連常任理事国に立候補するといって、世界中に一票を投じてくれと奔走しているが、まったく意味がない。常任理事国になったら今の国連をこう改革する、日本が常任理事国入りしたら世界をこう変えるというビジョンがないではないか。たんに一票ください、とへりくだってアフリカや南米を駆け回って票を入れてもらったポストに、何の意味がある。それで忙しがっている外務省は何事だ」

日本は国連の改善案を提案して信を問うべきで、どうせ否決されるだろうが、それでよい。否決される提案を出すのは恥だ、という外務省の考えが浅はかで、サラリーマン以下である。国家のために外交をしているのだから、日本にとってプラスであれば、何度否決されても出し続けるという気概でやらなければならない。それでも否決されるなら、もうこんな国連に期待はできないといって、東京を本部にした新しい東京国連をつくると提案したらどうか。192ある国連加盟国・地域のうち、150カ国ぐらいはついてくるだろう。

そんな話をして、皆がシーンとしていると突然、最前列に座っていた安倍氏が「アメリカもついてくる」と発言したので、一同は仰天した。自民党の幹事長代理のときで、安倍氏の大胆さは本物である。

 

悪意あるマスコミにどう立ち向かうか

「国難来る」のいまこそ、安倍氏の出番である。晴れて自民党総裁に再選されたのは時代の必然というよりは、日本国民の賢明さの表れである。

2012年9月、『約束の日 安倍晋三試論』(小川榮太郎著、幻冬舎)が出版され、ベストセラーになった。日本人がどれほど安倍氏を求めているか、反対に『朝日新聞』をはじめとするマスコミがどれほど血眼になって「安倍叩き」をしたかがよく分かる本である。朝日新聞社の幹部は「安倍の葬式はうちで出す」とまで言い放ったというが、世界最高の日本の庶民は安倍政権を正当に評価し、再び首相となった安倍氏に期待している。同書が売れたのは、その証拠である。

安倍首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、真正面から抵抗勢力の官僚、族議員、マスコミと対峙した。そして「一内閣一仕事」と呼ばれるところ、改正教育基本法と関連3法、防衛庁設置法等改正、日本国憲法の改正手続きに関する法律(国民投票法)など、国家の土台や安全保障に関する重要法案を10以上成立させている。

だが安倍政権の業績は正確に伝えられず、自民党は2007年の参議院選挙で敗北を喫してしまう。

この本の小川榮太郎という著者は文藝評論や音楽評論が専門で、政治とは遠い世界にいる。だから安倍晋三という人物や「戦後レジームからの脱却」というスローガンに込めた政権の真意に迫れたのだろう。物知り顔の政治記者が政治を正しく捉えていると考えるのは大きな誤りで、政治学より小説や音楽を学んだほうが物事の本質を見抜くことがよくある。経済学の専門家が実体経済の何たるかを知らないのと同じである。

前回、首相を辞職されたとき、多くの人は「参議院選挙で負けたくらいのことは気にするな」と思った。安倍氏は言い訳をしなかったが、潰瘍性大腸炎という難病を患っており、当時はよく効く海外の薬に厚労省の認可がなかなか出ず、辛い闘病だったという。いまは新薬(アサコール錠、ゼリア新薬工業)が認可されているので、症状を抑えられるらしい。

一度退陣した首相が政権に返り咲いた例は戦後ないが、必要があれば国民は何度でもその人を望む。それも日本が「戦後」から脱却しつつある、ということの証明である。辞めるにしても、たとえば入院中に、臨時の首相代理を立てるという方法もあった。

ただし、それはそれで新聞は「職務放棄」と書き立てたと思う。「国会の代表質問や党首討論に臨まなければならない局面でピンチヒッターとは何事だ。男らしくない」と喜び勇んで書く。そういう悪意あるマスコミにどう立ち向かうか、周囲に対策と知恵を付ける人がいなかったのが不幸といえば不幸かもしれない。

 

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