キャリア養成の最先端は女子校にあり
2013年03月18日 公開 2022年12月07日 更新
利点は“カーストがない”こと
だが、どうして社会で活躍する女性を育てるのに、女子校でなければいけないのか。日能研グループの中学受験情報誌『進学レーダー』編集長・井上修氏はいう。
「私は、いま必要なのは『自分力』だと考えています。『自分力』というのは、他人は他人、自分は自分。他人の目を気にせず、自分のやりたいことをやる、という力です。この力を身につけるのに、女子校は適しています」
なぜ、女子校ではその「自分力」をつけられるのか、と尋ねると、井上氏はこう続けた。
「映画化もされた『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ)は、スクールカーストの話です。ああいうカーストは女子校にはないんです」
『桐島、部活やめるってよ』は、地方の公立高校を舞台にした作品だ。バレー部のキャプテン桐島が部活をやめることで、彼よりもカーストが下にいたほかの部員が内心喜んだりする、といった学生の心の機微が描かれる。
男子は運動部でお洒落なグループにいればカーストが高く、文化系のクラブで校則どおりの服装をしていると低いとみなされる。女子は可愛いとカーストが上で、そうでないと下である。それ以外にも、恋人がいるかどうかなど、さまざまな基準からカーストが構築されていく。
なぜ、このようなカーストができるかといえば、井上氏は「共学には世間があるから」という。男女がいることで世間が形成され、するととくに女子は「世間の目」を気にしだす。異性の目があれば、そこから容姿やコミュニケーション能力でカーストができていくのだ。
だが、異性の目がなく、世間が形成されない女子校では、このようなカーストができにくい。加えて現在、大半の女子校が進学校化しているので、生徒たちは将来に向けてやることや考えることが多くて忙しく、他人を気にしない傾向はどんどん強くなっている。結果、相互監視の目がなくなり、カーストやいじめは発生しにくくなっている。
豊島区の中堅校に通う現役の生徒がいう。
「カーストもいじめもないですね。私はプリクラを撮るのが嫌いなんです。友達に誘われても『面倒くさいから嫌』といってしまう。だからといって仲間外れにされることはないんです。みんなで同じことをしなくちゃっていうプレッシャーがないのが女子校のよさだと思います」
また、豊島岡女子学園の卒業生(20代会社員)もいう。彼女は公立中学から豊島岡女子学園に進学した。
「豊島岡はあらゆるジャンルの女の子がいる学校といわれていて、ギャルもいれば、熱血体育会系もいる。中学といちばん違ったのは、まだそんなにオタクが市民権を得ていたころでもないのに、オタクの子たちが明るく元気がよかったことです。みんなお互いに干渉しないで緩く共存している感じでした」
カーストがなく、お互いに干渉しない環境では、女子も自由にやりたいことができる。各女子校の文化祭でも生徒たちが自由にやりたいことをやる様子がみられた。
桜蔭の文化祭では、白衣姿の生徒たちが自分たちでつくった本格的なロボットを動かしていた。吉祥女子のポスター展示は本格的な作品が多く、プロのデザイナーも感心するレベルで、鴎友のダンス班(部)の公演は開脚も優美で、本気でパフォーマンスをめざし、練習していることが感じられた。
女子校では、やりたいことを精一杯やっても誰からも揶揄されない環境が提供される。ゆえに生徒たちは自分のやりたいことを懸命にやり、それが将来、社会や職場で生き抜くためのスキルや実力に結びついていくのだ。
<本記事の内容を、より詳細に取材・分析し記した杉浦由美子氏の新著『女子校力』が、3月15日にPHP新書から発刊されました>
<掲載誌紹介>
読みどころ
安倍総理は日米首脳会談でTPPへの参加を表明し、日銀の正副総裁の人選にも着手。足早に政策を進めている。小泉改革に酔いしれた国民が、いまや安倍改革に期待を寄せる。支持率70%を引っ提げ、いよいよ7月の参院選に向けて再始動といったところか。総力特集では、「参院選後」を睨んでどのような改革が行なわれるのか、憲法改正や自衛隊法改正、TPP参加について考えた。日銀副総裁候補の岩田規久男氏に日銀法改正問題にも言及していただいた。また特集では、韓国企業と比較したうえで、製造業を中心とした日本企業の今後の課題と展望を3人の有識者に聞いた。さらに、北朝鮮の核実験を受けて韓国でも高まる核武装化に、わが国がどう対処すればいいのか、安全保障問題も読んでいただきたい論考です。