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実家の借金60億からの大逆転 天才経営者「小澤隆生」を知る一冊

大賀康史(フライヤーCEO)

2026年01月06日 公開

実家の借金60億からの大逆転 天才経営者「小澤隆生」を知る一冊

ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『小澤隆生 起業の地図』(北康利著、日経BP)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

 

起業とは楽しさとストイックさなのかもしれない

小澤隆生 起業の地図

スタートアップ業界やIT業界にいる人であれば、小澤隆生という名前を知らない人はいないでしょう。私が起業した2013年頃には、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルの投資責任者をされていて、その世界でも有名でした。優れたエンジェル投資家は信頼を集め、その人が投資をすると周りの投資家の投資を呼び込めるといいます。そのようなエンジェル投資家は2010年代前半には特に有名な方が10名程度いましたが、小澤さんはその代表格だったように思い出されます。

またその頃、スタートアップのカンファレンスで小澤さんが話されているのを聞き、話が面白い人だと感じたものです。周りの方からは「おざーん」や「おざーんさん」と呼ばれ、スタートアップ業界の中核で近づきにくいほどオーラがありました。

小澤さんは起業家としても複数社を起業していずれもイグジットに成功し、楽天イーグルスを立ち上げ、YJキャピタルの投資責任者、ヤフーの代表取締役CEOなどを歴任、今はベンチャーキャピタルのBoost Capitalを設立し、代表取締役に就任しています。

今までの起業家像とは少し違っていることも小澤さんの魅力があるところです。かつては家族や友人を犠牲にしながら駆け上がっていく起業家が多くいましたが、小澤さんは違います。

「友人や家族は何よりの宝物です。それを犠牲にする起業など意味がない。みんなも含めた社会すべてを幸福にする仕事がしたいじゃないですか! 友だちを増やして笑って生きていく延長にこそ起業があるんです」

この言葉にも小澤さんの考えが詰まっているようにも思えます。

 

インターネット業界の中心地

起業することになるきっかけも驚くべきものです。大学生だったころに中堅企業経営者だった親に聞かされたのは、その会社に借金が60億円ある、ということでした。長者番付を見ながら、どのようにその60億円を稼ぐかを考えたといいます。長者番付には医者や弁護士はおらず、ほぼ会社経営者か株や不動産で儲けた人だったそうです。そして、いずれ起業することを決めたと言われています。

次はどの業界で起業するのかを選定することが必要です。日経新聞を隅々まで読んでいき、「IT」「高齢化」「環境」の話題が圧倒的に多いことに気づき、それらの成長市場の中で資金が少なくても起業できる「IT」を選びました。

システムエンジニアとして内定が得られたCSKに入社し、同僚とともに起業を志し、10ほどのビジネスアイデアを試行していくも、なかなか成果が得られませんでした。そして、Bizseekという古本探しのお手伝いサービスを開始し、反響があったといいます。サービスを拡充し、それから2年ほど経った頃、ネットエイジという会社がオンライン自動車見積取次サービスをソフトバンクグループに数億円で売却した新聞記事を見つけ、その社長の西川潔に会いに行きます。

そして西川から「それ、イケるから会社にしよう」と言われ、会社を設立。ネットエイジにいた松山太河とも出会いました。次の資金調達ではグロービスのベンチャーキャピタル事業担当の仮屋園聡一と出会い出資が決まりました。その頃、それ以降の盟友となる川邊健太郎とも知り合いました。

ここで挙げられた方々は、どれもスタートアップ業界でレジェンドとなっている人ばかりです。私自身が運営する会社に対しても、起業後、人・事業・資金の問題が同時に生じ、最も厳しかったときに支援してくれたのも、ここで登場した西川潔さんと松山太河さんでした。太河さんはメルカリの初期に投資されたことでも有名ですが、本当に多くの会社に投資をされていて、私のように創業間もなく大変な時を救われた会社も多かったと聞きます。

話を戻しまして、小澤さんが立ち上げた会社のビズシークは急激に成長し、楽天の三木谷氏の目に留まり、2001年8月31日に楽天に買収されました。それ以降、激動のキャリアが始まります。

 

楽天イーグルス立ち上げ以降

その後、小澤さんは楽天イーグルスの立ち上げを担い、見事に実現しただけでなく初年度の黒字化を実現。他球団から見た初年度の予想では60億円ほどの赤字だったとのことで、素晴らしい快挙だと言えるでしょう。

楽天を退職した理由も相当に印象的です。「『ライオンキング』に出たいから辞めます! 」と三木谷社長に宣言して辞めたそうです。それからしばらくはエンジェル投資家を行いつつ、2011年にマーケティングサービスのクロコスを起業しました。

それから会社をヤフーに売却し、ヤフー傘下のベンチャーキャピタルであるYJキャピタルの投資責任者になり、ヤフーの執行役員ショッピングカンパニー長にも就任。手数料をゼロにして、ヤフーショッピングの出店数と商品点数を激増させる、eコマース革命のプロジェクトをスタートしました。その方針をプレゼンテーションした際に、孫正義から「100パーセントアグリーだ。それでやろう!」と言われたそうです。ソフトバンクが投資をしていたアリババの事業モデルを参考にしたとも言われています。

その後も、一休の買収、PayPayの立ち上げ、ZOZOの買収などを手掛け、ヤフーの代表取締役社長になるなどインターネット業界で輝かしい実績を上げ続けていきました。そして現在、ベンチャーキャピタルのBoost Capitalを立ち上げ、得意分野でもある投資領域の第一線で活躍されています。

 

天賦の才能と努力

成果を出すのは能力ではなく習慣であるという言葉があります。これは思想家であり経営学者だったピーター・F・ドラッカーの著作で記載された内容です。その背景としては成果をあげるタイプには、外交的な人・超然とした内向的な人、過激な人・痛ましいほどに順応的な人、心配性の人・気楽な人、などあらゆる特性で千差万別である、ということがあります。組織で働き成果を出す人に共通しているのは、自らの能力や存在を成果に結びつけるうえで必要とされる習慣的な力であり、それは何かと定義できるものではないということです。

まさに、小澤隆生という人は成果を上げることに関して天才的な人だという印象があります。まず成果を出すための法則を血眼になって探し出します。それを実行する段階では、ユーモアが必要ならユーモアを、執念が必要なら執念を、決断力が必要なら決断力を適時適切に発揮する人物に思えるからです。本人は自分を凡人と表現されますが、私からは他の天才的な経営者とは異なる、一人の天才的な経営者であり投資家であるように見えるのです。

小澤隆生という人物を語る上で、おそらく自ら主張することを好まないであろう成果や実績が明らかにされている貴重な一冊です。また著者の洗練された描写に引き込まれる作品でもあります。ビジネスの世界で圧倒的な実績を上げようと考える人であれば、まず目を通しておきたい本と言えるでしょう。

 

プロフィール

フライヤー(flier)

ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。(https://www.flierinc.com/)

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