情報があふれかえる現代。どれを参考にするかが、重要なポイントとなる。「本当に価値のある情報」はどのように見分ければよいのだろうか。あの「スイカゲーム」を開発した連続起業家・程涛氏の著書より、「発想の種」に気づくためのコツを解説する。
※本稿は、程涛著『道具としてのアイデア』(日経BP)より一部抜粋・編集したものです。
情報が多すぎて何を信じていいか、わからない
インターネットで検索すれば、どんなテーマでも膨大な情報が瞬時に手に入り、専門家を名乗る人の解説動画も溢れ、SNSからは毎日のように新しいノウハウや成功事例が流れてきます。
情報過多の中、こんな疑問を抱き、迷ったことはありませんか。
「どの情報が正しいのか?」
「自分に活用できるのはどれか?」
「本当に信頼できる情報はどこにあるのか?」
私も起業家として、そして現在ヘルスケア事業を手がける中で、「本当に価値のある情報をどう見極め、どう活用するか」という課題に何度も直面してきました。
特にヘルスケア領域では、間違った情報を基に判断すると、それが直接的に人の健康に影響を与えかねません。情報の質を担保することに責任を負う必要があります。
「5つの力」の最後の力として取り上げる「情報収集分析力」は、情報過多の現代を生きる上で欠かせない道具です。
そして、ここまで解説してきた「実現力」「発想力」「回復力」「チーム力」のすべてに深く関連し、影響を及ぼします。どの道具を使う場面でも、何らかの情報を基に判断し、行動しているからです。具体的には、このような場面で情報を活用しています。
実現力を発揮するとき:成功事例や失敗事例を分析し、差別化のヒントを得る
発想力を働かせるとき:多様な視点からのインスピレーションが欠かせない
回復力が必要なとき:専門家の知見や過去の類似ケースからの学びが突破口になる
チーム力を高めるとき:経験や知識を結集する情報共有の仕組みが重要
つまり、情報収集分析力は、他の4つの力を支える基盤のような存在なのです。
他社の失敗から学ぶ「100億円の教科書」
私が「情報収集分析力」の重要性を痛感したのは、ヘルスケア事業に参入する際の調査のタイミングでした。
同じ領域で先行していたとあるベンチャー企業(以下、A社)が、約100億円もの資金調達を行いながら、期待された成果を上げることができずにいたのです。
競合が苦戦しているなら、自分たちにはチャンスだ、と。シンプルにそう考えることもできたかもしれません。しかし、「停滞の理由」を分析することから始めました。
私たちはさっそくA社のアプリをダウンロードし、全員で実際に体験してみました。
その機能は非常に充実していて、健康状態の記録、AIによるアドバイス、商品購入できるモール機能、法人向けサービス、体重計との連動......。私たちが「スマートバスマット」の企画開発とともに初期段階で構想していた機能がほぼすべて含まれていたのです。
しかし、アプリは使い勝手が悪く、複雑。おそらく事業が行き詰まるたびに新機能を追加し、フォーカスするポイントが曖昧になっていったからでしょう。そして、アプリのダウンロード数が伸びないことに悩んだA社の経営陣は、マーケティングと広報に多くの予算を費やすようになっていったのです。
次に、私は弁理士に依頼してA社が取得している特許を調査しました。自分たちのアイデアが特許に抵触しないかを確認すると同時に、彼らの強みがどこにあるのかを理解するためです。
この一連の調査を通じて、私たちは、先行したA社が「100億円をかけた実験」から次のような貴重な情報を得ることができました。
● マーケティングに巨額の投資をしても、根本的な課題解決がなければ成功しない
● 機能を増やすほど、ユーザーにとってわかりにくい製品になってしまう
● 法人向けサービスの可能性と、そこに至るまでの道筋
結果として、私たちは最初から法人向けサービスに参入し、個人向けサービスではマーケティング費用を極力抑えたPR戦略を採用しました。A社の失敗から学ぶ機会をいただき、限られたリソースを効率的に活用することができたのです。
先行事例には重要な情報がたっぷり詰まっている
このように、先行する事例は有効な情報の宝庫です。
何か新しいプロダクトの開発、新サービスの企画、新たな業態での出店などを計画するなら、まずは先行事例の情報収集と分析に時間をかけることがおすすめです。
今の時代、まったくのオリジナルから事業をスタートさせることはまずありません。
必ず、成功した先行事例、失敗した先行事例があります。
また、すでに目標に向かっていて、その過程でピンチに陥っているのなら、同じ状況に陥った先行事例を探しましょう。先人がどうやってピンチから脱したか。
その分析を行うことで、「回復力」「チーム力」に磨きをかけるヒントが得られます。
次のように分析すれば、失敗を避ける道筋が見え、実現力と発想力が高まります。
1 先行事例をリサーチする
● 学びたい内容(成功の要因なのか、失敗の要因なのか)の明確化
● 競合や事業領域の近い先行事例をリスト化し、どの程度参考になるかを判断
2 実際のサービスや製品を体験してみる
● ユーザー目線で機能や使い心地を評価、分析する
● 「強み」と「弱み」を洗い出し、特に競合の潜在的な課題を見極める
3 深く掘り下げて特許や内部情報を調査する
● 専門家と競合の特許を調べて、自分のアイデアが特許に抵触しないかを確認
● 可能であれば、元社員や関係者から話を聞き、内部課題や組織運営の実態を調査
4 収集した情報を整理し、課題を特定
● 成功例から学ぶポイント:自分たちが応用できる要素を抽出
● 失敗例から学ぶポイント:同じ失敗を避けるための対策を考える
● パターンを探る:マーケティング、商品設計、課題などを分類して関連性を見出す







